前回の昆虫編に引き続き、3〜4月、キュリオス沖縄で実施している「やんばる」「沖縄南部の森」トレッキングツアーで見られた小動物を、一挙にまとめて紹介してみたいと思います。
両生類・爬虫類は、やはり暖かくなってからが本番。とはいえ、なかには逆に冬〜春にかけてしか見られないものもあります。
両生類のなかま
オキナワイシカワガエルOdorrana ishikawae
緑と紫がかった茶の斑模様が大変美しい大型のカエル。一見派手ですが、コケやコケ混じりの土の上にいると信じられないくらい目立ちません。
沖縄県の天然記念物、および国内希少動植物種に指定されています。
ナイトツアーで移動中の個体に出会えれば超ラッキーですが、繁殖シーズンならば声だけなら聞くことができます。ちなみに今季は、ガイドが気づくより先にお客さんが発見してくれました(汗)
※申し訳ありませんが、安全性と保護の両観点から、繁殖地へのご案内はいたしかねます。
見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!
リュウキュウアカガエルRana ulma
体色は明るいレンガ色〜灰褐色まで、かなり幅がありますが、いずれもじっとしていると落ち葉によく紛れます。
じっとしていると大変見つけにくいのですが、よく跳ねるので着地点を見失わなければ見つけることができます。
2011年にやっと新種記載され学名がついたカエルです。やんばるの固有種で、ニホンアカガエルなどが人里近くの雑木林などに比べると、やや自然度の高い環境を好むようです。
見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!
リュウキュウカジカガエルBuergeria japonica
沖縄・奄美・トカラとその周辺離島の固有種ですが、山の上から海岸までどこでも見られます。
塩水にかなり強いと考えられ、流木にしがみついてたびたび海を渡ったのではないか、ということが最近の遺伝子を使った研究から示唆されています。
学名がjaponicaとなっていることから以前「ニホンカジカガエル」と呼ばれていましたが、「カジカガエル」とまぎらわしい、奄美群島・トカラ列島・沖縄諸島にしか分布しない、などの理由から「リュウキュウカジカガエル」と呼ばれるようになりました。
見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!
▶やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング
ヒメアマガエルMicrohyla okinavensis
日本最小のカエル。と言っても極小というわけではなく、見ても「えっ、そんなに小さいかな…」という感想を漏らす方が多いです(笑)
名に反してアマガエルとはかなり縁の遠いカエルで、オタマジャクシはまるでナマズの稚魚のような形をしています。
小さい体ですが、鳴き声はけっこうけたたましく、某大学の構内では暖かい季節に雨が降ると、あちこちからヒメアマガエルの声が聞こえてきます。
見られたツアー
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シリケンイモリCynops ensicauda
奄美群島・沖縄諸島の固有種のイモリ。本州、四国、九州とその周辺離島に分布するアカハライモリによく似ていますが、背中からしっぽにかけてハッキリした筋が入るのが特徴です。
基本的に流れのない水場が好きなようですが、雨の後など湿度の高い日は、昼間から水場からかなり離れて出歩いていることもあり、昼間のトレッキングツアーでも見かけます。
イモリなので両生類で、卵からかえった幼生はオタマジャクシのような形をしています。
見られたツアー
▶やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング
▶やんばる森コース、ハカセと行くやんばる自然観察ウォーキング
▶がじゅまるの森コース、ハカセと行く南部の自然観察ウォーキング
▶やんばるナイトトレッキング!
イボイモリEchinotriton andersoni
まるでゴジラのような風貌を持ったイモリの仲間。英語でもCrocodile newt(ワニイモリ)といいます。
かなり自然度の高い地域に限って生息しています。イモリの仲間ですが、水辺からかなり離れた(でも湿度の高い)森の中で見られます。動きは鈍く、じっと動かず天敵をやりすごすタイプです。
奄美群島と沖縄諸島にのみ生息する固有種で、沖縄県・鹿児島県の天然記念物、および国内希少動植物種に指定されています。こちらは見られたらかなりラッキー。
季節的には冬〜梅雨くらいまでで、夏場見かけることはほとんどありません。
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爬虫類のなかま
クロイワトカゲモドキGoniurosaurus kuroiwae kuroiwae
トカゲよりは、どちらかというとヤモリに近い爬虫類。ただ、足は壁にくっつけるような構造にはなっておらず、夜間地上を歩き回ります。暖かい季節に多く見られます。
沖縄の各離島に少しずつ模様の違う亜種が住んでいて、そのどれもが島の固有亜種です。
このうち沖縄本島のものがクロイワトカゲモドキですが、沖縄本島の南部〜中部の個体は伊江島のマダラトカゲモドキと近いと言われており、やんばるに生息するものとは今後、別亜種とされる可能性が高いです。
沖縄県・鹿児島県の天然記念物、および国内希少動植物種に指定されています。
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アオカナヘビTakydromus smaragdinus
草によくまぎれる緑色のカナヘビの仲間。全身緑なのは♀だけで、♂は背中の部分が緑〜茶色のグラデーションになっているものが多いです。
森の中よりも、開けた草原などで見かけます。ただ住宅街の草むらなどでは見ず、すぐそばに自然の森や林が残っているような場所に多いようです。
「ジューミー」をはじめとして非常に多くの地方名があります。沖縄県民の「ソウルアニマル」らしく、このトカゲの写真などを展示していると、年配の方々をはじめとして「なつかしい」「昔はどこにでもいたのにねぇ…」と異常に盛り上がります(笑)
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オキナワトカゲPlestiodon marginatus(幼体)
大人になると全身茶色っぽいトカゲになってしまいますが、幼体は黒い体にクリーム色の筋が入り、尾が青くてとてもきれいです。
ニホントカゲ、ヒガシニホントカゲの幼体も似たような色彩ですが、オキナワトカゲはもう少し大きくなるまでこの色彩を保っているようです。
とくに午前中、体温を上げるために日当たりの良い山道や林道に出てきていますが、警戒心が強く、かなり離れたところからでないと観察できません。
この写真からでは分かりませんが、オキナワトカゲを観察中。この時はバッタの仲間を捕まえて食べたりなど、かなり色々な行動を見せてくれました。
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オキナワヒメトカゲAteuchosaurus okinavensis
ヘリグロヒメトカゲAteuchosaurus pellopleurus
たいへん足の短いトカゲ。体は全身茶色の上、落ち葉の下を電光石火のスピードで走るので、捕まえにくいトカゲのひとつです。
口はかなり小さく、小さな昆虫、特にシロアリなどを好んで食べます。
※本種はMakino et al. (2023) により分類学的再検討が行われ、沖縄諸島の個体群はオキナワヒメトカゲとして新たに記載されました。また、奄美群島以北に生息する個体群についてはそのままヘリグロヒメトカゲA. pellopleurusでしたが、新たにアマミヒメトカゲという標準和名が日本爬虫両棲類学会より提唱されています(和名が変更されただけで別種にはなったわけではありません)。
一度、落ち着くと手の上でも大人しくしてくれます。
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▶やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング
ガラスヒバァAmphiesma pryeri
目が大きく、たいへん愛らしいヘビ。カエルが好物で、雨や雨上がりの日によく見られます。
以前は無毒とされていましたが、毒を持つことが分かっています。ただし構造的に毒が入りにくいらしく、捕まえるとよく咬んでくるヘビですが、咬まれて毒がまわったという例はいまだにありません。
いずれにしても、少し離れてじっくり観察するのが良いでしょう。
夜の方がよく見られますが、この春は昼間に山の中で何匹も出くわすという日もありました。
ヒメハブOvophis okinavensis
こちらは正真正銘有毒ヘビです。ハブ(ホンハブ)と違って動きが鈍くて攻撃性は低く、また毒量も少ないのですが、離れて観察するに越したことはありません。
落ち葉に紛れる色彩の上、動きが鈍いことがアダになって近付くまで気づけないことが多く、注意が必要です。
カエルをとくに好み、沢や沼地のそばでよく見られます。この春、雨の晩に集落の中を通ったとき、ふと川をのぞき込むと、浅いコンクリの川底にすごい数並んでいて笑ってしまいました。
まとめ
最初にも書きましたが、やはり両生類・爬虫類は暖かくなる5月ごろからが本番です。
ただ、同じ気温でも「暖かい季節にたまたま冷え込んだ日」より「寒い季節にたまたま暖かくなった日」の方が圧倒的に多くの生き物が見られる傾向にあります。
また冷え込んだ場合、気温が下がった当日は生き物が少なく、冷え込みが数日間続くとまた出て来る傾向にあります。
旅行で来られる方のほとんどにとっては、天気は良いほうがいいに決まっていますが、生き物は雨降りや雨上がりに多く見られます。
特に爬虫類・両生類は出たとこ勝負で、何が見れるかは「その時のお楽しみ」ですが、一応、季節ごとにこんな生き物が見られますよ、という目安として、2018年3−4月にツアー中に出会った生き物をまとめてみました。
写真はツアーコースにおいてツアー中、もしくはツアー前後に弊社スタッフの宮崎が撮影したものです。
(一部、見られたけれど写真に収められなかったものに関しては、以前撮影したものを使いまわしています。)
…と、こんな感じでひたすら生き物を探したり観察したり、生態系や環境について学んだりするツアーを行っております。
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