冬こそ海へ!?夜の海の生き物たち!

年も明けて、本格的な冬になりました。前回の記事では冬の海での漂着物拾いをオススメしましたが、今回はもう一つ、オススメの冬の海の楽しみ方をご紹介します。

それは、夜磯です。

夜磯とは、名前の通り夜に磯(基本干潮時)に行くことですが、本来の磯(岩石の多い海岸)だけでなく、干潟や潮間帯なども総称する場合が多いです。秋から春にかけては潮がよく引く時間帯が昼夜で逆転し、夜間に非常に潮が引く時期になります。夜に冬のしかも夜の海と聞くと「寒そう…」「生き物いなさそう…」と思われがちです。本音を言うとクソ寒いですが、実は生き物はたくさんいて、昼にはなかなか姿を表してくれない夜行性の生き物たちを中心に様々な生き物が観察できます。今回は中の人がこれまでに夜磯で観察した色々な生き物を紹介したいと思います。

魚類

ゆったりおよぐフウライチョウチョウウオ

フウライチョウチョウウオ

潮溜まりをゆったり泳いでいました。チョウチョウウオ類は種数が多く、行くたびに違う種類を見かけることが多いです。また、種によって色や模様も結構違うので見ていて飽きません。

 

寝ているので全然逃げない

アイゴ類(おそらくアミアイゴ)

夜の潮溜まりで眠っているのをよく見かけます。完全に横になって眠っている姿はかわいいです。背びれには毒があり刺されると痛みます。美味しいです。

 

昼も夜ものんびり泳ぐ

ヒトヅラハリセンボン

嘘をつくと飲まされる魚です。身の危険を感じると海水を吸い込んで膨らみ、棘状の鱗を逆立てて身を守ります。実は分厚い歯と強力なアゴを持っており、サンゴくらいなら噛み砕けます。指を口の中に入れたりしないようにしましょう。

膨らんだヒトヅラハリセンボン。かわいい
正面顔です。ほぼ岩。

オニダルマオコゼ

言わずとしれた猛毒魚です。堅牢な背びれに猛毒を持ち、刺されると激痛とともに腫れ上がります。写真の通り岩に擬態しているので、気づかずに踏んでしまうことが多いようです。身は美味で、沖縄では市場に並ぶ魚でもあります。

 

胸ビレの膜が美しい

ミノカサゴ

こちらも有名な毒魚です。ほぼすべてのヒレに毒があります。夜行性なので昼はあまり観察できませんが、夜になると潮溜まりなどでゆったりと泳ぐ姿を観察できます。

 

優雅に胸鰭を広げる

キミオコゼ

こちらもミノカサゴの仲間で、同じようにヒレに毒を持ちます。中の人はミノカサゴ類の中で本種が一番好きで、先日ツアー中に見かけたときは大喜びしてました。スラっと伸びた胸ビレと、幅広の虎柄が好きです。

 

寝ぼけてたのかゆっくり泳いでました

テングハギ

リーゼントのように突き出た頭部の突起が特徴です。カワハギ類に近いので、皮はやすりのようになっており、硬いです。沖縄ではチヌマンと呼ばれ、身は非常に美味です。

 

この個体はあまり動かずゆっくり撮影できた

アセウツボ

1mに達する大型のウツボです。浅いところを好むようで、夜磯でもよく見かけます。ウツボ類は咬まれると肉が引き裂かれて大怪我になるのでむやみに触ったりしないようにしましょう。

 

軟体動物

かわいすぎる

ウズラガイ

夜にサンゴ礁の周りで見かけることが多い貝です。身が殻に対して大きく、基本的に収まってません。殻は薄く、大きくなると鳥のウズラほどになります(それが名前の由来かどうかは分かりません)。中の人の推しです。

おめめちっちゃい!!!かわいい!!!
貝殻の表面にはよく藻類が生えている

マダライモ

沖縄の磯(特にサンゴ礁)ではごく普通に見られるイモガイです。ゴカイなどを食べる虫食性で、岩場の間に溜まった砂などに少し埋もれるようにして暮らしています。殻の黒いまだら模様が特徴的です。昔の沖縄ではイザリ漁という漁法の道具として使われました。症例があるかは不明ですが、有毒とされているのでむやみに触らないようにしましょう。

 

ゆっくりと這ってました

キンシバイ

牛柄の軟体部が特徴の巻き貝です。実は体内にフグ毒のテトロドトキシンを持っており、間違って食べると命に関わるやばいやつです。

 

殻には一度割れた痕が

ハナビラダカラ

沖縄の磯では一般的なタカラガイです。白い貝殻にオレンジ色の輪っか模様が特徴です。貝殻の下半分に見える突起だらけの部分は外套膜とよばれる軟体部の一部で、タカラガイ類は生体時に殻を外套膜で覆っています。なので汚れなどがほとんどつかず、常にツヤツヤです。

 

活動中のハナビラダカラ。殻はほぼ外套膜に覆われ、殻の模様は見えない
殻は淡い黄色。もっと黄色い個体や、逆に白っぽい個体もいる

キイロダカラ

ハナビラダカラと同じくらいよく見るタカラガイです。名前の由来は貝殻の色です。貝殻の左右が角ばる個体はフシダカキイロダカラと呼ばれることもあります。

 

コモンとは小紋と書きます。おそらく着物の一種である小紋が由来です。「一般的な」という意味のcommonではないです。

コモンダカラ

漂着ではよく見るタカラガイです。他のタカラガイ類同様夜は活発に活動しています。

 

和を感じる模様が美しい

ヤクシマダカラ

殻長6cmほどになる中型のタカラガイです。場所によっては一度に10匹以上いるときもあります。よく似た種にホソヤクシマダカラという種がいます。

幼貝なので殻頂がくっきり!

ハチジョウダカラ(幼貝)

殻長8cmを超える大型のタカラガイで、竹取物語に登場する燕の子安貝のモデルと言われています。写真の個体は幼貝で、巻き貝らしい部分である殻頂がまだはっきりと見えています。成長するにつれて殻が分厚くなり、しだいに殻頂は見えなくなります。

 

スイジガイ

殻の形が漢字の水に見えることからこの名がついた貝です。沖縄では玄関先に貝殻を吊るし、火事や厄災をよける風習があります。身は食用にされます。

 

見事な擬態で岩に溶け込む

タコ類

夜の磯では大型のタコ類が結構いますが、写真のようにかなり高度な擬態をしているので見過ごすことが多いです。タコ類はほとんどが漁業権により一般人の採集が禁止されているので気をつけましょう。

 

青い輪っか模様が特徴。ヒョウモンダコは青いブチ模様で輪っかではない

オオマルモンダコ

ヒョウモンダコと並んで有名な猛毒を持つタコです。咬まれることで毒が注入されますが、実は筋肉にも毒があり、食べても中毒を起こします。

 

大きな個体は手のひらほどになります

イソアワモチ

ウミウシに近い仲間で、貝殻を持たない貝です。潮間帯の干上がった部分を歩き回っています。石に擬態しているので、目がなれるまでは見つけるのが難しいです。ちなみに沖縄島の北部にある伊是名島などでは食用にされます。

 

触るともちもちでした

コバンウミウシ

全長15cmほどの大型のウミウシで、場所によっては高密度で生息しています。初めて見たとき大きすぎてびっくりしました。

 

突起が波に揺られてかわいい

ムカデミノウミウシ類

無数の突起を体表に持つ5cm程度のウミウシです。実はこの突起に餌であるヒドラから接種した刺胞を仕込んでおり、触れると刺されます。見かけても観察するだけにしましょう。

 

棘皮動物

ツマジロナガウニと呼ばれる種

ナガウニ類

サンゴ礁で最もよく見るウニです。殻が楕円形をしており、針がやや太めなのが特徴です。かつては1種だけだと考えられていましたが、現在は4種ほどいるとされています。

 

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トックリガンガゼモドキ

針まで含めた直径が30cmほどに達する大型のウニです。有毒のガンガゼ類に似ていることからこの名がついていますが、本種も有毒なので触らないようにしましょう。ちなみにてっぺんの白い風船みたいなのは肛門です。

 

大きな体で狭い隙間に入り込む

パイプウニ

まるでパイプのような極太の棘を持つのが特徴です。体も大きく、針まで含めた直径は20cmを超えます。この大きな体で「どうやって入ったの!?」というような狭い穴に隠れています。棘はよく砂浜に漂着しており、風鈴の舌(ぜつ、ガラス部分を叩いて音を鳴らす棒)などに使うときれいな音が出ます。

 

時々とんでもない体勢でいたりして面白い

アオヒトデ

もっともよく見るヒトデです。名前の通り青い体をしており、サンゴ礁間にある砂地などでよく見ます。中の人は昔食べたことがあるのですが、ヒトデサポニンという苦味成分があるので、とても食えたものではなかったです。真似しないでください。

 

星型で可愛い

マンジュウヒトデ

全体的に丸っこいヒトデです。直径は30cm近くにもなり、重量も結構あります。名前はまんじゅうですが他のヒトデ同様硬いです。

 

ヒトデ類は時々腕が一本多かったり逆に少なかったりする個体が見つかります。アオヒトデとかだと手裏剣や十字架みたいですが、マンジュウヒトデの場合はほぼ座布団です。
小さくて可愛い

ホウキボシ類

こちらはホウキボシの仲間と思われるヒトデです。本来は5腕ですが、この個体は6本ありました。

 

棘状突起もよく見ると表面がイボイボ

フトトゲヒトデ

腕に太い棘状の突起が生えているのが特徴です。腕の長さが最大20cmに達する大型のヒトデで、時折見かけます。

 

腕がまるでゴカイみたい

オオフサクモヒトデ

まるでゴカイみたいな見た目の腕を持ったクモヒトデです。クモヒトデはヒトデ類に近い生き物ですが、ヒトデではありません。ヒトデ類とは違って、多くの種が活発に動き回ります。

 

大きすぎて全身の撮影を諦めました

オオクモヒトデ

腕一本の長さが30cmほどにもなる大型のクモヒトデです。昼は全く姿が見えませんが、夜になると表に出てきてあるき回っています。

 

やや角ばった形をしている

タマナマコ

体表のイボイボが特徴のナマコです。体色が黄土色の場合もあるようです。

 

よく見ると茶色い棘が生えている

トゲクリイロナマコ

砂地やサンゴ礁でよく見られるナマコです。クリイロナマコというそっくりな種がいますが、体表の棘の有無で見分けられます。右下の砂の塊はフンです。

 

まだ一匹しか見たことないので珍しいかも

オニイボナマコ

太い針状の突起が特徴のナマコです。痛そうな見た目ですが、結構やわらかいです。

 

まるでウミヘビみたいな見た目

トゲオオイカリナマコ

全長が1mを超える大型のナマコです。ナマコは体内に骨片という欠片状の骨を無数に有しており、オオイカリナマコの仲間は骨片が錨の形をしています。触ると骨片が指にひっかかります。

 

刺胞動物

イソギンチャク類(写真はシライトイソギンチャク類)

磯では昼も夜も見られるイソギンチャク類ですが、沖縄の海では本州ほど目にしません。刺胞を持ち、ウンバチイソギンチャクなどの一部の種は強力な毒を有しているので触らないようにしましょう。

 

ブラックライトで鮮やかに蛍光する

サンゴ類の蛍光(写真はミドリイシ類)

昼も夜も観察できるサンゴ類ですが、実はブラックライトで蛍光する種が結構います。夜の磯では太陽光がないため、彼らの蛍光をはっきりと観察することができます。天の川のような非常に幻想的な光景を見ることができます。

 

種や個体によって蛍光の色が違う!

 

爬虫類

カメガシラウミヘビ属というグループで、丸っこい顔をしている

イイジマウミヘビ

サンゴ礁でよく見られるウミヘビで、魚類の卵を専門的に食べます。毒牙がほとんど退化し、毒もほとんどないと言われていますが、姿がそっくりな猛毒種がいるので見かけても触らないようにしましょう。その他観察できる爬虫類としては、ウミガメ類がいますが、かなり運が良くないと見られません。

 

甲殻類

カニの形に見えるようになるまで時間がかかります

モクズショイ

海底のゴミやカイメンなどを体にくっつけ、風景に溶け込むカニです。初見だとまずカニに見えません。お客様に見せたところ、その奇っ怪な姿に終始頭に「?」を浮かべてました。

 

毒々しい色をしているが食べられるらしい

アカモンガニ

夜磯界のスーパースターです。重厚な甲羅と派手な模様が印象的で、生で見ると迫力があります。

 

まんじゅうみたいな色と模様

スベスベマンジュウガニ

可愛らしくて美味しそうな名前ですが、体内に猛毒を持っており食べると命に関わります。見た目は丸っこくてかわいいです。

 

サンゴの間からちらっと覗く

サンゴガニ

ハナヤサイサンゴやミドリイシの間で生活するカニです。サンゴの粘膜をエサとして与えてもらい、オニヒトデなどサンゴの天敵がやってくるとハサミで棘を折ったりして戦います。ただ、暴れすぎてサンゴの粘膜が傷つくと、同じようにサンゴと共生しているサンゴテッポウエビがやってきて、サンゴガニをなだめる行動を取るようです。

 

甲羅の赤い突起がかっこいい

アカヒヅメガニ

こちらもアカモンガニと並んで夜磯で観察できる大型のカニです。甲幅は10cmを超えます。

 

全然撮らせてくれない

コモンヤドカリ

真っ赤な体をした非常に大型のヤドカリで、ホラガイに入っている姿もよく見かけます。潮溜まりを歩き回る姿をよく見かけます。

 

サメハダヤドカリ

イソギンチャクを貝殻に貼り付けて身を守るヤドカリです。イソギンチャクに目が行きがちですが、ハサミに生えている棘が結構かっこいいです。

 

近づくと割とすぐに逃げちゃう

オオカクレイワガニ

甲幅が5cmほどある大きなカニで、陸地の波があまり当たらない岩場に生息しています。昼は全く姿を表しませんが、夜はそこそこ観察できます。

 

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アカカクレイワガニ

オオカクレイワガニと同様の環境にいますが、数は多くないようです。真っ赤な体が特徴ですが、真っ赤なオオカクレイワガニもいます。

 

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フシデサンゴモエビ

サンゴ礁でよく観察できる小型のエビです。目の中に十字の模様があり、まるでスマッシュボールみたいです。

 

今回は夜磯で観察した生き物をいろいろ紹介しましたが、正直全然紹介しきれていません。海の生き物は分類群の幅がかなり広く、一度で出会える生き物の数も種数もかなり多いです。また、冒頭でも書きましたが、昼と夜では同じ場所でも観察できる生き物がかなり変わります。懐中電灯などの装備が必要ですが、生き物観察にはとてもオススメのフィールドです。ただし、危険生物も多く、暗くて足元も見えづらいため必ず経験者の方と行くようにしましょう。

 

キュリオス沖縄では現在、11〜4月にかけて夜磯のツアーを行っています。「夜磯に行ってみたいけど安全面が不安」「どこで何を観察すればいいのかわからない」という方は、是非一度我々のツアーをご検討ください!

ツアー詳細はこちら↓↓↓

【冬季限定】「さあ!夜の海へ!」ハカセと行く、夜のサンゴ礁観察

北風吹いたら海へ行こう!ビーチコーミングで拾い物

 北風吹きすさび寒い日が増えてきた沖縄ですが、こんな時期にこそ楽しめるフィールドがあります。それはビーチコーミング(以下ビーチコ)です。

 沖縄島の北西には黒潮と呼ばれる海流が南から北へと流れていますが、この黒潮に乗って南方から流れてきた様々なものが、北風によって沖縄島側に流され、やがて砂浜へと打ち上がるのです。ビーチコで拾えるもののジャンルは多岐にわたるため、あらゆる分野の人を虜にします。今回はどんなものが拾えるのか、色々紹介していこうと思います。

 

豆類

多種多様な漂着豆

 ターゲットとしてよく挙げられるものの一つが豆類です。沖縄島は大型豆類が多く産する東南アジアに比較的近いため、漂着する種数も多く、色や大きさも様々で集め甲斐があります。界隈での通称名もあるようで、ハンバーガーやどらやきなどユニークな名前がつけられていたりします。

とても大きなモダマ
手前はまだら模様がおしゃれなワニグチモダマ類。奥はククイノキの実と思われるもの

 

 

種子・果実類

ウルトラマンみたいなサキシマスオウノキの果実

 豆以外の木の実や種子も多く打ち上がります。よく見かけるのはヤシ科の植物や、オキナワキョウチクトウ、サキシマスオウノキ、モモタマナなどです。

川から流れ出たものが打ち上がったと思われるマテバシイの実
ココヤシの実。いわゆるココナッツ

 これらの種子や豆類は海を漂うことが前提となった作りをしており、数ヶ月漂ったあとでも死なず、打ち上がった先で発芽することがあります。こういった散布様式を取る植物を海流散布植物と呼びます。

ニッパヤシの実生。漂着していたものを植えたら発芽した!

 

 

死骸

マンジュウヒトデの死骸

 普段は海中にいる生き物が何らかの理由で打ち上がることがあります。特に台風などで海が荒れたりすると多くの生き物が打ち上がります(もちろん生き物以外もたくさん打ち上がります)。また、大寒波で海水温が著しく下がったりすると仮死状態となった魚が大量に打ち上がることもあります。状態のいい死骸は持ち帰って標本にすることもできます。

トウゴロウイワシの仲間。波が強かったのか、それとも何かに追われたのか数匹打ち上がっていた

 

 

ヤギの頭蓋骨
リュキュウイノシシと思われる下顎

 生き物死骸は肉などが残った状態で打ち上がることもありますが、骨になった状態で打ち上がることもあります。よく見かけるのは魚類ですが、時折クジラ類などの海棲哺乳類やリュウキュウイノシシなどの陸棲動物も見かけます。後者の場合は川から流れてきたものが一度海に出て打ち上がったか、その場で死んだものの場合が多いと思われます。

 

 

貝殻

ハチジョウダカラの貝殻。少し摩耗している

 ビーチコと聞いて最初に貝殻を思い浮かべる人も多いのではないのでしょうか。年間を通して温かい沖縄島近海では本州では拾えない貝殻が拾えることもあります。稀にほとんど摩耗していない綺麗な貝殻を拾えることもあります。

ホラガイの殻口(すさまじいピンボケ…)
いわゆる微小貝。小さすぎて見落としがちですが、よくよく見ると個性豊かで面白いです。収納にはピルケースやアクセサリーケースがオススメ

 

 

鉱物・化石

福徳岡ノ場の海底火山噴火で押し寄せた大量の軽石。とても軽いので波と風が強い日は浜から離れたところにまで打ち上がっていた
泥岩の破片と、めり込んでいるカモメガイの仲間。この仲間は泥岩や流木に穿孔して生活する

 よく拾えるのはサンゴや海中の生物の死骸で構成された琉球石灰岩ですが、周辺の地層や海の様子によっては大きく変化します。2021年には南硫黄島近海にある福徳岡ノ場の海底火山が噴火し、大量の軽石が流れ着きました。

 

 

ビン・ガラス製品

フィリピンのサンミゲールが製造するレッドホースビール
ガラス製の浮きとビンの底。UVライトを当てると、、、
なんと緑色に蛍光!古いガラスの証です

 戦前〜戦後の古い人工物が拾えるのもビーチコの醍醐味です。コカ・コーラや酒瓶、ガラスでできた浮き玉などが拾えることがあります。古いガラスでは緑系の着色料にウランが使われていた時期があり、UVライトを当てると緑色に蛍光します。

 

 

陶器・磁器

酒瓶だと思われるもの
スンカンマカイの破片
スンカンマカイ。この状態のものを拾うのは難しい

 使わなくなったりして川や海に捨てられたものや、海に落ちた船積み品が流れ着いたりします。沖縄の伝統的な焼物である壺屋焼などのやちむんや、戦前〜戦後の沖縄の家庭で普及したスンカンマカイ、運が良ければ青磁が拾えることもあります。その他、戦前の沖縄でグスクから一般家庭まで広く使われていた赤瓦の破片もよく流れ着いています。他の人工物もそうですが、ビーチコではその地域のかつての暮らしや歴史が垣間見えることがあります。

 

 

ビーチグラス

緑系だけあつめてみた
そう。UVで光るから

 前述したガラス瓶なども含めて、その破片が海中で摩耗して打ち上がったものをビーチグラスと呼びます。本州では角が取れて丸くなったガラスが打ち上がることが多いですが、沖縄ではあまり角が取れていません。これは海中の砂や岩を構成している鉱物の硬度によって生じる差で、沖縄周辺ではガラスよりも硬度が低い琉球石灰岩やサンゴの死骸などで揉まれるので、角が取れにくいのです。

拾うときのポイント

時期:オススメは前述した通り秋〜春の北風が吹いている時期です。黒潮に乗って流れてきた漂着物が、北風によって沖縄島へ押し寄せてきます。一方、海が大きく荒れる台風の後は海底に沈んでいるものがごっそり打ち上がり、普段見かけないものが拾えたりするのでオススメです。また、大寒波で海水温が著しく下がると海中の生物が仮死状態になって打ち上がるため、生物標本の採集には適しています。

場所:沖縄島内で北風を頼りに拾うのであれば西海岸がオススメです。台風や寒波の時は状況を見ながら海岸を決めると良いでしょう。ただし、台風後の収集の際は波風が完全に収まってから行きましょう。

探し方:砂浜を眺めると、漂着物が何箇所か帯状に固まっているのが観察できます。漂着物の大きさや軽さ、また直前の波の高さや潮の満ち引きによって場所が変動するので、ターゲットの特徴やタイミングを見計らって適切な場所を探しましょう。小さな漂着物は海藻類などの下に埋もれたりするので、棒などで適宜払いながらじっくり探すと良いです(短い棒で探すと中腰で歩くことになり腰がつらいので気をつけてください)。

帯状になっている様々な漂着物。これらに沿うようにしてひたすら歩き、探し、拾います。

 このように、ビーチコでは様々なものが拾えるため重度の収集癖を持つ中の人などは頻繁に行って色々なものを集めてしまいます。集めたものは箱に入れて飾ったり、工作の材料にしたりと様々な活用ができますが、拾った日の日付と場所、採集者を記したラベルをつければ立派な標本にもなります。また、生物由来の漂着物からは周辺の海中の様子が探れ、人工物からはそこにかつて存在した人々の暮らしや、歴史の一部を覗くことができます。拾えるものは地域によって異なるので、沖縄以外でも是非ビーチコをしてみてください。ちなみに、本州だと古いガラス製品が多いらしく、中の人は本州でめちゃくちゃビーチコしたいです。

雨が降ったら出かけよう!カタツムリ観察のすゝめ

巻貝っていいですよね。あの美しい螺旋、様々な形や色。いくら見ても飽きません。

そんな素晴らしい巻貝の世界を簡単に覗けるのがカタツムリ観察です。カタツムリは人家から山の奥まであらゆる場所に様々な種が生息しています。じっくり観察してみると、種によって形や色、大きさ、いる場所などが違っており、その楽しさに一度はまるとなかなか抜け出せない沼です。今回は沖縄島で観察できる様々なカタツムリたちを紹介していきます。

 

有肺目

カサマイマイ科

 

オオカサマイマイ。ちょっと目を出しててかわいい
朽木に集団で張り付いていた

オオカサマイマイ

沖縄島の全域で見られるカタツムリです。殻は茶色で非常に平たくフリスビーみたいな形をしています。朽木を食べているのか、立ち枯れや倒木の周りにたくさんついていることが多いです。森の中で観察できます。

 

 

キセルガイ科

キセルガイの名の由来は、細長い形をたばこを吸う道具である煙管になぞらえて名前がついています。巻貝のほとんどは右巻きですが、キセルガイ科の多くは左巻きの殻を持ちます。

 

殻は茶色一色のオキナワギセル。成貝の先端はだいたい折れる
かわいい!

オキナワギセル

沖縄島の本部半島と中・南部の森林内で見られるカタツムリです。森林内の生きた木の幹についている姿を見かけます。殻は全体的に茶色で、成貝は先端が折れていることが多いです。殻の表面に地衣類が生えて緑色っぽくなっていることがあります。

 

 

黒くて太い帯模様が入るスジイリオキナワギセル。オキナワギセル同様殻の先端が折れる。
スジイリオキナワギセル

オキナワギセルと違い、沖縄島北部(特にやんばる)の森林内で見られるカタツムリです。見た目はオキナワギセルそっくりですが、殻に太くて黒い帯模様が入っています。こちらも生きた木の幹に張り付いている姿をよく見ます。こちらも殻の表面に地衣類が生えて緑色っぽくなっていることがあります。

 

 

ツヤギセルの殻は白色〜黄白色。全体的に膨らんでいて先端は折れない。
ツヤギセル

沖縄島全域の森林で見られるカタツムリです。全体的に白っぽい色で、成貝になっても殻の先端は折れずに残ります。こちらは朽木の周りについているのをよく見かけます。

 

 

かわいすぎるノミギセル。殻のツヤがたまらない。
ノミギセル類

全長1cm程度の小型のキセルガイです。森林内で木の幹などをはっている姿を見かけますが、小さいため探しづらいです。沖縄島北部では3種ほどが確認されており、見分けるには殻の口の中の構造を観察する必要があります。

ノミギセルの仲間は人差し指と比較するとこんなにちっちゃいです。

 

 

キセルガイモドキ科

 

シックな色合いが好き。
ウスチャイロキセルモドキ

名前の通りキセルガイそっくりの見た目をした貝ですが、決定的に違うのはキセルガイとは違って右巻きの貝であることです。森林内で木の幹に張り付いている姿を見かけますが、あまり多くありません。海岸に近い森にはキカイキセルモドキという別の種類が生息しています。

右巻きのキセルガイモドキ (ウスチャイロキセルモドキ) と左巻きのキセルガイ (スジイリオキナワギセル)。

 

 

ナンバンマイマイ科

 

殻表面の毛が素敵なイトマンマイマイ
イトマンマイマイ(イトマンケマイマイ)

沖縄諸島に分布するカタツムリで、殻全体にビロード状に毛(というよりは鱗のような突起)が生えています。沖縄島では北部の森林内で観察できますが、数は多くないです。

 

 

シュリケマイマイ。よく見ると殻の縁は少しギザギザしており、そこから毛が生えている。
シュリケマイマイ

沖縄島固有種のカタツムリです。沖縄島内の石灰岩地帯に生息しますが、中・南部では非常に数が少なく局所的な分布になっています。平たい見た目で、縁には毛が生えています。また、殻自体も薄く、まだら模様のように見えているのは透けて見えている中身です。湿度が保たれている森の中の、石灰岩の表面で観察できます。

 

 
夜に活動していたオキナワヤマタカマイマイ
オキナワヤマタカマイマイ

沖縄島の中・南部に生息するカタツムリです。殻が高い円錐形になります。殻の模様は個体によって様々ですが、殻の下側や巻き部分の境目(縫合)が黄色っぽくなることが多いようです。湿度が保たれている森林の樹上で観察できます。沖縄県の条例により捕獲等は禁止されています。

 

 

殻が少し低いシラユキヤマタカマイマイ
シラユキヤマタカマイマイ

沖縄島の中・南に生息するカタツムリです。オキナワヤマタカマイマイに比べて殻が低く、そろばんの珠のような形をしています。殻の模様は個体によって様々です。湿度が保たれている森林の樹上で観察できます。沖縄県の条例により捕獲等は禁止されています。

 

 
ヤンバルヤマタカマイマイ。茶色系の殻を持つ個体。
ヤンバルヤマタカマイマイ

沖縄島の北部に生息するカタツムリです。以前はオキナワヤマタカマイマイとして扱われていましたが、殻がやや低く、生殖器の形も違うため別亜種とされています。こちらも殻の模様は様々です。湿度が保たれている森林の樹上で観察できます。沖縄県の条例により捕獲等は禁止されています。

 

 

交尾中のオキナワウスカワマイマイ
オキナワウスカワマイマイ

沖縄島全域で最も普通に見られるカタツムリです。人家の庭や公園、林道沿いなど開けた環境を好みます。殻の色は黄土色から茶色です。かつてはチンナン汁の材料にもされていました。

 

 
夜に活動していたシュリマイマイ
シュリマイマイ

沖縄島全域で見られるカタツムリです。殻の直径は4cmに達し、在来のカタツムリとしては沖縄島最大です。オキナワウスカワマイマイと同所的に見られることもありますが、どちらかというと森の中を好みます。以前は沖縄島北部の個体群をヤンバルマイマイとして扱っていましたが、現在は同種と考えられています。沖縄島の中・南部ではよく似た見た目でやや小さいミヤコマイマイという種も生息しています。

 
 
パンダナマイマイ。まだら模様は中身の模様。
パンダナマイマイ

沖縄島の全域で見られるカタツムリです。殻の周縁には赤い線が入ることが多いです。成貝になると全体的に丸っこくなりますが、全体的にやや平たいものから少し膨らんでいるものまでいろいろな形になります。同所的に生息する外来種のオナジマイマイによく似ますが、こちらの方が大型です。林縁から林内でよく見られます。

 

ベッコウマイマイ科

オキナワベッコウ

沖縄島固有の小型のカタツムリです。つつくとカタツムリとは思えないほどものすごい速さで飛び跳ねて逃げます。その行動から英語圏では本種に対してjumping snailという名前がついています。沖縄島全域の森林で地表付近で活動している姿を観察できます。動画は実際に飛び跳ねている様子です (動画が再生できない方は、こちらよりご覧ください)。

 

 
美しい飴色をしたグードベッコウ
グードベッコウ (グゥドベッコウ)

沖縄島北部の山地で見られるカタツムリです。殻の直径は7mmほどで、他のベッコウマイマイ類よりも殻の巻数が多いのが特徴です。乾燥しているときは落ち葉の下などにいますが、雨がふると地表付近を活動している姿をよく見ます。

 

 

外套膜で殻を覆うベッコウマイマイ

ベッコウマイマイ

沖縄島の特に北部の森でよく見られるカタツムリです。生きているときは外套膜で殻を被っているため殻がツヤツヤです。その美しさから鼈甲細工になぞらえてこの名前がついています。つついても軟体部をしまわず、できるだけ早めに歩いて逃げます。おしりの先が尖っていてかわいいです。

 

ヤマタニシ目

ヤマタニシ科

グリーンが鮮やかなアオミオカタニシ
アオミオカタニシ

沖縄島の全域で見られカタツムリです。鮮やかな緑色の殻が特徴的ですが、実は殻自体は白色がかった半透明で、緑色なのは透けて見える中身です。偏食家なカタツムリで、すす病という病気に感染した樹木の葉にできる黒いカビを食べます。ヤマタニシ科に属し、マイマイ類とは違って触角の根本に目があり、蓋も持っています (写真では見えないですが…)。林縁沿いや林内の樹木の葉裏や幹などで周年観察できます。

蛍光するアオミオカタニシ

実はUVライト (ブラックライト) で蛍光するので、夜間にいそうな場所を照らしながら歩くと割と簡単に見つけられます。

 

 

重厚な見た目のオキナワヤマタニシ
オキナワヤマタニシ

沖縄島のほぼ全域で観察できるカタツムリです。殻は非常に分厚く、とても頑丈です。本種もアオミオカタニシのように蓋を持ち、目も触角の根本にあります。沖縄島では他に北部にクニガミヤマタニシと南部にイトマンヤマタニシが生息しており、どちらも本種より小型ですが、見た目はかなり似ているようです。森林内の落ち葉や倒木の下におり、雨が降ると地表や岩の上などで活動します。

 

 
微細な毛が生えるケハダヤマトガイ (死殻)
ケハダヤマトガイ

沖縄島北部の山地で見られるカタツムリです。殻の表面に微細な毛が生えるその姿は個人的にめちゃくちゃ好きです。つや消しの質感なのもいいですね。湿った森の落ち葉溜まりの中で見られますが、殻の直径は5~7mm程度で色も土や落ち葉にそっくりなので、地面に突っ伏してじっくり探す必要があります。

 

アマオブネ目

ヤマキサゴ科

 

 

白っぽい殻のオキナワヤマキサゴ
こちらは茶色っぽい殻。口を伸ばしてお食事中

オキナワヤマキサゴ

沖縄島のほぼ全域で見られる小型のカタツムリです。本種はマイマイでもヤマタニシでもない別のグループで、アマオブネガイという海にいる巻貝に近いです。眼は触角の根本にありますが、ヤマタニシ科のような蓋は持ちません。殻の直径が5mmほどと小さいため眼につきにくいのですが、森林内の低木や草本類の葉の上にいる姿をよく目にします。

 

ゴマオカタニシ科

 

石灰岩の表面に張り付くフクダゴマオカタニシ
ちっちゃい!!!

フクダゴマオカタニシ

沖縄島の石灰岩地帯で見られるカタツムリです。オキナワヤマキサゴより更に小さく、大きくても2mm程度です。湿度の高い森の石灰岩の露頭などに張り付くようにして探すと観察することができます。いる場所には高密度で生息しています。

 

今回紹介したのは、比較的観察しやすいカタツムリたちですが、沖縄県全体ではなんと140種ものカタツムリが分布しています。その大きさや形、いる場所や食べ物も様々で、一度ハマるとなかなか抜け出せない沼です。また、カタツムリ類は海を超えて移動することができないため、それぞれの島ごとに進化を遂げ、それぞれの島に固有種が、つまり「ご当地カタツムリ」がいるのです。例えば、今回紹介したシュリケマイマイやオキナワベッコウは沖縄島でしか観察できないご当地カタツムリです。もちろん沖縄県以外も例外ではなく、それぞれの場所に固有のカタツムリがいます。皆さんもいろいろな場所を巡ってカタツムリ探しをしてみませんか?

足元の世界を覗いてみよう!土の中の生き物たち

 気温が下がってくると地表で活動していた生き物たちはだんだん少なくなっていき、あまり目立たなくなっていきます。そこでオススメなのが土壌動物の観察です。土壌動物とは落ち葉の下や朽木や石の裏、土の中で生活する動物すべてのことを指します。と言われてもあまりイメージが湧かない方もいるかもしれないので、今回はとにかく只管かっこいい土壌動物たちを紹介していきます(中の人の趣味により偏っています)。

 

ムカデ類

脱皮直後の個体。通常は茶色っぽい
ゲジ目のみが持つ複眼。他のムカデ類は単眼を有するか、眼を持たない。

オオゲジ Thereuopoda clunifera

 いわゆるゲジゲジと呼ばれる生き物の一つで、名前の通り普通のゲジ Thereuonema tuberculataに比べて大きな体をしています。特に琉球列島の個体群は大きく、脚を広げると手のひらよりも大きくなります。基本的に咬み付いてはきません(持ったりすると別です)。他のムカデ類が持っていない大きな複眼がかっこいいです。

 

ヒラタヒゲジムカデ Orphnaeus drevilabiatus

 まるでゴカイやミミズのような見た目のジムカデ類。本種は特に派手な見た目などではないですが、なんと国内のムカデ類で唯一発光することができます(写真なかった…)。指でつつくと体表から緑色に発光する粘液を分泌し、ムカデ本体に加えて歩いたところや触った指などもしばらく光ります。咬み付いたりはしないので、見つけたら是非試してみてください。

 

トビズムカデ Scolopendra mutilans

 本州から琉球列島まで広く分布する大型のムカデです。琉球列島の個体群はとりわけ大きく、全長は20cmを超えます。赤っぽい頭部が特徴で、触れると容赦なく咬み付いてきます。咬まれると患部が腫れ上がり、激痛と強烈な痒みが続きますので絶対に触らないようにしましょう。

 

アオズムカデ Scolopendra japonica

 こちらはトビズムカデに比べたらやや小型の種類で、全長は10cm前後、黒っぽい頭が特徴です。こちらも咬まれると痛いので触らないようにしましょう。

 

リュウジンオオムカデ Scolopendra alcyona

 2021年に記載された琉球列島の固有種で国内最大の多足類です。全長は30cmに達し、黒い体に翡翠色の脚を持つ大変美しいムカデです。さらに本種は水陸ともに活動でき、テナガエビ類やサワガニ類などを捕食することが知られています。本種は種の保存法で保護されていますので、捕獲などは禁止されています。

 

ヤスデ類

オキナワアマビコヤスデ Riukiaria pugionifera

 体長が6cmを超える大型のヤスデで、黄色〜橙色の体に黒い帯模様が入ることが多いです。沖縄本島のヤスデ類では最大種で、春と秋に沖縄島北部の林床で歩く姿をよく観察されますが、冬でも落ち葉や朽木の下などにいるのを見かけます。硬く張り出した外骨格がとてもかっこいいです。

 

ホルストアマビコヤスデ沖縄島北部個体群の一例
ホルストアマビコヤスデ沖縄島中・南部個体群の一例

ホルストアマビコヤスデ Riukiaria holstii

 沖縄島の北部と、中・南部の一部に生息するヤスデで、体長は4〜5cm程度です。北部地域の個体群は灰色がかった体色をしていますが、中・南部の個体群では黄色や橙色など様々な体色をしています。こちらも春と秋によく観察され、冬は朽木や落ち葉の下で見かけます。

 

マクラギヤスデ Niponia nudulosa

 茶色い甲冑のような外骨格がかっこいいヤスデです。朽木の裏に特に多く、のそのそとゆっくり歩きます。

 正面から見ると本当に甲冑の兜のようでかっこいいです。ちなみに本種は北海道南部から台湾、および中国東部とかなり広い範囲に分布しています。

 

ヤマシナタマヤスデ Hyleoglomeris yamashinai

 低地から山地の朽木の下に多いヤスデです。ダンゴムシにそっくりですが、れっきとしたヤスデの仲間です。体長は6mm前後で、つつくと背中の中央から透明の防御液を出します。この防御液には麻酔作用があり、天敵を眠らせて身を守ります。

 

マギータマヤスデ Hyleoglomeris magy

 こちらは森林や山地の落ち葉の下に多い種です。和名の「マギー」とは沖縄島の方言で「大きい」という意味で、体長が10mm前後と国内のタマヤスデとしてはかなり大きいです。

 

クモ類(クモ綱)

 クモ綱はクモはもちろん、ザトウムシやサソリ、ダニなど多くの生き物を含むグループです。体が頭胸部と腹部の2つで構成され、頭胸部には触肢と鋏角を持っています。

メスの成体
夜間に巣穴の入り口で獲物が来るのを待ち伏せる個体

キムラグモ類 

 沖縄島広い範囲で見られるクモです。林縁や林内の土がむき出しになっている法面などに、入り口に蓋があるトンネルを掘って生活しています。夜間には巣穴の入口付近で待機し、通りかかった昆虫などを引きずり込んで捕食します。沖縄島ではヤンバルキムラグモ Heptathela yanbaruensisやオキナワキムラグモ Ryuthela nishihirai、オキナワトタテグモ Latouchia swinhoeiなど同様の生活を送るクモを数種類観察できます。

 

コアシダカグモ類 Sinopoda spp.

 昼間は倒木や石の下、夜間は林床の低木や草本の葉の上で観察できるクモです。同じアシダガクモ科のアシダカグモよりも小型で、全体的に体色が濃いです。琉球列島では島ごとに複数種に種分化していることが知られています。沖縄島内では同所的に外見がよく似たリュウキュウコアシダカグモS. okinawanaとシロスジコアシダカグモ S. albofasciataが生息しています。

 

UVライトで蛍光するシマアカザトウムシ

シマアカザトウムシ Kilungius insulanus

 林内の倒木や石の下で観察できるザトウムシの仲間です。ムキムキに発達した触肢と鋏角が大変かっこいいザトウムシです。UVライトを照射すると2枚目のように美しく蛍光します。

 

サスマタアゴザトウムシ Nipponopsalis abei

 かなりムキムキのアゴ(正確には鋏角なので付属肢)を持つかっこいいザトウムシです。先程のシマアカザトウムシとは違い触肢は発達していません。林内の朽木の裏で時々見かけます。

 

等脚類

コシビロダンゴムシの仲間と思われるもの

ダンゴムシの仲間

 倒木や石の下などでよく観察されます。複数種おり、アリの巣の付近で見つかるものや、樹上で活動するものもいます。大きさも数mm程度から1cm近いものまで様々です。写真のコシビロダンゴムシの仲間と思われるものは夜間に樹上で活動していました。背板の縁の反りと模様が個人的に好みです。

昆虫類

オキナワアギトアリ Odontomachus kuroiwae

 沖縄島中部以北の林内で、倒木や石の下で観察できる大型のアリです。赤い体に大きなアゴが特徴で、この顎はなんと180度以上開きます。開いた顎をものすごい速さで閉じて「パチン」と音を立てながら噛み付いて攻撃したり、開いた顎を地面に押し当てて閉じることで後方に跳ね逃げたりします。腹部末端にはオオハリアリのように毒針があるので、むやみに掴むと刺されます。

マダラゴキブリ Rhabdoblatta guttigera

 林内や沢の付近の倒木や石の下に見られる森林性のゴキブリです。幼体は水中で活動することができ、石をめくると沢へ飛び込んで逃げていきます。成体は夜間に低木や草本の葉上でよく見られ、しばしば飛翔します。

 

ヤンバルトサカヤスデを捕らえたオキナワハラアカサシガメ

オキナワハラアカサシガメ Scadra okinawensis

 林縁の石や倒木の下でよく見られるサシガメの仲間です。夜間になると地表を徘徊し、ヤスデ類を専門的に捕食します。サシガメ類は不用意に触ると口吻で刺し、毒(消化液)を注入してきます。刺されるとかなり痛いようです。

 

ホルストネジアシヤスデを捕らえたアシマダアラアカサシガメ

アシマダラアカサシガメ Haematoloecha rufescens

 オキナワハラアカサシガメと同様の環境で見られるサシガメで、こちらもヤスデを専門的に捕食します。真っ赤な体色が鮮やかでかっこいいです。

 

陸産貝類

ヤマタニシ類 Cyclophorus spp.

 林内の石や倒木の下でよく見られます。雨天時や夜間は地表で活動している姿も観察できます。マイマイとは違って蓋を持っており、分厚く丈夫な殻も特徴です。沖縄島では外見で区別が難しい種が複数確認されています。

 

ツヤギセル Nesiophaedusa praeclara

 林内に見られるキセルガイの仲間です。同所的にスジイリオキナワギセルが生息しますが、スジイリは生きた樹木の樹皮に付着するのに対し、本種は死んだ樹木(朽木)に付着しています。

朽木に群がる

オオカサマイマイ Videnoida horiomphala

 ツヤギセル同様、朽木に付着するカタツムリです。非常に薄い形状の殻を持つのが特徴で、朽木の狭い隙間に入り込んでいる姿も観察できます。あまりの薄さにお客様によく「これ本当に生きているんですか?」と聞かれます。

 

扁形動物

コガイビルの仲間

 やんばるの森で時折見かける太く巨大な真っ黒のコウガイビルで、全長は15cmを超えます。分類学的検討がなされているのかは不明です。写真はカタツムリ類(シュリマイマイ?)を捕食しているところです。

環形動物

久米島で撮影したUVライトで蛍光するミミズ。2022年に記載されたアズマフトミミズ属のAmynthas kumeだろうか

ミミズ類

 沖縄島にはヤンバルオオフトミミズやアカシマフトミミズなどの大型のミミズがおり、前者は全長50cmを超える大型のミミズです。やんばるの林道沿いにある側溝に溜まった落ち葉溜まりの中や、雨が降っている夜の林道上で見かけます。

 今回紹介したのは独断と偏見で選んだ土壌動物たちでしたが、実際にはものすごいたくさんの動物たちを観察することができます。特に雨が降ったあとの湿った林内などは種数も個体数も多く、観察にはもってこいです。本当は片っ端から紹介したいですが、文量がものすごいことになるので、またいつかの機会に紹介していこうと思います。

生物観察にオススメのシーズンについて:陸のフィールド・生き物編

「結局、沖縄で自然観察にオススメなシーズンはいつ?今行ったら何が見られるの?」

沖縄旅行で沖縄の自然や生物を観察したい、お子さんに観察させたいと考えている方の多くが抱く疑問なのではないでしょうか?弊社(キュリオス沖縄)のツアーへの参加を検討してくださる方にも参考になると思います。

とは言っても、同じ仲間の生物でも種によっても活発になる時期が違ったりするので、あまり細かく挙げていくとキリがありません。今回はおおまかにシーズン別に、例年の気候とどんな生き物が見やすくなるのかを解説していきます。

※服装について、オールシーズン通して言えること

  • 野外・屋外アクティビティ全般について言えますが「ジーンズの長ズボン」は汗を吸ったり雨に降られたりして濡れると膝が曲げにくくなるのでおすすめしません。
  • 年間を通じて雨が降りやすい気候で、また天気予報も外れることが多いため、野外・屋外での活動を予定されている方はシーズンにかかわらず雨具を用意した方がよいです。
  • 湿度は年間を通じて高いです。思ったよりじめっとしてる・汗をかくという想定で服装を準備していきましょう。
  • 野外・屋外アクティビティでは暑い季節は帽子が必須ですが、晴れれば冬でも日差しはきついのであった方がよいです。持っていない場合はタオルを頭に巻くだけでも大丈夫です。
帽子はアドベンチャーハット的な形のものがオススメですが、キャップでも、なければタオルを頭に巻くだけでも。

3月〜4月

<気温と気候>

沖縄では「うりずん」と呼ばれる時節です。本州の暦で言えば春ですが、こちらの感覚ではどちらかというと晩春〜初夏という感じかもしれません。日に日に暖かくなってゆき、最高気温が20℃を超える日が多くなってゆきます。暖かい日だと25℃を超えることも。

うりずんの森を甘い香りで彩るセンダンの花

ただし気温の落差が大きい時期でもあり、3月末ごろまでは「寒の戻り」のような感じで気温がガタっと下がることもあります。

<服装>

暑くもなく寒くもなく、人間が野外で動くには一番快適な季節です。ただし気温が上がった場合と下がった場合とで落差がやや大きいので、どちらにも対応できるようにして行きましょう。厚すぎない生地の長袖〜場合によっては半袖の服装と、風をピタッとシャットアウトできるウィンドブレーカーのようなアウターをお持ちになるのがおすすめ。下は長ズボンが良いでしょう。

<自然・生き物>

木々の若葉がいっせいに展開する新緑の季節です。まだ暑すぎないので、午前・午後とも生き物が見やすい時期です(※生き物によっては活動する時間帯が決まっています)。ただし「寒の戻り」で気温がガタっと下がると生き物たちの活動は鈍くなり、山や森の様子が冬に戻ったようになってしまうこともあります(→12〜2月の項参照)。

アサギマダラはかなり早い時期から活発になるチョウのひとつ。夏の間は沖縄本島からは姿を消す

チョウの仲間は多くの種類が飛び始めます。アゲハチョウの仲間はこの時期に羽化する個体は小型のものが多くなります。バッタ・キリギリスの仲間、ナナフシの仲間、カマキリの仲間などはおもに幼虫が多く見られます。

オキナワトガリナナフシ。ナナフシやバッタの仲間などはこの時期はまだ幼虫しか出ないものが多い

またこの時期にしか成虫が見られない小型の甲虫もいます。日なたではトカゲの仲間が日向ぼっこする様子がよく見られるようになります。

オキナワトラフハナムグリ(オオシマオオトラフコガネ)はうりずんの季節にしか見られない甲虫

ちなみに沖縄本島では南部を中心に、4月の上旬あたりから「イワサキクサゼミ」というセミが鳴きだします。

5月〜6月

<気温と気候>

5月といえば大型連休、GWですが、実は沖縄は例年GW後半あたりから梅雨に突入してしまいます(もっと早い年も遅い年もあります)。沖縄の梅雨は入った直後かなりまとまった雨が降るのが特徴で、せっかくゴールデンウィークの沖縄に来たのに連日どしゃ降り…ということも少なくありません。梅雨は6月中旬〜後半に空けることが多いですが、5月後半くらいからほとんど雨が降らなくなってきて「梅雨どこ行った??」と言ってるうちに梅雨明け…というパターンになる年が多いです。

サクラランの花が咲くのはこの時期

気温は高く、最高気温25℃を超える日が多く、晴れれば30℃近くにまで上がる日も。また雨が降っても本州の梅雨のように肌寒くなることはなく、20℃を下回るような日はめったにありません。日陰はまだ涼しく感じます。

<服装>

雨具必須です(他の季節もですが)。本州の梅雨を想定して厚着してくると間違いなく暑いでしょう。半袖長ズボンがおすすめです。アクティビティによっては半ズボンでもいいでしょう。

<自然・生き物>

大雨が降ってしまえば多くの生き物は隠れてしまいますが、晴れの日、雨の後などはたいへん生き物が多く見られる時期です。チョウの仲間は種数がぐっと多くなりますし、バッタ・キリギリスの仲間も早いものは成虫が見られはじめます。

コノハチョウの姿が多くなってくるのもこのくらいの時期から
オキナワヘリグロツユムシ。5月くらいから成虫が多く見られるようになる

中〜大型の甲虫も多くなり、5月ごろからオキナワヒラタクワガタ、6月ごろからオキナワノコギリクワガタなどが出現するようになります(※お問い合わせが多数ありますが、弊社のツアーは昼間ですのでクワガタ・カブトムシ類との遭遇は多くありません)。昼行性の爬虫類もいちだんと活発になりますし、昼間にヘビを見かける機会も多くなってきます(ヘビが見られるかは基本的に運次第です)。雨後ならオキナワシリケンイモリが出歩いている姿にも出くわします。

大きなアカマタ。こんなのが見やすくなるのは夏前と、あと夏後の暑さが一段落した時期

7〜9月

<気温と気候>

屋外で活動するには正直暑さが厳しい季節です。気温はぐんぐん上がり、最高気温は30℃を切らなくなります。7月中旬〜9月にかけては最低気温も30℃前後をあまり下回りません。沖縄本島は上がっても34℃くらいなので、近年の東京などよりは涼しいと言われることも多いですが、夏の間ずっと湿度が高く、加えて夜も気温が下がらないため「別の種類の暑さ」を感じる方が多いと思います。日陰にいても暑く感じます。

照りつける太陽、湿気をたっぷりふくんだ空気、何も起きないはずがなく…(しばしばスコールのような突発的な大雨が降ります)

台風の多い季節です。7月、早い年は6月くらいから台風が来ます。

<服装>

ジメっとした暑さなのでとにかく風通しのよい服装を。ただしアクテビティによっては肌を出しすぎると危険なこともあるので注意が必要です。弊社が山や森のトレッキングでオススメしている服装は(やぶこぎなどはしない前提で)「半袖+ごく薄手の長ズボン」です。また洋服の替えを用意することを強くオススメします。汗かきの人はタオルなどを首に巻くとよいです。

<生き物>

気温が高いので、観察するにしても人間が活動しやすい午前中がおすすめ。トカゲなどの昼行性の爬虫類も、暑すぎる午後はかえって出てこなくなることがあります。チョウの仲間も暑い午後を避け午前中に活動的になるものが多いです。オキナワヒラタクワガタ、オキナワノコギリクワガタなどの出現もピークを迎えます(※問い合わせが多数ありますが、弊社のツアーは昼間ですのでクワガタ・カブトムシ類との遭遇は多くありません)。

暑いのが大好きなオキナワキノボリトカゲは一番活発な時期。ただし最も暑い時間帯には一時的にあまり活動しなくなることも

基本的には生き物が活発でたいへん賑やかな季節ですが、8月中に雨が降らないと暑さと乾燥で「夏枯れ」と呼ばれるような、生き物の姿が一時的に少ない状態になることがあります。

10〜11月

<気温と気候>

9月は8月の延長という感じで暑い日が続きますが、9月下旬か10月上旬ごろから少しずつ気温が下がってきます。といっても基本的には暖かく、日中は30℃、夜間は25℃に届いたり届かなかったりを繰り返しながら少しずつ気温が下がっていく感じです。日陰は涼しく感じられるようになります。

大ぶりのピンクの花をつけるサキシマフヨウが咲くとすっかり秋

台風は8月9月ほどではありませんが、来るときは来ます。

<服装>

人間が野外で動きやすい気候です。春先と比べると安定して暖かく、気温の落差はあまりありません。薄手の生地の長袖〜半袖の服装がおすすめ。下は薄手の長ズボンが良いでしょう。

この季節は寒い日でこのくらいの服装がベスト。暑い日は半袖の方がベター

<生き物>

涼しくなり、夏の暑さを避けていた生き物も姿を現すようになります。チョウの仲間は夏と変わらなきくらい種数が見れますし、バッタ・キリギリスの仲間、ナナフシの仲間、カマキリの仲間などは多くの種類で成虫が見られるようになります。昼行性の爬虫類も活発ですが、オキナワキノボリトカゲなど暑いのがとにかく好きなものはやや少なくなります(でも見られます)。夏のセミ(クマゼミなど)がいなくなり、代わりに秋のセミ(クロイワツクツク、オオシマゼミなど)が鳴くようになります。

タイワンツチイナゴ。バッタの仲間、キリギリスの仲間、カマキリの仲間の成虫が一番多く見られるのはこのころです

12〜翌2月

<気温と気候>

11月中旬以降も安定して暖かい日が続いたあと、早いと11月下旬、遅いと12月中旬ころに北西風が吹き始め、ガクッと気温が下がってきます(年明けになることもあります)。一度気温が下がると風が強く、曇りがちで肌寒い日が続くようになります。よく「夏から秋を飛ばして冬になる」と形容されます。気温にすると最高20℃弱、最低15℃前後くらいですが、風が強く、体感気温は一桁台。ただし、晴れて風が止まると気温が25℃近くの陽気になる日もあります。

冬の尾根を彩るオキナワテイショウソウの花

例年1月中旬〜2月上旬ごろに寒波が来て一年で一番寒くなり、最低気温一桁近くか一桁台まで下がり「列島凍える」などの見出しが地元紙に踊りますが、だいたいそのすぐ後くらいからは暖かくなり始めます。

<服装>

長袖と、風をピタッとシャットアウトできるウィンドブレーカーのようなアウターがおすすめ。防寒対策はインナーにヒートテックを着るくらいで、ダウンはほぼ不要と思ってよいでしょう。下は動きやすい暖かめのズボンがおすすめです。余裕があれば突発的に暖かくなった場合の服も持っていくとよいです。

気温はそこまで下がらないものの風が強いので、風を通さないウィンドブレーカーなどのアウターがおすすめ

<生き物>

沖縄の木々は常緑樹が多いものの、一部冬に落葉する木はこの季節には葉を落とします。気温自体は東京の秋くらいですが、沖縄の生き物にとってはまぎれもなく「冬」の季節で、爬虫類や目立つ昆虫は基本的に出てこなくなり、生き物の賑わいはなくなって山や森の様子が「冬だなぁ」という感じになります。

ナナホシキンカメムシなど通年見られる昆虫もいる

ただ成虫で冬を越す昆虫も多く、暖かい日には種類や個体数は少ないながらチョウの仲間が飛ぶこともあり、そんな日は爬虫類でも寒さに強いアオカナヘビなどは活発になります。

沖縄の爬虫類の中でも特に寒さに強いアオカナヘビは、真冬でも暖かい日には陽だまりに出てくる

結局オススメなのはどの季節?

沖縄の山や森など陸のフィールドに生き物が多く、かつ観察しやすく、人も多すぎず飛行機や宿も取りやすい(安めの)季節を皆さんにこっそり教えちゃいましょう。

というか!下記のシーズンはせっかく生き物がたくさん出ているのに毎年お客さんは少なく、ネイチャーツアー会社としては毎年大変もったいない思いをしているので大きな声で宣伝したいくらいです。ハイシーズンにお客さんを増やすよりは、フィールドへの負荷も少なくて済みます。学校やお仕事の都合が合う方は是非ご計画ください…

①4月上旬〜GW前

3月末までは学校が春休みになるためかなりのハイシーズンで、4月頭もそこそこ混みますが、それからGWまでは沖縄への旅客が少なく、野外で過ごしやすい気候で、かつ生き物が多く見られる時期です。

②梅雨明け前(6月中旬前後)〜学校の夏休み前

一年でおそらく一番多くの生き物が見られるにもかかわらず、沖縄への旅客が少ない時期です。本州の多くの地域では梅雨の真っ只中っですが、沖縄では明けているか、明けていなくても例年梅雨後半のほとんど降らない時期に差し掛かっています。

③9月〜11月中旬

8月までは沖縄への旅客が大変多く混雑しますが、9月に入るとぐっと人が少なくなります。気候的にも生き物も夏の延長という感じなので、台風のリスクはありますがおすすめの時期です。

冬はオススメできない??

この話はまた他の記事でまとめて詳しく書く予定ですが、冬だからといって自然観察が楽しめないわけではありません。目立つ昆虫や爬虫類などは出てきにくくなりますが、朽木や落葉の下を探したり、カタツムリ類を探して観察したり(沖縄には固有の陸貝類がたくさんいます)、植物を観察したり、ちょっと地味ながら観察できるものはいろいろあります。

シュリケマイマイ。沖縄は固有のカタツムリの多い地域で、詳しく知れば知るほど楽しめる

キュリオス沖縄のネイチャーツアーについて

キュリオス沖縄では、沖縄の山や森を歩き、昆虫、爬虫類、植物などを観察することをメインにしたネイチャーツアーを年間を通じて催行しております。

よく「秋冬の時期もやってますか?」というお問い合わせをいただきますが、やってます!寒い時期はやはりそれなりに目立つ昆虫や動物は少なくなりますが、そういうシーズンでもいろいろ観察するネタを見つけられるのが、生き物好きのガイドが揃っている弊社の強みでもあります。

こちらのページにツアーの一覧を掲載しております、よろしければ是非参加ご検討ください!

 

オフシーズンこそ山に行こう!秋と冬の植物たち

 新北風(ミーニシ)も吹き始め、すっかり秋になった沖縄島。 このまま気温が下がり冬になると生き物もいなくなる…と思われがちですが、そんな事はありません。 沖縄島では冬に観察できる生き物もたくさんいます!今回は秋や冬に観察できる植物を紹介していきます。

リュウキュウルリミノキ (タシロルリミノキ) Lasianthus fordii

まずはこちらのブルーベリーみたいな実をつけるリュウキュウルリミノキ。残念ながら実は美味しくないようですが、鮮やかな色でやんばるの森を彩ります。登山道などでごく普通に見られる植物です。

 

リュウキュウハナイカダ  Helwingia japonica subsp. liukiuensis

漢字で書くと「花筏」。葉の中央に花が咲く姿からそう名付けられました。秋から春にかけて花を咲かせます。

 

ヤマビワソウ Rhynchotechum discollor

秋から冬にかけて白い実をつける低木です。実はやや薄い梨のような味で、みずみずしくて美味しいです。

 

オキナワジイ (イタジイ) Castanopsis sieboldii subsp. lutchuensis

沖縄島の中部〜北部の非石灰岩地帯に見られるシイの仲間です。どんぐりはアクがなく、生でも食べられます。

 

オキナワウラジロガシ Quercus miyagii

こちらも沖縄島の中部〜北部の非石灰岩地帯に見られるどんぐりの仲間で、11〜1月頃に日本最大のどんぐりを落とします。ただし観察できる場所がやや限られています。ちなみにどんぐりは激マズいです。

 

シマサルナシ Actinidia rufa

沖縄島の北部で見られるキウイの仲間です。実はキウイを小さくしたような形をしていて、味もキウイそのままでとても美味しいです。晩秋から冬にかけて林道や登山道で実を拾うことができます。

コダチスズムシソウ (セイタカスズムシソウ)  Strobilanthes glandulifera

6年に一度、12〜1月ごろに一斉開花を行う植物です。写真は2021年の12月に撮影したものなので、次の開花は2027年の12月頃だと思われます。薄紫色の花が美しいです。 

 

寄生植物

多くの植物は光合成を行いますが、実は光合成をやめて何かに寄生して生活している植物もいます。沖縄島では様々な寄生植物が見られますが、今回は秋冬に観察しやすい3種を紹介します。

ヤッコソウ Mitrastemon yamamotoi

やんばるで12月頃に見られる植物で、光合成をせずに樹木の根から栄養を吸う寄生植物です。大名行列の奴に見立てて名前がつけられました。名付け親は朝ドラで有名になった牧野富太郎です。

 

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キイレツチトリモチ Blanophora tobiracola

こちらも沖縄島の主に石灰岩地帯で冬に見られる寄生植物です。まるでキノコみたいな形をしています。トベラやシャリンバイなどの根に寄生します。

 

リュウキュウツチトリモチ Blanophora fungosa

一方こちらは沖縄島南部の琉球石灰岩地帯で見られるツチトリモチの仲間です。こちらも知らなかったらキノコにしか見えません。クロヨナなどの根に寄生します。

 

シダ植物

シダ類は基本的に常緑なので、年中観察できます。しかし見分けるのが難しく、スルーされてしまいがちです。冬は他の植物と一緒に是非シダも観察してみましょう。今回は特徴的なシダを3種選抜して紹介します。

ヒカゲヘゴ Cyathea lepifera

沖縄島の中部以北で見られる日本最大のシダ植物です。幹には葉が脱落した小判型の痕が残ります。この痕を触ると金運が上がるという話もあるようです。私は上がっていませんが…

 

リュウビンタイ Angiopteris lygodiifolia

大きく成長する根茎を龍の鱗になぞらえて名付けられた大型のシダです。葉は全長2mを超えとても迫力があります。

 

コバノカナワラビ Arachniodes sporadosora

林道沿いや登山道で普通に見られる小型のシダです。葉は光沢があり、硬く革質で、まるで針金で作られているかのような質感です。

 

タイワンコモチシダ (ハチジョウカグマ)  Woodwardia prolifera

低地〜山地の林縁沿いなどで見かけるシダです。葉の表から無数の子株を出すことからこの名がついています。子株は落ちると新しい株として成長していきます。

まとめ

春〜秋に比べて気温が下がり、昆虫や爬虫類がどうしても少なくなってしまう冬ですが、そんな時期だからこそ普段スルーしてしまいがちな植物たちに目を向けるチャンスです。今回紹介した植物たちは冬だけ花や実をつけたり、そもそも冬にしか姿を表さない種もいます。このチャンスに是非植物観察をしてみませんか?

【修学旅行】恩納村にて、サンゴ礁生物・サンゴ礁の自然について「リーフトレイルコース」を担当しました。

少し時間が開いてしまいましたが、9月27日、学習院高等科の修学旅行の「リーフトレイルコース」のガイドを担当させていただきましたので、そのお話を。

当日は9/27は、台風(のちに沖縄に大停電をもたらす台風24号、アジア名❝チャーミーTrami❞)が沖縄本島のすぐ南まで接近。開催も危ぶまれる中、奇跡的にまったく雨も降らず、雷も鳴らず、風もたいして強くはならず、無事に1日のプログラムを完結できました。

干潮のサンゴ礁にて

コースは恩納村内を回るもので、

9:00集合
万座毛でサンゴ礁地形の見学
グラスボート乗船、サンゴ礁の観察
恩納村博物館見学
昼食
干潟の生き物観察
サンゴの種苗を見学
16:00解散

というものだったのですが、台風の高波の影響により前日の時点でグラスボートの欠航が決定。

平底船であるグラスボートはサンゴ礁を俯瞰(ふかん)して観察できる&さらにその状態でしゃべることができる(シュノーケリングはしゃべれない)という素晴らしい自然観察ツールなのですが、少し波が高いと出船できないのがネック。まぁ当日の高波なら、グラスボートではなくどんな船でも無理でしょう。

万座毛へ

当日の朝、天候に関する不安を抱えつつ、生徒さん方が宿泊されているホテルで合流。

前日夜に打ち合わせをしたのですが、皆さん本当に好奇心旺盛で、沖縄の海の生き物や自然に興味があってこのコースを選択したとのことで、こんな天気ではありますが、これは何とかして面白いものを見て帰ってほしいところです。

遠目にも荒れています

まず向かったのが万座毛。ここはとても有名な景勝地・観光地ですが、ダイナミックな海蝕洞などの地形が見られます。

集合写真を撮ったら肝心の海蝕洞が隠れてしまいました
こんな感じの海蝕洞です。

ここでは、このような琉球石灰岩の段丘がどうやってできた、みたいな話からスタート。サンゴの造礁作用のスケール感などを感じてもらいました。

話をしていて驚いたのは、なんとこの高校に「地学部」という部活があるということ。

「あるのが普通という感覚だった」と先生はおっしゃってましたが、「科学部」として1つにまとまっている学校や、あっても「生物部」「化学部」「物理部」という学校が多い中、「地学部」は相当珍しいのではないでしょうか。鉱物や地形をはじめとして、天文や気象まで扱う部活、とのこと。

そしてなんと、参加した生徒さんの中にこの地学部所属の生徒さんがいて、以後随所で地形の写真を撮りまくったり、「ツルハシもってきて叩きたい…」と、持病を発症して楽しんでいました。

ちなみに生物部は部長さんが来てました。

ビーチコーミングへ

景色の良いところですが、空はどんより

この後グラスボートに乗る予定だったのですが、船が出ないとあっては仕方ないのでビーチコーミングに変更。

ちなみに「ビーチコーミング」は、海岸の漂着物や貝殻やサンゴのかけらを集めて楽しんだり、観察したりする活動を指します。

見たことのない面白い花がある!と食いついてくれたのは、おもに海岸に生える低木クサトベラの花。

こんなやつです。上に飛び出ているのは雌しべ

奇妙な形に見えますが、花を訪れるハチなどの背中に確実に花粉をつけ、それを別の花の雌しべで確実に回収する形になっています。

ここで、ビーチコーミングのコンセプトを説明した後、目の届く範囲で散ってもらって捜索開始。

こんな具合に岩のくぼみにたまった砂をすくって探すと…

ありました、ホシズナです。

ホシズナは有孔虫というアメーバ状の生物が持っている殻で、比重が軽いので波にのってこうした岩場のくぼみに打ち上げられます。

ホシズナやタイヨウノスナといった、炭酸カルシウムでできた有孔虫の殻は、サンゴの骨格とともに、サンゴ礁の砂や地形ができる材料となっています。

肌色のつぶが有孔虫の殻

くぼみにたまった砂はこんな感じ。肌色のつぶつぶは、全てホシズナやタイヨウノスナなどの有孔虫の殻。このうち、トゲが削られずちゃんと残っているものを「ホシズナ」と呼んでいるだけなのです。

この他にも高波でかめ穴に取り残されてしまったルリスズメダイを発見したり…

何かの頭骨を発見したり。マングースでは!?と騒いでいましたが、ネコでしょうね。マングースの頭骨ならもっと細長くて小さいはずです。

みんなで拾ったものを持ち寄って、サンゴの骨格などをネタにサンゴの形態・生態、生活史などのお話。

一見なんてことのない砂浜にも、目の前の海の生物や環境に関する情報の切れっ端がたくさん落ちているのです。

恩納村博物館へ

昼前に恩納村博物館に移動。今回、同博物館学芸員の方に展示の解説をお願いしました。

ここでは、サンゴ礁の自然がかつて人々の暮らしとどのように関わってきたか、というお話を中心に解説していただきました。サンゴ礁や山の自然を利用する際の道具やそのレプリカが多く展示されています。

個人的には、単発で見学に行ってすごく楽しめるか?というと、よほど史跡が好きな人でないと難しいかな、と思いますが、他のアクティビティ(たとえば釣りとか)の行きや帰りに訪れて見学していくと、いろんなものがリアルに繋がって見えるのではないでしょうか。家族でのお出かけがてら、にもオススメです。

「隣のコミュニティーセンターの最上階で海を見ながらご飯を食べれる」という前情報だったので行ってみたら、何ていうか、オシャレなぼっち飯空間でした。飯食いながらコミュニケーションは難しい感じ。

いろいろ雑談をしましたが、「家族でレンタカーを借りて沖縄旅行に来たら、川か海で放置してもらい、1日遊んで夕方回収してもらう」という猛者もいました。

サンゴ礁・干潟へ

フェルト底ブーツも装備

心配していた天候もなんとか持ったので、午後からはサンゴ礁と干潟の自然観察に。

ルリマダラシオマネキ♂

シオマネキの仲間を見たり、

ソデカラッパ

ソデカラッパの独特すぎる形態に興奮したり。

腹面はこんな感じ
甲も独特ならハサミも独特

「右のハサミを缶切りのように使って巻き貝を割る」なんてネタは知っている生徒もいましたが、砂に潜る様子を観察してもらうと大喜びしてくれました。

プラケに入れて撮影

もう何も言わんでも、こんな感じで生き物を見つけては観察、という光景があちこちで繰り広げられていました。

やたら攻撃的なベニツケガニの仲間
転石の裏の生き物

転石下の生き物探し。

転石を裏返したときは、かならずもとの位置・もとの面が下になるように置き直します。その際、転石で潰してしまわないように、目立つ生き物はなるべくすぐ側に避けておきましょう。

ハナビラダカラと卵塊

こちらは卵を産んでいたハナビラダカラ。

ナガウニ

たくさんいたナガウニ。サンゴ礁でもっとも普通に見られるウニです。

ノシガイ

目立つツートンカラーのノシガイ。

ケブカガニ

そして毛の色がやたら明るいケブカガニ。

顔のアップ

スーパーサイヤ人だ!と喜んでいただけました。その発想は無かった。眼赤いし。

テンジクダイの仲間(テンジクダイ亜科)の幼魚。

ヤワラガニの仲間?非常に小さいカニ

サメハダヤドカリ?が殻の上で大事に育てていたイソギンチャク。この仲間は自分の貝殻にイソギンチャクをつけて、その刺胞の毒で実を守ろうとする習性があります。

転石下で見つけたイレズミハゼの仲間。かわいらしいですね。

誰かが面白いものを見つけるたびに、散ったメンバーを呼び集めて解説したり、問いかけをしたり。

シャコガイ。この色模様は…シラナミでしょうか。

オオイカリナマコ

そしてオオイカリナマコ。ナマコはこうしたバットに水を張って入れると、水中にいるときの「本来の姿」を観察しやすいのですが…1匹のナマコでバットがいっぱいですね。

こちらはジャノメナマコ。

ふだんは小石や枯れ葉をまとって偽装しています。

「ベタベタしているわけでもないのに、どうやってくっついているんですか?」―こんな良い質問も。正直、正確なところはよく分かりません。粘液でくっつけていると言われていますが、はがした後触ってみてもネバネバ、ベタベタなどしていません。

ミノガイの仲間。触手のような突起をすべて貝殻に収めることはできず、このまま貝殻を開閉させてパクパクと泳ぎ回ります。「いっそ貝になりたい」みたいな貝観とは真逆な貝です。

ミナミイワガニ。テトラポッドなどにもついていますが、人影を見るとすばやく隠れてしまいます。運良く捕まりました。

ハサミや眼の下など、よくみるととても美しい色彩をしていますね。

フトユビシャコの仲間。

シャコの仲間は前あし(捕脚)の先がふくらんでいて非常に硬く、その部分を高速で振り上げることで「パンチ」を繰り出します。

この攻撃で貝を割ったり、魚を気絶させて(というか殺して)食べるといわれています。威力はかなりのもので、水槽のガラスが割られた、みたいな話もけっこうよく聞きます。

紫外線ライトで蛍光を発するサンゴ(パリカメノコキクメイシ?)

目の前の生きたサンゴを題材に、サンゴの生態や、サンゴという生き物がサンゴ礁という環境をいかに支えているか、といったお話もしました。

こちらはクロユリハゼの仲間の幼魚。潮溜まりにいっぱいいました。

まんまるなヒトデ、マンジュウヒトデ。

*【観察する際の注意】マンジュウヒトデ、コブヒトデを観察される方にお願いです。これらのヒトデには、わりと高確率でヒトデヤドリエビの仲間がついています。

コブヒトデにつくヒトデヤドリエビの仲間(過去に撮影)

こんなやつです。

マンジュウヒトデやコブヒトデを無造作に持ち上げてしまうと、これらのエビが取り残され、周りの魚に捕食されてしまうこともあります。特定の種類のヒトデにしか共生せず、個体数の多いエビではないので、大事にしたいものです。

なるべくヒトデを水ごとバットなどに入れて観察しましょう。エビも観察できて一石二鳥です。

カエルウオの仲間

こちらは、かなり陸よりの潮溜まりにいたカエルウオの仲間(タマカエルウオ?)。

敵に襲われたり、潮溜まりの水温が熱くなったりすぎると、しっぽ全体を使ってピョンピョンと水のない場所を跳ねて逃げることができます。プラケースなんて、入れたそばから飛び出していきます。

散々楽しんで、そろそろ撤収という時間なのに、生き物を見つけては盛り上がる生徒さんたち。良い眺めだ…と思いつつも、スケジュールもあるのでそうも言ってられません。

クワズイモの葉と

これまでの写真の絵面があまりに修学旅行らしくないので撮らせてもらった1枚。

このあと最後に、バタバタしていて写真はないのですが、サンゴ種苗を生産している漁港に行き、種苗を観察。

種苗の生産方法や移植方法などとともに、「移植だけでは絶対に沖縄のサンゴ礁は回復しない」というお話もさせていただきました。何らかの原因があって減ったものは、原因を取り除かなければ長期的に回復しませんし、サンゴ礁の生態系を回復させるなら数種類のサンゴだけでなく、そこに生きる様々な生物が暮らせる環境を取り戻さなければなりません。比較的手頃にできる移植ばかりが先行している現状は、問題が多いです。

 

と、ここで時間がきたので漁港を後にし、ホテルに帰着。

締めはどんな話にしようか迷いましたが、皆さん既にめちゃくちゃ自然や生き物が好きなので、「今楽しむばかりでなく、自分や子供・孫の世代までが、今後もこういう楽しみ方をできる場所を残していくためにどうすればいいか考えよう」というようなお話をしておしまいにしました。

サンゴ礁にて

最後に、コースに参加してくださった生徒の皆さん、引率の先生、1日ありがとうございました!!

春〜初夏、やんばる・沖縄県南部の森で見られた生き物まとめ(2018年3, 4月のツアーにて、小動物編)

前回の昆虫編に引き続き、3〜4月、キュリオス沖縄で実施している「やんばる」「沖縄南部の森」トレッキングツアーで見られた小動物を、一挙にまとめて紹介してみたいと思います。

両生類・爬虫類は、やはり暖かくなってからが本番。とはいえ、なかには逆に冬〜春にかけてしか見られないものもあります。

両生類のなかま

岩の上にたたずむオキナワイシカワガエル

オキナワイシカワガエルOdorrana ishikawae

緑と紫がかった茶の斑模様が大変美しい大型のカエル。一見派手ですが、コケやコケ混じりの土の上にいると信じられないくらい目立ちません。

沖縄県の天然記念物、および国内希少動植物種に指定されています。

ナイトツアーで移動中の個体に出会えれば超ラッキーですが、繁殖シーズンならば声だけなら聞くことができます。ちなみに今季は、ガイドが気づくより先にお客さんが発見してくれました(汗)

※申し訳ありませんが、安全性と保護の両観点から、繁殖地へのご案内はいたしかねます。

見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!

身をすくめて動かないリュウキュウアカガエル

リュウキュウアカガエルRana ulma

体色は明るいレンガ色〜灰褐色まで、かなり幅がありますが、いずれもじっとしていると落ち葉によく紛れます。

じっとしていると大変見つけにくいのですが、よく跳ねるので着地点を見失わなければ見つけることができます。

2011年にやっと新種記載され学名がついたカエルです。やんばるの固有種で、ニホンアカガエルなどが人里近くの雑木林などに比べると、やや自然度の高い環境を好むようです。

見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!

道路に出てきたリュウキュウカジカガエル

リュウキュウカジカガエルBuergeria japonica

沖縄・奄美・トカラとその周辺離島の固有種ですが、山の上から海岸までどこでも見られます。

塩水にかなり強いと考えられ、流木にしがみついてたびたび海を渡ったのではないか、ということが最近の遺伝子を使った研究から示唆されています。

学名がjaponicaとなっていることから以前「ニホンカジカガエル」と呼ばれていましたが、「カジカガエル」とまぎらわしい、奄美群島・トカラ列島・沖縄諸島にしか分布しない、などの理由から「リュウキュウカジカガエル」と呼ばれるようになりました。

見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!
やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング

落ち葉の上で鳴いていたヒメアマガエル

ヒメアマガエルMicrohyla okinavensis

日本最小のカエル。と言っても極小というわけではなく、見ても「えっ、そんなに小さいかな…」という感想を漏らす方が多いです(笑)

名に反してアマガエルとはかなり縁の遠いカエルで、オタマジャクシはまるでナマズの稚魚のような形をしています。

小さい体ですが、鳴き声はけっこうけたたましく、某大学の構内では暖かい季節に雨が降ると、あちこちからヒメアマガエルの声が聞こえてきます。

見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!

浅い沼地の水中にいたシリケンイモリ

シリケンイモリCynops ensicauda

奄美群島・沖縄諸島の固有種のイモリ。本州、四国、九州とその周辺離島に分布するアカハライモリによく似ていますが、背中からしっぽにかけてハッキリした筋が入るのが特徴です。

基本的に流れのない水場が好きなようですが、雨の後など湿度の高い日は、昼間から水場からかなり離れて出歩いていることもあり、昼間のトレッキングツアーでも見かけます。

イモリなので両生類で、卵からかえった幼生はオタマジャクシのような形をしています。

見られたツアー
やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング
▶やんばる森コース、ハカセと行くやんばる自然観察ウォーキング
がじゅまるの森コース、ハカセと行く南部の自然観察ウォーキング
▶やんばるナイトトレッキング!

林道を歩くイボイモリ

イボイモリEchinotriton andersoni

まるでゴジラのような風貌を持ったイモリの仲間。英語でもCrocodile newt(ワニイモリ)といいます。

かなり自然度の高い地域に限って生息しています。イモリの仲間ですが、水辺からかなり離れた(でも湿度の高い)森の中で見られます。動きは鈍く、じっと動かず天敵をやりすごすタイプです。

奄美群島と沖縄諸島にのみ生息する固有種で、沖縄県・鹿児島県の天然記念物、および国内希少動植物種に指定されています。こちらは見られたらかなりラッキー。

季節的には冬〜梅雨くらいまでで、夏場見かけることはほとんどありません。

見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!

爬虫類のなかま

クワズイモの根茎の上にいたクロイワトカゲモドキ

クロイワトカゲモドキGoniurosaurus kuroiwae kuroiwae

トカゲよりは、どちらかというとヤモリに近い爬虫類。ただ、足は壁にくっつけるような構造にはなっておらず、夜間地上を歩き回ります。暖かい季節に多く見られます。

沖縄の各離島に少しずつ模様の違う亜種が住んでいて、そのどれもが島の固有亜種です。

このうち沖縄本島のものがクロイワトカゲモドキですが、沖縄本島の南部〜中部の個体は伊江島のマダラトカゲモドキと近いと言われており、やんばるに生息するものとは今後、別亜種とされる可能性が高いです。

沖縄県・鹿児島県の天然記念物、および国内希少動植物種に指定されています。

見られたツアー
▶やんばるナイトトレッキング!

草の葉の上にいたアオカナヘビ

アオカナヘビTakydromus smaragdinus

草によくまぎれる緑色のカナヘビの仲間。全身緑なのは♀だけで、♂は背中の部分が緑〜茶色のグラデーションになっているものが多いです。

森の中よりも、開けた草原などで見かけます。ただ住宅街の草むらなどでは見ず、すぐそばに自然の森や林が残っているような場所に多いようです。

「ジューミー」をはじめとして非常に多くの地方名があります。沖縄県民の「ソウルアニマル」らしく、このトカゲの写真などを展示していると、年配の方々をはじめとして「なつかしい」「昔はどこにでもいたのにねぇ…」と異常に盛り上がります(笑)

見られたツアー
やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング

 

側溝のフタの上で暖まっていたオキナワトカゲ

オキナワトカゲPlestiodon marginatus(幼体)

大人になると全身茶色っぽいトカゲになってしまいますが、幼体は黒い体にクリーム色の筋が入り、尾が青くてとてもきれいです。

ニホントカゲ、ヒガシニホントカゲの幼体も似たような色彩ですが、オキナワトカゲはもう少し大きくなるまでこの色彩を保っているようです。

とくに午前中、体温を上げるために日当たりの良い山道や林道に出てきていますが、警戒心が強く、かなり離れたところからでないと観察できません。

この写真からでは分かりませんが、オキナワトカゲを観察中。この時はバッタの仲間を捕まえて食べたりなど、かなり色々な行動を見せてくれました。

見られたツアー
やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング

落ち葉の間をかきわけて走るオキナワヒメトカゲヘリグロヒメトカゲ

オキナワヒメトカゲAteuchosaurus okinavensis

ヘリグロヒメトカゲAteuchosaurus pellopleurus

たいへん足の短いトカゲ。体は全身茶色の上、落ち葉の下を電光石火のスピードで走るので、捕まえにくいトカゲのひとつです。

口はかなり小さく、小さな昆虫、特にシロアリなどを好んで食べます。

※本種はMakino et al. (2023) により分類学的再検討が行われ、沖縄諸島の個体群はオキナワヒメトカゲとして新たに記載されました。また、奄美群島以北に生息する個体群についてはそのままヘリグロヒメトカゲA. pellopleurusでしたが、新たにアマミヒメトカゲという標準和名が日本爬虫両棲類学会より提唱されています(和名が変更されただけで別種にはなったわけではありません)。

一度、落ち着くと手の上でも大人しくしてくれます。

見られたツアー
やんばる山コース、ハカセと行くやんばる自然観察トレッキング

ガラスヒバァAmphiesma pryeri

目が大きく、たいへん愛らしいヘビ。カエルが好物で、雨や雨上がりの日によく見られます。

以前は無毒とされていましたが、毒を持つことが分かっています。ただし構造的に毒が入りにくいらしく、捕まえるとよく咬んでくるヘビですが、咬まれて毒がまわったという例はいまだにありません。

いずれにしても、少し離れてじっくり観察するのが良いでしょう。

夜の方がよく見られますが、この春は昼間に山の中で何匹も出くわすという日もありました。

ヒメハブOvophis okinavensis

こちらは正真正銘有毒ヘビです。ハブ(ホンハブ)と違って動きが鈍くて攻撃性は低く、また毒量も少ないのですが、離れて観察するに越したことはありません。

落ち葉に紛れる色彩の上、動きが鈍いことがアダになって近付くまで気づけないことが多く、注意が必要です。

カエルをとくに好み、沢や沼地のそばでよく見られます。この春、雨の晩に集落の中を通ったとき、ふと川をのぞき込むと、浅いコンクリの川底にすごい数並んでいて笑ってしまいました。

まとめ

最初にも書きましたが、やはり両生類・爬虫類は暖かくなる5月ごろからが本番です。

ただ、同じ気温でも「暖かい季節にたまたま冷え込んだ日」より「寒い季節にたまたま暖かくなった日」の方が圧倒的に多くの生き物が見られる傾向にあります。

また冷え込んだ場合、気温が下がった当日は生き物が少なく、冷え込みが数日間続くとまた出て来る傾向にあります。

雨の夜、林道に出てきたリュウキュウアオヘビ

旅行で来られる方のほとんどにとっては、天気は良いほうがいいに決まっていますが、生き物は雨降りや雨上がりに多く見られます。

特に爬虫類・両生類は出たとこ勝負で、何が見れるかは「その時のお楽しみ」ですが、一応、季節ごとにこんな生き物が見られますよ、という目安として、2018年3−4月にツアー中に出会った生き物をまとめてみました。

写真はツアーコースにおいてツアー中、もしくはツアー前後に弊社スタッフの宮崎が撮影したものです。

(一部、見られたけれど写真に収められなかったものに関しては、以前撮影したものを使いまわしています。)

…と、こんな感じでひたすら生き物を探したり観察したり、生態系や環境について学んだりするツアーを行っております。

よろしければ公式ページ、SNSも覗いていってくださいね!

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奄美群島・やんばる・西表島の世界自然遺産登録が見送りとなりそうな件について、ネイチャーツアーの会社として思うこと

県内誌や各メディアで触れられているとおり、ユネスコの諮問機関であるIUCN(国際自然保護連合)が「奄美群島、やんばる、西表島地域の世界自然遺産への登録」を延期するよう勧告を出しました。

これを受けて、2018年中の同地域の世界自然遺産登録実現は、少なくと見積もって2-3年延期される見込みが濃厚となりました。

この件について、われわれキュリオス沖縄としての思い、また「なぜ延期されたのか」「そもそも世界自然遺産とは」という観点から整理し、少し書いてみたいと思います。

キュリオス沖縄としての見解と思い

沖縄の自然を活用したツアー、それも「ツアーの中で生物を観察したり科学したり、生態系について学んだりすること」をメインのコンテンツとして据えている私たちキュリオス沖縄にとって、シンプルに考えれば、世界自然遺産登録は歓迎したい動きです。

また、沖縄の自然の社会的な価値向上に少しでも貢献していきたいと考え、2016年には自然遺産登録に関して、県内での周知を目指したツアーなどの形で協力させていただいた私たちにとっても、悔しいという思いもあります。

にもかかわらず、登録が延期となる(可能性が高い)ことにほっと胸を撫で下ろしている面がある…というのも私たちの正直なところです。その辺をすこし掘り下げてお話したいと思います。

登録によるリスク

候補地としての推薦の段階で、各方面から登録によるリスクを憂慮する声も聞かれましたが、これは私たちも例外ではありません。

それは、延期勧告の理由にも「持続可能性に重大な懸念」という指摘がありましたが、実際にこのまま世界自然遺産登録されて観光地として人気が高まっていったときに、フィールド・生態系を十分に保全しつつ利用するだけの素地・体制が当地で出来上がるには、まだまだかなり時間が必要だと感じているからです。

自然を観光資源として大きく売り出すことを考えた場合、まず「その地域の自然がどのようなものか」ということの学術的(自然科学、人文科学、経済学的)な把握に始まり、どんなアクティビティがどのくらい環境に負荷をかけるのか、その地域のフィールドのキャパシティがどのくらいで、どこまでの負荷なら許容できるのか、なるべく負荷をかけず、かつ有効に活用にするためには現実的にどうすれば良いか、などを検討する必要があります。

そしてそのためには「地域の自然を劣化させず、次世代にわたって持続させる」という共通の前提のもと、地域、観光事業者、研究者、愛好家、その他の有識者が一体となって意見を交わしつつ、検討を重ねていく、というのが最も良い形だと考えています。

地域の発展にどうつなげるのか、は必ず検討すべきことではありますが、それも「持続的なもの」でなくては意味がありません。また、その持続可能性が「イメージだけ・感情論に偏ったもの」ではなく実効性のあるものにするためには、学術・サイエンスの視点が必要不可欠です。

このような一筋縄ではいかない取り組みは、観光客が激増して「祭り状態」になってから行ったのでは文字通り「後の祭り」です。オーバーユースでフィールドが荒れ果てれば、世界自然遺産の指定解除もあり得ます。そして指定解除よりよっぽど深刻な問題として、一度荒れ果てたフィールドは簡単には元には戻りません。

そうならないためには、「何のために世界自然遺産の指定を目指すのか」「指定が本当にベストなゴールなのか」というところにさかのぼって、今ひとたび再検討する必要があると私たちは思っています。

今回の勧告は、沖縄の観光が抱える問題を明確化し、自然利用に関する課題について、から各方面が共通認識を持つ良いきっかけになりうる考えています。我々をふくめ、沖縄の自然に関わる人々が今後どのように協力してこの課題の解決に取り組んでいくのかが問われています。

私たちはなぜネイチャーツアーをやるのか

正直なところ、私たちはネイチャーツアー事業を「商機だから」というモチベーションで考えたことは一度もありません。

そもそも私たちは、大学院で沖縄の自然を対象とした研究に携わってきた人間でした。

船での底引きによる生物相調査(写っているのは研究室の同僚)

ここ10年でも、在学中から通ってきた沖縄のあちこちのフィールドが開発の波に飲まれ、自然や生態系のかく乱が大規模に行われ続けてゆく現場をいくつも見てきました。

観光資源として自然の重要性が叫ばれる割には、沖縄の観光業界ではあまり自然の豊かさ(景色の綺麗さだけでなく、生態系の健全さや沖縄の自然の持つ特異さ)を活かしたコンテンツは少なく、またその重要性もあまり広く認識されていないのが現状です。

このような経緯から、沖縄観光の現場に、専門の科学教育を受けた人材が入っていくことの必要性を感じ、また沖縄の自然の放つ「サイエンティフィックな、自然史的な魅力」と「それに対して興味を持つことの楽しさ」を活かしてツアーを作ろう、成功したモデルを作って沖縄の自然の価値を多くの人に認めてもらおう、という思いで、同じ大学院の仲間と開業に至りました。

私たちのネイチャーツアーは「自然や生物に興味・関心を持ってもらうこと、その興味関心に応えること」をメインテーマとしています。なぜなら、それが長い目で見れば、「世の中が自然や生物に興味を持つ方向に動くこと」になり、自然への理解と保全への啓発と保全につながると考えているからです。

なので、たとえ世界自然遺産に登録されたとしても、「世界遺産を見たくて来る」という形でお客さんが来て、単に珍しい体験ができた、という満足感を得て帰ってもらうだけでは、私たちのツアーのゴールは達成されたことになりません。

また同様に、「滅多にできない体験として、特定の有名な希少生物が見たい」というモチベーションでたくさんの観光客が押し寄せるのも、キュリオス沖縄としては本意ではありません。奥地まで行かなくとも、特定の希少な生物の生息地や繁殖地に踏み込まなくても、それよりも身近で沖縄らしい、興味深い自然のコンテンツはたくさんあります。そんな自然観察を通して自然を見る視点を提供したい、そんな思いがあります。

ツアーで利用させていただいている、大宜味の森。自然度は高いですが、決して「秘境」ではありません。でも自然観察の視点を心得ていれば、楽しいコンテンツはたくさん見つかります。

もし、世界遺産登録が実現したあかつきに「世界遺産だから」という物珍しさを超えて、「沖縄の自然の本来の魅力」をちゃんと伝えるような体制が整っていなければ、観光客は「世界遺産を見た」というだけの表面的な感動を得て帰り、指定された地域の自然は「世界遺産」という名のもとにただ消費され、そこに息づく生物や生態系のことは誰も顧みなくなってしまうと思うのです。

私たちは、なにもネイチャーツアーだけでなく、全ての自然を利用したアクティビティの利用者に「自然環境の価値」に対する認識を持ってほしいと考えています。カヤックでもトレッキングでもヒーリングでも、自然の中で行うなら、その背後にある自然はただの「背景」「風景」ではなく、生き物たちから構成された生態系であり、それはとても貴重なものである、と。そういう価値観を利用者が共有することは、沖縄の自然環境を持続的に自然を利用していく上ではとても重要なのではないかと思っています。

というわけで、私たちキュリオス沖縄は世界自然遺産登録のいかんに関わらず、沖縄の自然の魅力とその価値を伝えてゆく事業を進めていきます。

世界自然遺産について

そもそも「世界自然遺産」とはどのような制度なのでしょう?今後のために、少しのその辺りの情報を調べなおしてまとめてみました。

世界遺産とは

世界自然遺産は、ユネスコによって指定される「世界遺産」の一つです。世界遺産は、1972年の国際連合教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」にもとづいて登録される「文化財、景観、自然など、人類が共有すべき顕著な普遍的価値を持つ物件(不動産)」のことです。

「戦乱や開発などから史跡などの文化遺産を守ろう」という動きやは20世紀初頭からあったようで、また一方で1948年に発足した国際自然保護連合(IUCN)によって「自然遺産保護のための国際的な取り決めを作ろう」という動きが進められており、ユネスコがそれらの流れを一本化してでき上がったのが「世界遺産」の制度です。

ざっくり言うと、「人類共通の財産と言える自然や建造物を守り、次世代に渡って伝え、多くの人で価値を共有できるようにしよう」というような制度です。世界遺産について詳しくは、Wikipediaの「世界遺産」の項目に非常によくまとまっているのでご参照ください。

世界遺産は、「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産」に分けられます。

 

世界自然遺産登録のための「4つの基準」

「世界遺産」のうち、自然にまつわる重要性に基いて指定された世界遺産のことを「世界自然遺産」と呼びます。

重要性を決める基準は「ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域」「地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの」「陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの」「生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの」の4つです。

世界自然遺産登録のための要件としては、

  • ①上記の世界自然遺産の評価基準(「自然美」「地形・地質」「生態系」「生物多様性」)のどれか1つ以上を満たすこと

に加えて、

  • ②顕著な普遍的価値を示すための要素がそろい、適切な面積を有し、開発等の影響を受けず、自然の本来の姿が維持されていること
  • ③十分な「保護管理」の体制が整っていること

という要件が挙げられています(参照:環境省のページ)。

日本では現在までに「屋久島」「白神山地」「知床」「小笠原諸島」の4地域が、世界自然遺産に指定されています。

奄美群島、やんばる、西表島はどのような地域か

今回、国が登録を目指してきた「奄美・琉球」とは、自然の固有性・希少性という視点から見るとどのような地域なのでしょうか。

奄美〜沖縄本島、八重山諸島を含む南西諸島は、氷期―間氷期の繰り返される地史の上で中国大陸とつながったり離れたりを繰り返してきた島々です。

左上から順に、「1500万年前」「150万年前」「100万年前」「10-2万年前」の陸の様子。濃い緑が現在の海岸線、薄い緑が推定上の当時の海岸線(引用:沖縄県のHP「「琉球諸島」の自然特性」より)

そのため、陸続きの時期に大陸から渡ってきた生物が島々に取り残され、島ごとに進化した結果、世界でもその場所にしかいない固有種の生物が多く生息する地域となり、また固有の生態系が築かれました。

奄美群島と沖縄諸島の遺存固有種、イボイモリEchinotriton andersoni
オキナワイシカワガエルOdorrana ishikawae 本種とアマミイシカワガエルOdorrana splendidaは、それぞれ沖縄本島と奄美大島の固有種だ。
ナミエガエルLimnonectes namiyei 沖縄本島北部(やんばる地域)の固有種だ。
クロイワトカゲモドキGoniurosaurus kuroiwae kuroiwae とその亜種数種は、沖縄本島とその周辺離島にのみ分布する固有亜種だ

さらに、奄美〜やんばるの森は北緯27-28°に位置していますが、この「緯度27°」の地域は、温帯というには高温で、かつ熱帯には入り切らない「亜熱帯」という気候帯に属します。

地球儀で見ると分かりやすいですが、この気候帯に属する地域はエジプト、インド、メキシコなど乾燥地帯がほとんどで、奄美ややんばるなどのように湿潤な照葉樹林が広がっているところは世界的に見て非常に珍しいのです(参照:沖縄市教員用資料:琉球列島と同緯度にある国や地域)。

やんばるのとある沢

これらの固有の生き物が生息すること、またその多くが絶滅のおそれがあり、生物多様性を守るために重要な地域であることを鑑みて、国は去年2月、奄美大島・徳之島、やんばる(沖縄本島北部)と西表島の、合わせておよそ38000ヘクタールの地域を世界自然遺産に推薦していました。

延期勧告の主な理由は?

上記の「世界自然遺産登録の基準」のうち、「生態系」「生物多様性」の2つの項目で登録を目指してきましたが、このうち「生態系」の項目では、候補地のエリアの多くが道路や施設によって細かく分断され「飛び地」になっていること、また指定されるエリアの周辺に「緩衝帯」となりうるエリアがないことから「生態系の持続可能性に重大な懸念がある」とされ、基準に不適格とされたようです。

もう一つの「生物多様性」については、「絶滅危惧種や固有種の多さ」が評価されたものの、生物多様性上非常に重要と考えられる「アメリカ軍から日本に返還済みの北部訓練場の跡地」が今回の候補地に含まれておらず、「このエリアを国定公園に編入し、候補地として統合することを検討すべきこと」などが指摘されました。

正式な勧告文を読めないので断定的なことは言えないのですが、いろいろな方面からの声を総合すると、どうやら今回の勧告では「自然や生態系の価値」が十分評価されなかったというよりは、「適切な保護管理が行われているかどうか、持続可能性があるかどうか」という点で基準に引っかかり、勧告を受けたものと考えられます。

勧告で延期になる?

勧告では「6月の世界遺産委員会で日本が説得力のある説明をすれば、まだ登録の可能性は残っている」とされています。

しかし、世界自然遺産に関する日本の有識者からは「しっかり推薦の内容を見直して再提出すべき」との声も上がっています。

まとめ

今回、登録が延期されたことを通じて、沖縄の自然を観光の中でどう扱うべきなのかをすべての関係者が考える機会となり、人と自然が共に豊かでありつづける共生型社会が実現することを強く願っています。

また、キュリオス沖縄はそのための取り組みを多様な事業者と連携を図りながら今後も推進して参ります。

よろしければ公式ページ、SNSも覗いていってくださいね。

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春〜初夏、やんばる・沖縄県南部の森で見られた生き物まとめ(2018年3, 4月のツアーにて、昆虫・その他節足動物編)

今回は、3〜4月、キュリオス沖縄で実施している「やんばる」「沖縄南部の森」トレッキングツアーで見られた昆虫・ その他節足動物(クモなど)を一挙にまとめて紹介してみたいと思います。

 

 

キュリオス沖縄のツアーの雰囲気を、バーチャルに楽しむ体験としてもどうぞ。

昆虫編

3・4月、沖縄で「うりずん」と呼ばれる季節は、多くの昆虫も活動を始める時期です。3月、まず多くの植物が新芽を出したり花を咲かせたりし始め、そして4月くらいに初夏の陽気と言える日が多くなってから、昆虫の活動も本格的になってきます。

昆虫は、ほぼ年がら年中見られる種類もいますが、時期になるとたくさんいるのに、時期を外すとほとんど見られない、というものも多いです。

オオバギの頂芽の中に隠れていたナナホシキンカメムシ。沖縄本島南部にて。

ナナホシキンカメムシCalliphara exellens

「日本一美しいカメムシ」「空飛ぶ宝石」などの呼び声も高いカメムシ。周年見られますが、冬場〜春は葉の裏に集団で固まっているのも見かけます。

見かける頻度は高く季節もあまり問わないのですが、「是非見たい」というお客様がいらっしゃった時に限ってなかなか見つからず、根性で探し出したときの写真が上の2枚 (笑)

数十匹単位で葉裏に群れていることもあります。

見られたツアー
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交尾中のアカホシカメムシ

アカホシカメムシDysdercus cingulatus

時期になるといつ行っても見るカメムシ。真冬になるとあまり見ない気がします。あと盛夏にも少なかったような。頭を下にして見ると人面に見えるところがチャーミング。

サキシマフヨウやハイビスカス、オオハマボウなどフヨウ科の植物に来ます。よく種の汁を口にぶら下げて、ちゅうちゅう吸いながら歩いています。

写真は交尾中の♂♀ですが、このような体勢だと常に♀の進行方向に向かって歩いて行きます。体が大きいので必然的にそうなるのでしょう。

ズルズルと♀に引きずられていく。男性陣一同(ガイド&お客)、皆で笑った後ふと黙ってしまう

見られたツアー
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葉上でじっとしているオキナワモリバッタ

オキナワモリバッタTraulia ornata okinawaensis

写真はまだ幼虫ですが、成虫になっても翅が伸びず、飛ぶ(飛翔する)ことができません。その代わり、太めの後ろ足で凄まじいジャンプ力を発揮します。思わず顔に向かって飛んできてのけぞってしまうことも。

開けた草むらではなく、森の中やその周辺の下草で見られます。

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夜、樹幹の上に止まっていたオキナワヒラタヒシバッタ。赤いのはダニの仲間

オキナワヒラタヒシバッタAustrohancockia okinawaensis

まるで古代兵器のようなゴツゴツした質感の、でも大変小さなバッタ。都市部の芝生などでも普通に見られる「ヒシバッタ」の仲間です。

木の幹などに見られます。昼間あまり注意したことはないですが、夜他の生き物を照らして樹幹を探すと見つかります。

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オキナワヘリグロツユムシ(幼虫)Psyrana ryukyuensis

3〜4月は、まだ翅の短い幼虫が見られます。たいてい葉の上にじっと静止しています。

ツユムシはキリギリスの仲間でも草食性が強いと考えられている昆虫です。

目が慣れると、葉上のあちこちにいるのに気づきます

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葉上で獲物を待ち構えるハネナシコロギス

ハネナシコロギスNippancistroger testaceus

肉食性のキリギリスの仲間(キリギリス下目)。前脚と中脚がトゲトゲですが、これは獲物を抱え込んでホールドするためです。昼間は葉を丸めた巣の中に潜み、夜になると這い出してきて狩りをします。

暖かい季節に夜に森の中を歩くと、葉の上で獲物を待ち構えているのを見ることができます。

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葉上にいたオキナワコマダラウマ。地面にいることが多い

オキナワコマダラウマNeotachycines kobayashii

カマドウマの仲間。林の地面付近にいます。かなり派手に跳躍します。

よく跳ねるためか嫌われることが多いカマドウマの仲間ですが、キリギリスのように人間に咬み付いたりもしないし、基本的に人間には無害な生き物です。よく跳びますが。

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オオバギの葉上にいたオキナワナナフシ

オキナワナナフシEntoria okinawaensis

ご存知、「枝に擬態してじっと動かない」ことに生存戦略のすべてを賭けたと思われる昆虫。

「ななふし」はもともと枝のことで、枝そっくりの昆虫という意味の「ナナフシモドキ」という名前がついたのが、省略されて「ナナフシ」とよばれるようになりました。

ナナフシは人気です。ナナフシの仲間自体は本州にも広く住んでいるのですが、「初めて見る」という方も多いです

春〜初夏に見られるのはまだ小型の個体ばかりで、成虫は夏〜秋頃に見られます。

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地面に降り立ったルリタテハ沖縄亜種

ルリタテハ(南西諸島亜種)Kaniska canace ishima

本州でも、成虫のまま越冬し「春先、まっさきに舞う蝶」として有名なルリタテハ。深い焦げ茶に空色、というとてもお洒落な色彩のタテハチョウです。ルリタテハ属は南西諸島亜種と本土亜種のみ(1属1種2亜種)から成ります。

沖縄では暖かい日は真冬でも飛びます。沖縄本島のものは「南西諸島亜種」として区別されます。

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シロノセンダングサから吸蜜するイシガケチョウ

イシガケチョウCyrestis thyodamas

石のような模様が美しいタテハチョウの仲間。止まるとき翅を開く種類が多いタテハチョウの仲間でも、必ずと言っていいほどいつも翅を開きます。

ガジュマルやハマイヌビワなど、沖縄の森に多いイチヂク属の植物が幼虫の食草なので、沖縄本島のどこでも見られます。季節も特に問いませんが、暖かい季節の方がよく見かけます。

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コノハチョウ。翅を開いて止まることも閉じて止まることもある

コノハチョウKallima inachus

裏面は枯れ葉のような色彩ですが、表面は目の覚めるような柿色と青の金属光沢をしたチョウ。ただ、長生きするようで、翅がスレて(鱗粉を失って)ほとんど光沢がなくなってしまったものも多く見られます。

幼虫の食草はオキナワスズムシソウという植物で、群生している場所には比較的多く見られます。県の天然記念物。

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葉上にとまるリュウキュウヒメジャノメ

リュウキュウヒメジャノメMycalesis madjicosa

地味系のチョウですが、よく見ると蛇の目模様(眼状斑といいます)がとてもバランスよく散っていて美しいチョウです。野原というよりは、林や森の中の少し薄暗いところとその周辺で見られます。

止まったまま動かないことが多く、よく観察させてくれるチョウです。

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ショウベンノキの花から吸蜜するアサギマダラ

アサギマダラParantica sita

食草とするガガイモ科の植物の毒を体内にためこむ毒蝶です。3月の暖かい日くらいからよく見られるようになります。

渡りをするチョウとしても有名で、本州と南西諸島の間を行き来する個体も多く、1頭のチョウが1500kmも移動した例も知られています。

無理に近付くと逃げてしまう訪花中のチョウは、双眼鏡で観察するのがキュリオス流

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イヌビワの葉上にとまったオオゴマダラ

オオゴマダラIdea leuconoe

南西諸島から南に分布する大型のゴマダラチョウ。あまり羽ばたかず、滑空するように優雅に飛びます。

蛹が黄金色をしていることでも知られています。金色というと目立ちそうですが、自然界では周囲の光を反射してうまく溶け込み、なかなか見つかりません。

幼虫の食草がホウライカガミという海岸近くに多いつる性の植物なので、海岸に近い森林でよく見られます。

夜間、ホウビカンジュ(シダ)につかまって寝るシロオビアゲハ

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シロオビアゲハPapilio polytes

沖縄本島など、南西諸島に分布するアゲハチョウ。幼虫はミカン科の植物を食草とします。

日があたり、蜜のよく出る花がたくさんある所でよく見られます。

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夜間、灯りに来たナガサキアゲハ。

ナガサキアゲハPapilio memnon

多くのアゲハチョウ属(Papilio)にある尾(尾状突起)がないのが特徴。日本のアゲハチョウ属の中では最大級の種類です。写真の個体は♀で、♂はクロアゲハに似てほぼ黒一色の翅をしています。

よく山道で出会いますが、飛翔が力強くあっという間に飛び去ってしまい、花に来た個体以外は観察するのが困難です。

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寝ているアオスジアゲハ

アオスジアゲハGraphium sarpedon

ツアーで大変人気のあるチョウですが、実は東京にいっぱいいます。秋葉原など、クスノキの巨木が多い都市部なんかだと特によく見られます。

幼虫はクスノキなどの葉を食べますが、沖縄にはクスノキは少ないので、代わりに同じクスノキ科のヤブニッケイによくついています。

飛翔が速く、花に来てもホバリングしながら吸蜜するのでなかなか撮れません。ということで夜寝ているところの写真。

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シロノセンダングサから吸蜜中のジャコウアゲハ♀

ジャコウアゲハAtrophaneura alcinous

幼虫時代に食草としていたウマノスズクサの仲間の毒を体内にため込む毒蝶。黒っぽいアゲハチョウ(クロアゲハ、シロオビアゲハなど)にはいろいろな種類がありますが、このジャコウアゲハへの擬態なのではないかとも考えられています。

食草となる植物の多い、ある程度湿度のある森に多く見られます。

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花が白飛びしてしまっているが、ムラサキカッコウアザミから吸蜜中のクロセセリ

クロセセリNotocrypta curvifascia

南方系のセセリチョウ。素早く飛翔します。

幼虫の食草はゲットウなどショウガ科の植物。暖かい時期はずっと見られます。

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誰かが仕掛けたトラップに来ていたオオトモエガ

オオトモエErebus ephesperis

とても美しい大型のヤガの仲間。とは言え、突然持っているライトに飛んでこられると慣れない方はびっくりするようです。

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葉上にとまるオキナワナガハナアブ。縄張りがあるのか、飛び回って他の個体を牽制していた

オキナワナガハナアブMilesia elegans

ハチにとてもよく擬態したアブ。写真で見るとハチでないことはすぐに分かりますが、飛び方や羽音をよく真似ています。

初夏〜夏に山の山頂や尾根などで見られます。

本当にハチでないということを納得していただくため、ネットを振って捕獲

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交尾中のカクムネベニボタル

オオシマカクムネベニボタルLyponia oshimana

3月末から5月初旬ごろに限って見られます。樹や下草の葉の上などに見られる、前翅が美しいえんじ色をした、光らないホタルの仲間。

いる時期にはたくさん見られますが、時期を外すと全く見られないものの一つ。成虫はよく花粉や蜜を求めて花に来ます。

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飛んできてヤブニッケイの葉にとまったオキナワトラフハナムグリ

オキナワトラフハナムグリParatrichius duplicatus okinawanus

これも4〜5月頃に限って見られる甲虫。この時期の沖縄の甲虫としては(ごく一部で)アイドル的な存在。

花に来ることもありますが、樹や草の葉の上にとまっていることが多いです。民芸品のような味わい深い色使いと模様です。

こいつはもうちょっといい写真リベンジしたいですね。

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リュウキュウボタンヅルの葉上にいたオキナワイチモンジハムシ

オキナワイチモンジハムシMorphosphaera coerulea

こちらは季節を問わず見られる普通種ですが、前翅が深い青緑の光沢を帯びていてなかなか綺麗です。

ガジュマル、ハマイヌビワなどイチヂク属の葉を食べます。ときに大発生します。

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イヌビワの葉上にいたアマミアオハムシダマシ

アマミアオハムシダマシArthromacra amamiana

「ゴミムシダマシ科」という、大変種数の多い甲虫の仲間です。

緑の金属光沢がとても綺麗ですが、これも春〜初夏の一時的に見られるものだと思われます。

こちらはセンリョウの葉の上にいた個体。参加者のお父さんが見つけてくださいました

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ボリューム感のすごいリュウキュウクチキゴキブリ

リュウキュウクチキゴキブリSalganea taiwanensis ryukyuanus

苦手な方はごめんなさい。素晴らしくボリューム感のある、沖縄固有亜種のゴキブリです。

人家に来るようなことはなくて、その名の通り朽木に住んでいます。

ツアーでは持続的な利用を考え、基本的に朽木を掘ったりすることはしませんが、たまたま皮をちょっとめくったらいました。もちろん、絶対見たくないといお客さんの時はわざわざ探しませんのでご安心を。

その他のクモ・ヤスデ・ムカデなどの仲間

苦手な方はごめんなさい(2度目)。でもまぁ、同じ地球の住人ですし…

通年見られるものが多いですが、オオムカデの仲間などはやはり暖かくなる5月以降に多く見られます。

夜間、葉上にいたギンボシザトウムシ

ギンボシザトウムシPseudogagrella amamiana

長い脚を8本もつザトウムシの仲間。どうも一年生のようで、冬場は一時的に見なくなり、春先は幼体をよく見かけ、4月ごろから成体を見かけるようになります。

背中に美しい緑色の金属光沢があります。

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葉上で何かを食べていたアマミオオヒラタザトウムシ。ミノムシか?

アマミオオヒラタザトウムシLeiobunum maximum distinctum

体の中央の部分は1cmを超える大型のザトウムシ。春先から夏前ころまで見られます。なぜか夏以降あまり見かけた記憶がありません。

夜行性で、夜に森の中を歩き回って獲物を探しています。

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オオアカザトウムシ。もう少し大きな個体もいた

オオアカザトウムシEpedanellus tuberculatus

まさにモンスターというべき外見(ただし小さい)をしたザトウムシ。夜行性で夜に徘徊していますが、昼間でも隠れている個体が見つかることもあります。

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夜間、葉上で獲物を待ち構えるオキナワカワリアシダカグモ

オキナワカワリアシダカグモPseudopoda spirembolus

夜行性で、夜になると葉の上に出てきて獲物を待ちかえまえています。腹部の端に白い線状の模様があって、クモの頭を上にしてみると「微笑んだ口」のように見えるのが特徴。

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リュウキュウコアシダガグモSinopoda okinawana

こちらも夜行性で、夜になると葉の上で獲物を待ちかえまえています。

「アシダカグモ」は納屋などに住みつきゴキブリやカマドウマなどを捕食しますが、リュウキュウコアシダカグモやオキナワカワリアシダカグモは人家に侵入しません。

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林道を歩いていたホルストアマビコヤスデ

ホルストアマビコヤスデRiukiaria holstii

かなり大型のヤスデ。ヤスデの仲間も嫌われがちですが、落ち葉などを食べる大人しい生き物です。

よく見ると翡翠色できれいです。体の節から脚が片側2本ずつ、計4本出ているのがヤスデの仲間の特徴です。

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転石の下にいたクロオキナワアマビコヤスデ

クロオキナワアマビコヤスデRiukiaria falcifera

ホルストアマビコヤスデよりさらに大型になり、色も派手です。

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まとめ

昆虫に関しては、例年よく見られるものは今年も出ている感じでした。ただし、とくに昆虫類はツアーで使っているルートで年によって発生したりしなかったり、チョウの仲間はその時たまたま飛んで来るか来ないか、などによって見られるか、見られないかが左右されます。

息子さんに楽しんでいる自分の姿を見せるというのも、最高だと思います

何が見れるかは「その時のお楽しみ」ですが、一応、季節ごとにこんな生き物が見られますよ、という目安として、2018年3−4月にツアー中に出会った生き物をまとめてみました。

写真はツアーコースにおいてツアー中、もしくはツアー前後に弊社スタッフの宮崎が撮影したものです。

(一部、見られたけれど写真に収められなかったものに関しては、以前撮影したものを使いまわしています。見られたけれど写真を撮っていないものや、使える写真がないものは掲載していません)

…と、こんな感じでひたすら生き物を探したり観察したり、生態系や環境について学んだりするツアーを行っております。

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