「藻場」はなるべく踏むべからず!沖縄で海を歩く際はご注意を。

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「藻場(もば)」

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海藻や海草が一面に生えている場所をこう呼びます。紛らわしいですが、「モバゲー」等のモバは「モバイル」のモバであって藻場ではありません。

海藻と海草の違いは?

どちらも読みは「かいそう」です(海草の方は「うみくさ」と読む場合も)。

「海藻」の方は藻類(そうるい)と呼ばれる植物を指します。藻類とは簡単に言うと、花を咲かせず胞子で殖える植物の仲間で、体のつくりは単純で、根・茎・葉の区別はありません。「緑藻」や「紅藻」「褐藻」などいくつかのグループに大別されます。

身近なところではコンブやワカメなど。ローカロリーでうれしい「海藻サラダ」に入っているアレですね。岸近くで藻場を形成する海藻としてはホンダワラやカジメ、アラメなどが有名です。

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イソスギナ Halicoryne wrightiiこちらは藻類の仲間。

これに対して、「海草」は花を咲かせ種をつくる植物(被子植物)の仲間です。

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リュウキュウスガモ Thalassia hemprichii

海藻には「根」「茎」「葉」の区別がありませんが、海草にはちゃんとあります。

関東に多いのはアマモやコアマモ、沖縄だと一番多いのはおそらくリュウキュウスガモではないでしょうか。岸近くの砂地、特に河川があって陸からの栄養分が適度に流れてくる場所に多く育ちます。

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一面の海草藻場(うみくさもば)

海草はどっから来た?

植物の祖先も、最初は海で誕生・進化し、その後一部のグループが進化の過程で陸上に上がったと考えられています。

コケ→シダ→維管束植物の順に進化(分岐)した年代が新しいとされていますが、この順番は、より陸上に適応していく過程でもあります。端的に言えば、古いグループ方が乾燥に弱いのです。森の中がコケで覆い尽くされた屋久島なんて、「年400日雨が降る」と言われていますよね。ちなみに「藻類」は、そもそも陸上に上がらなかったグループの一つです。

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コケ植物の多くは湿潤な環境を好む。やんばるにて。

ところが「海草」の仲間は一度陸上に適応したのち、海に戻った変わり者の植物です。哺乳類でいうところのイルカやクジラみたいなイメージでしょうか。

海草藻場を見つけたら

さて、沖縄も海が楽しい季節になりましたが、サンゴ礁や砂浜を歩いていてこのような海草が茂っている場所を見つけたら、なるべく踏まないようにお願いします。多くの人によって踏み荒らされると枯れてしまいますので。

ただ、藻場は生物観察をするならうってつけの場所でもあります。

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カマスベラの幼魚と思われる

分かりますかね?定規に右下にいる緑色の魚。カマスベラという魚食性のベラの幼魚です。

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イッカクガニ Menaethius monoceros

そこそこの大きさの藻場があればたいてい、こんな感じで緑色をした生き物やいろいろな魚の幼魚などが隠れ住んでいます。詳しくはまともな写真が揃ってから特集しようと思いますが、この他にも小型のイカの仲間やモエビの仲間、イソギンチャクの仲間など「藻場」にしか出てこない生き物がわんさかいます。

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(宮崎)

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植物で遊ぼびまくろう!理科の先生のための「理科であそ部」第5回

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キュリオス沖縄が協力している理科の先生向けのイベント「理科であそ部」第5回の様子をご紹介します。

「理科であそ部」とは(Facebookページはこちら

「理科であそ部」は、身近なところにひそむ科学を遊びながら学ぼうというコンセプトのもと、教員や科学教育に携わる人たちが集まって活動しています。自分の中の「科学の扉」が開けると、今まで見ていた世界と全く違った世界が見えてくるはず!教材や授業ネタを提供しあって、明日からの授業がレベルアップを目指します!

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と言っても今回の「先生オブ先生」はキュリオス沖縄のメンバーではなく、若き現役高校教員の中村元紀先生!中村先生のレクチャーのもと、今回は沖縄の身近な植物でとことん遊ばせてもらいました!(以下クォーテーションの中は、中村先生のしゃべった内容をうろ覚え&ダイジェストで再生)

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そして今回も、若手を中心に多くの県内の教員の方々が集まり。休日にもかかわらず…!

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一番手前の葉っぱは、沖縄県内の方には馴染み深いのではないでしょうか。

机には開始時点でいろいろな植物の葉や枝が山盛りにされています。さながらサラダバイキングの様相ですが、何に使うのかな…?

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植物というと「動かない」「普段、風景としか見ていない」ゆえに、特に子供たちや若い方にとって、興味の対象になりにくいという側面があります。しかし、そこは「見せ方」次第です。

ほう!
というわけで、まずは見て触ってにおいを嗅いで、五感で感じてみました。

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初めは無理に名前を覚える必要なんて全くなくて、「そうそう、これはこんな奴だった!」という印象に残る形で植物との「関係」を築きます。「くさいやつ」「ザラザラしてるやる」「白い汁が出るやつ」そんなんでいいんです。

おー、ざっくりしてるな(笑)でも言われてみればなるほど。ドクダミの匂いとか久々に嗅ぐと、ものっそい勢いで少年時代とか思い出しますもん。

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そうやって自分が「馴染みになった」植物に街中や公園で出会うと、とたんに親近感が湧いてきます。「お前、ここにもいるじゃんよ…!」みたいな。

子供たちにそれを感じてもらうためには、まずは先生が植物で遊び倒さなくてはなりません。分厚い理論書とかはひとまず脇に置いて、自分が体験者となりましょう。

というわけで、僕らも参加者となり植物を嗅ぎまくりーの、触りまくりーのしました。

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ちなみにこちらはゲッキツ Murraya paniculataというミカンの仲間の葉。鳥が種を運ぶので、県内だと庭先に森の中に、どこにでも生えているそうです。

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ちぎって匂いをかいでみると、ほのかに柑橘系の香りがしました。最近はブレンドしてお茶としても利用されていますね。ちなみにゲッキツ、これ全体で「1枚の葉」だそうです。

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モクマオウ Casuarina strictaの葉

こちらはあちこちの海岸で見かけるモクマオウの葉。一見マツの葉にも似ていますが、マツが裸子植物なのに対して、モクマオウは実はれっきとした被子植物の仲間だそうです。

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この茶色い小さな突起一つ一つが「葉」とのこと。「1枚の葉」と言っても、植物によってその形は想像以上に多様ですね!

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サラダバーではありません

さて、お次はイチジクの仲間(イチジク属 Ficus)の植物の仲間の葉っぱ7種を見分けてみます。

机の上には、山盛りになっているのがゴチャ混ぜになった7種の葉っぱ。こ、これを全部分けるだと…?

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ここに「ガジュマル」「イヌビワ」「ホソバムクイヌビワ」「オオバイヌビワ」「ハマイヌビワ」「アコウ」「オオイタビ」の7種の葉っぱが混じっているとのこと。イチジクの仲間と言われるとピンと来ないかもしれませんが、沖縄で最もよく見かける「ガジュマル」も実はイチジクの仲間です。

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ぱっと見、カードバトルをやってるようにも見えます

漠然と見ていると分かりにくいですが、葉脈や葉っぱの縁の形状、葉のサイズや触ったときの質感などに注目して、

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ああでもない、こうでもないと分けていくこと10分ほど。

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なんと、全班がほぼ正しく分類することができました。

人間の認識能力ってすごい!…というか、もともと人間の認識に則って生物を種類分けしていくのが「分類」で、「分類したがる」というのは人間の性(さが)のようなものなのでしょうね。

ここでちょっと屋外に出ることに。

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会場となった琉球大学の教育学部の周りだけでも、実に多くの種類の植物が見つかります。

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持ち帰ったイチジクの仲間(イヌビワ)の花(実)を割って、顕微鏡で見てみましょう。

何が出るんでしょう。中身、美味しそうだといいな。wktk(わくてか)しながら実を割ってみました。

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うぎゃーーー!!

出てきたのはこんなハチの仲間のイヌビワコバチ Blastophaga nipponica  ハチと言っても人を刺すことはない昆虫だそうです。

このハチはたまたま入っていたわけではなく、イヌビワの花粉を運ぶ手助けをしています。またこのハチも、イヌビワの花がないと繁殖できません。

イチジクの仲間には、それぞれの種類に「専属」のイチジクコバチの仲間がいて、もっぱら花粉の運搬をその1種類のハチに頼っています。

なにその独占契約。一体どうやって成り立ったの…?

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こういうのは本で読んで知るよりも、実際に実を割って中からわらわらとハチが出てくるところを観察した方が絶対に印象に残りますね。

こんな感じで、今回の「理科であそ部」も超楽しませてもらいました!!中村先生、琉球大学教育学部の皆さん、ありがとうございます!!

 

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造花よりなお”作り物っぽい”植物「サクララン」咲いてました!【沖縄の野生植物】

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造花って、好みが分かれますよね。

多少手間がかかっても生きている植物を置く方が好きな方もいるでしょうし、一方で世の中、生花が置けない現場で造花が大いに活躍しているのもまた事実。

さて、今日紹介するのはそんな問題も吹き飛ぶくらい「造花っぽい」生きた植物。そんな植物が、沖縄にはもともと自生しているんですね。名を「サクララン」といいます。

サクラランとは

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サクララン Hoya carnosa こんな感じのつる性の植物です

桜なのか蘭なのか分からないような名前ですが、どっちの仲間でもなく「ガガイモ科」という科に属します。園芸業界では学名の属名の部分を取って「ホヤ」と呼ばれたりもするようです。

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沖縄の石灰岩地の森にごく普通で、岩にしっかり根を張って育ちます。石灰岩地に生息する植物には、土なんかなくても発芽して、そのまま石灰岩に貼り付きながら成長可能な植物が多く見られるそうです。

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こんな感じの根で石灰岩をがっちりホールド

葉は限りなくソフビっぽい質感

特徴的なのは何と言ってもやたら厚ぼったい葉。ツヤ感や重さなども相まって、懐かしの「ソフビ人形」にそっくりの感触です。オフィスにあったら多分、10人中10人が「やけに作り物っぽい造花だな〜」と思って通り過ぎるはず。

さて、石灰岩地に普通に見られると書きましたが、この植物、なかなか花を咲かせてくれないそうです。

崖などから大きく垂れ下がるような場所でないと花をつけないらしく、株自体はいくらでもあるのに花はなかなか目にすることができない…ということがよくあります。つい先日も、サクラランの株がいっぱいある沖縄本島南部のフィールドに花の写真を撮りに出かけ、現場でカメラを持ったおっちゃんに「1か所だけ咲いてたけどもう終わったよ〜」と言われ玉砕したばかり。

プラスチック製?と見まごうような花

それが、本日沖縄本島北部の石灰岩の山に入っていた時のこと。

この辺サクラランが多いし、こんだけ垂れ下がってたらどこか花つけてないかな〜?

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ん、あれはもしや…

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わ、やっぱりサクラランfl(花)だ!実は、間近でちゃんと見るのは初めてだったりします。

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半球状に花が集まった花序(かじょ)

噂通りカワイイなぁ…と思って近づいていくと…

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120mmのレンズによるクローズアップ

あ、あれぇ?何か思ってたのと違う…何この「作り物感」…

喩えるなら、人間だと思って近寄って行ったらマネキンだった、的な気持ち悪さと違和感。もちろん、普通の生きた花です。もともとこういう花なんですね。写真ではちょっと伝わりにくいですが、まるで幼児向けの玩具(それも安物)みたいな質感とディテールです。

というわけで、今日はちょっと珍しいものを見ることができました。憧れが砕け散るのと引き換えに、ですが。。

ちなみに、ここのフィールド自体はこのツアーでご案内しているフィールドなのですが、サクラランが咲いていたポイントは本道から脇道にかなり入った先、さらに藪の中なので、危なくてお客様をご案内することはできません。ご了承下さい。

追記:この後、ツアーのルート上でも咲いてくれました!

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(by 宮崎)

 

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