【修学旅行】恩納村にて、サンゴ礁生物・サンゴ礁の自然について「リーフトレイルコース」を担当しました。

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少し時間が開いてしまいましたが、9月27日、学習院高等科の修学旅行の「リーフトレイルコース」のガイドを担当させていただきましたので、そのお話を。

当日は9/27は、台風(のちに沖縄に大停電をもたらす台風24号、アジア名❝チャーミーTrami❞)が沖縄本島のすぐ南まで接近。開催も危ぶまれる中、奇跡的にまったく雨も降らず、雷も鳴らず、風もたいして強くはならず、無事に1日のプログラムを完結できました。

干潮のサンゴ礁にて

コースは恩納村内を回るもので、

9:00集合
万座毛でサンゴ礁地形の見学
グラスボート乗船、サンゴ礁の観察
恩納村博物館見学
昼食
干潟の生き物観察
サンゴの種苗を見学
16:00解散

というものだったのですが、台風の高波の影響により前日の時点でグラスボートの欠航が決定。

平底船であるグラスボートはサンゴ礁を俯瞰(ふかん)して観察できる&さらにその状態でしゃべることができる(シュノーケリングはしゃべれない)という素晴らしい自然観察ツールなのですが、少し波が高いと出船できないのがネック。まぁ当日の高波なら、グラスボートではなくどんな船でも無理でしょう。

万座毛へ

当日の朝、天候に関する不安を抱えつつ、生徒さん方が宿泊されているホテルで合流。

前日夜に打ち合わせをしたのですが、皆さん本当に好奇心旺盛で、沖縄の海の生き物や自然に興味があってこのコースを選択したとのことで、こんな天気ではありますが、これは何とかして面白いものを見て帰ってほしいところです。

遠目にも荒れています

まず向かったのが万座毛。ここはとても有名な景勝地・観光地ですが、ダイナミックな海蝕洞などの地形が見られます。

集合写真を撮ったら肝心の海蝕洞が隠れてしまいました
こんな感じの海蝕洞です。

ここでは、このような琉球石灰岩の段丘がどうやってできた、みたいな話からスタート。サンゴの造礁作用のスケール感などを感じてもらいました。

話をしていて驚いたのは、なんとこの高校に「地学部」という部活があるということ。

「あるのが普通という感覚だった」と先生はおっしゃってましたが、「科学部」として1つにまとまっている学校や、あっても「生物部」「化学部」「物理部」という学校が多い中、「地学部」は相当珍しいのではないでしょうか。鉱物や地形をはじめとして、天文や気象まで扱う部活、とのこと。

そしてなんと、参加した生徒さんの中にこの地学部所属の生徒さんがいて、以後随所で地形の写真を撮りまくったり、「ツルハシもってきて叩きたい…」と、持病を発症して楽しんでいました。

ちなみに生物部は部長さんが来てました。

ビーチコーミングへ

景色の良いところですが、空はどんより

この後グラスボートに乗る予定だったのですが、船が出ないとあっては仕方ないのでビーチコーミングに変更。

ちなみに「ビーチコーミング」は、海岸の漂着物や貝殻やサンゴのかけらを集めて楽しんだり、観察したりする活動を指します。

見たことのない面白い花がある!と食いついてくれたのは、おもに海岸に生える低木クサトベラの花。

こんなやつです。上に飛び出ているのは雌しべ

奇妙な形に見えますが、花を訪れるハチなどの背中に確実に花粉をつけ、それを別の花の雌しべで確実に回収する形になっています。

ここで、ビーチコーミングのコンセプトを説明した後、目の届く範囲で散ってもらって捜索開始。

こんな具合に岩のくぼみにたまった砂をすくって探すと…

ありました、ホシズナです。

ホシズナは有孔虫というアメーバ状の生物が持っている殻で、比重が軽いので波にのってこうした岩場のくぼみに打ち上げられます。

ホシズナやタイヨウノスナといった、炭酸カルシウムでできた有孔虫の殻は、サンゴの骨格とともに、サンゴ礁の砂や地形ができる材料となっています。

肌色のつぶが有孔虫の殻

くぼみにたまった砂はこんな感じ。肌色のつぶつぶは、全てホシズナやタイヨウノスナなどの有孔虫の殻。このうち、トゲが削られずちゃんと残っているものを「ホシズナ」と呼んでいるだけなのです。

この他にも高波でかめ穴に取り残されてしまったルリスズメダイを発見したり…

何かの頭骨を発見したり。マングースでは!?と騒いでいましたが、ネコでしょうね。マングースの頭骨ならもっと細長くて小さいはずです。

みんなで拾ったものを持ち寄って、サンゴの骨格などをネタにサンゴの形態・生態、生活史などのお話。

一見なんてことのない砂浜にも、目の前の海の生物や環境に関する情報の切れっ端がたくさん落ちているのです。

恩納村博物館へ

昼前に恩納村博物館に移動。今回、同博物館学芸員の方に展示の解説をお願いしました。

ここでは、サンゴ礁の自然がかつて人々の暮らしとどのように関わってきたか、というお話を中心に解説していただきました。サンゴ礁や山の自然を利用する際の道具やそのレプリカが多く展示されています。

個人的には、単発で見学に行ってすごく楽しめるか?というと、よほど史跡が好きな人でないと難しいかな、と思いますが、他のアクティビティ(たとえば釣りとか)の行きや帰りに訪れて見学していくと、いろんなものがリアルに繋がって見えるのではないでしょうか。家族でのお出かけがてら、にもオススメです。

「隣のコミュニティーセンターの最上階で海を見ながらご飯を食べれる」という前情報だったので行ってみたら、何ていうか、オシャレなぼっち飯空間でした。飯食いながらコミュニケーションは難しい感じ。

いろいろ雑談をしましたが、「家族でレンタカーを借りて沖縄旅行に来たら、川か海で放置してもらい、1日遊んで夕方回収してもらう」という猛者もいました。

サンゴ礁・干潟へ

フェルト底ブーツも装備

心配していた天候もなんとか持ったので、午後からはサンゴ礁と干潟の自然観察に。

ルリマダラシオマネキ♂

シオマネキの仲間を見たり、

ソデカラッパ

ソデカラッパの独特すぎる形態に興奮したり。

腹面はこんな感じ
甲も独特ならハサミも独特

「右のハサミを缶切りのように使って巻き貝を割る」なんてネタは知っている生徒もいましたが、砂に潜る様子を観察してもらうと大喜びしてくれました。

プラケに入れて撮影

もう何も言わんでも、こんな感じで生き物を見つけては観察、という光景があちこちで繰り広げられていました。

やたら攻撃的なベニツケガニの仲間
転石の裏の生き物

転石下の生き物探し。

転石を裏返したときは、かならずもとの位置・もとの面が下になるように置き直します。その際、転石で潰してしまわないように、目立つ生き物はなるべくすぐ側に避けておきましょう。

ハナビラダカラと卵塊

こちらは卵を産んでいたハナビラダカラ。

ナガウニ

たくさんいたナガウニ。サンゴ礁でもっとも普通に見られるウニです。

ノシガイ

目立つツートンカラーのノシガイ。

ケブカガニ

そして毛の色がやたら明るいケブカガニ。

顔のアップ

スーパーサイヤ人だ!と喜んでいただけました。その発想は無かった。眼赤いし。

テンジクダイの仲間(テンジクダイ亜科)の幼魚。

ヤワラガニの仲間?非常に小さいカニ

サメハダヤドカリ?が殻の上で大事に育てていたイソギンチャク。この仲間は自分の貝殻にイソギンチャクをつけて、その刺胞の毒で実を守ろうとする習性があります。

転石下で見つけたイレズミハゼの仲間。かわいらしいですね。

誰かが面白いものを見つけるたびに、散ったメンバーを呼び集めて解説したり、問いかけをしたり。

シャコガイ。この色模様は…シラナミでしょうか。

オオイカリナマコ

そしてオオイカリナマコ。ナマコはこうしたバットに水を張って入れると、水中にいるときの「本来の姿」を観察しやすいのですが…1匹のナマコでバットがいっぱいですね。

こちらはジャノメナマコ。

ふだんは小石や枯れ葉をまとって偽装しています。

「ベタベタしているわけでもないのに、どうやってくっついているんですか?」―こんな良い質問も。正直、正確なところはよく分かりません。粘液でくっつけていると言われていますが、はがした後触ってみてもネバネバ、ベタベタなどしていません。

ミノガイの仲間。触手のような突起をすべて貝殻に収めることはできず、このまま貝殻を開閉させてパクパクと泳ぎ回ります。「いっそ貝になりたい」みたいな貝観とは真逆な貝です。

ミナミイワガニ。テトラポッドなどにもついていますが、人影を見るとすばやく隠れてしまいます。運良く捕まりました。

ハサミや眼の下など、よくみるととても美しい色彩をしていますね。

フトユビシャコの仲間。

シャコの仲間は前あし(捕脚)の先がふくらんでいて非常に硬く、その部分を高速で振り上げることで「パンチ」を繰り出します。

この攻撃で貝を割ったり、魚を気絶させて(というか殺して)食べるといわれています。威力はかなりのもので、水槽のガラスが割られた、みたいな話もけっこうよく聞きます。

紫外線ライトで蛍光を発するサンゴ(パリカメノコキクメイシ?)

目の前の生きたサンゴを題材に、サンゴの生態や、サンゴという生き物がサンゴ礁という環境をいかに支えているか、といったお話もしました。

こちらはクロユリハゼの仲間の幼魚。潮溜まりにいっぱいいました。

まんまるなヒトデ、マンジュウヒトデ。

*【観察する際の注意】マンジュウヒトデ、コブヒトデを観察される方にお願いです。これらのヒトデには、わりと高確率でヒトデヤドリエビの仲間がついています。

コブヒトデにつくヒトデヤドリエビの仲間(過去に撮影)

こんなやつです。

マンジュウヒトデやコブヒトデを無造作に持ち上げてしまうと、これらのエビが取り残され、周りの魚に捕食されてしまうこともあります。特定の種類のヒトデにしか共生せず、個体数の多いエビではないので、大事にしたいものです。

なるべくヒトデを水ごとバットなどに入れて観察しましょう。エビも観察できて一石二鳥です。

カエルウオの仲間

こちらは、かなり陸よりの潮溜まりにいたカエルウオの仲間(タマカエルウオ?)。

敵に襲われたり、潮溜まりの水温が熱くなったりすぎると、しっぽ全体を使ってピョンピョンと水のない場所を跳ねて逃げることができます。プラケースなんて、入れたそばから飛び出していきます。

散々楽しんで、そろそろ撤収という時間なのに、生き物を見つけては盛り上がる生徒さんたち。良い眺めだ…と思いつつも、スケジュールもあるのでそうも言ってられません。

クワズイモの葉と

これまでの写真の絵面があまりに修学旅行らしくないので撮らせてもらった1枚。

このあと最後に、バタバタしていて写真はないのですが、サンゴ種苗を生産している漁港に行き、種苗を観察。

種苗の生産方法や移植方法などとともに、「移植だけでは絶対に沖縄のサンゴ礁は回復しない」というお話もさせていただきました。何らかの原因があって減ったものは、原因を取り除かなければ長期的に回復しませんし、サンゴ礁の生態系を回復させるなら数種類のサンゴだけでなく、そこに生きる様々な生物が暮らせる環境を取り戻さなければなりません。比較的手頃にできる移植ばかりが先行している現状は、問題が多いです。

 

と、ここで時間がきたので漁港を後にし、ホテルに帰着。

締めはどんな話にしようか迷いましたが、皆さん既にめちゃくちゃ自然や生き物が好きなので、「今楽しむばかりでなく、自分や子供・孫の世代までが、今後もこういう楽しみ方をできる場所を残していくためにどうすればいいか考えよう」というようなお話をしておしまいにしました。

サンゴ礁にて

最後に、コースに参加してくださった生徒の皆さん、引率の先生、1日ありがとうございました!!

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沖縄のサンゴに何が起こっているの?もっと知りたいサンゴの白化現象!

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2016年、沖縄県内外で話題になったサンゴの白化現象。皆さんはニュースや新聞でその話題をご覧になりましたか?沖縄でダイビングやシュノーケリングを楽しめば、ほぼ必ずと言っていいほど目にするサンゴたち。そんなサンゴに何が起こったのでしょうか。今回は沖縄で起こっているサンゴの白化現象についてご紹介します。

 

2016年の沖縄の海で起こったこと

2016年7月31日、恩納村にて撮影。リーフ内のハマサンゴの仲間が白化していた。

 

2016年は台風の数が少ないイメージがありますが、実際に発生した台風の数は平年並みでした。ただし、台風1号の発生が7月と遅く、沖縄地方に接近した台風の数は平年より1ヶ月遅れて9月がピークとなっていました。

海水温をみてみると、台風の影響を受けた9月を除く6月〜8月、10月〜12月で平年より海水温が高い状態が続いていました。台風には浅いところの温かい海水と深いところの冷たい海水をかき混ぜて浅い場所の海水温を下げる働きがありますが、2016年はそうはいかなかったようです。

その結果、離島を含む沖縄各地でサンゴの白化現象がみられ、キュリオス沖縄がツアーで利用している恩納村のフィールドでも白化したサンゴを多数確認できました。

その後、学会等で情報交換したところ、沖縄本島周辺でのサンゴの白化は局所的なもので、場所によっては健康なサンゴもしっかり残っていることがわかりました。

 

そしてニュースで最も話題になっていたのは石垣島と西表島の間にある石西礁湖と呼ばれる場所。こちらは2016年6月中頃から海水温が30℃を超える期間が約2ヶ月も続いたとのこと。2016年7月から8月にかけて行われた調査では、調査地点35か所において、海底を覆っているサンゴのうち、少しでも白化しているサンゴが占める割合の平均が89.6%となっていました。

 

全ての地点で白化したサンゴ(ピンクと白色)がみられた。引用:石西礁湖のサンゴ白化現象の調査結果について(お知らせ), 図2 各地点の白化調査結果, 環境省 那覇自然環境事務所, 2016年08月31日

 

上記の2016年7月・8月に行われた調査結果を見てみると、場所によってはほとんどのサンゴが「全体が白化している」状態(白色)であったり、逆に半数以上が「白化していない」状態(緑色)だったりと違いはあるものの、全体として一部でも白化したサンゴが大多数を占めているのがわかります。

その後、2回に渡って追跡調査が行われ、白化したサンゴの様子を追っています。その結果、2016年11月・12月の調査結果では調査地点全35地点において平均して70.1%のサンゴが死亡していたことがわかりました。

 

円グラフの黒い部分が「全体が死亡した群体」の割合となる。引用:西表石垣国立公園 石西礁湖のサンゴ白化現象の調査結果について, 図3(3) 調査結果(3回目:11 月下旬~12 月下旬),   環境省 那覇自然環境事務所, 2016年08月31日
健康な状態の石西礁湖のサンゴ群落。2015年4月, 石西礁湖。写真提供:池内絵里 氏(琉球大学大学院 理工学研究科)
多くのサンゴ群体が白化している。2016年9月, 石西礁湖。写真提供:池内絵里 氏(琉球大学大学院 理工学研究科)
広い範囲で白化しているのがわかる。2016年9月, 石西礁湖。写真提供:池内絵里 氏(琉球大学大学院 理工学研究科)
2016年の大白化から一年。死亡したサンゴが形をとどめたまま残っている。2017年9月, 石西礁湖。写真提供:池内絵里 氏(琉球大学大学院 理工学研究科)

 

その他、石垣島や宮古島で起こった2016年サンゴの白化について、観光事業者の皆さんが情報発信をしています。パッと見た感じですごくきれいに見える白化したサンゴの写真の数々。現場の方々の複雑な心境が伝わってきます。

 

 

2017年の沖縄の海で起っていること

2017年8月19日、恩納村にて撮影。リーフ内のシコロサンゴ、ハマサンゴの仲間が白化していた 。

 

2016年も白化が観察された恩納村のポイントでは、2017年8月にリーフ内で多数の白化群体を確認しました。他の地点の情報はまだ把握できていませんが、NOAA(National Ocean and Atmosphere Administration, アメリカの国立海洋大気庁)が出しているサンゴの白化注意報では、9月現在でAlert Level 2となっており、サンゴの死亡が予想されるレベルとなっています。

9月16日の時点でも沖縄近海はAlert Level 2となっている。引用:Daily 5km Satellite Coral Bleaching Heat Stress Monitoring, 2017年9月16日

 

まだ全体の情報がまとまっていないので2017年がどういう状況なのかは不明です。昨年と同様に台風が少なく、深いところにある冷たい海水と表層の温かい海水が撹拌されず、水温が高い状態が続いているようです。

暑かった…7月の沖縄 海水温が過去最高 風弱く日射が多い|沖縄タイムス, 2017年8月2日

 

サンゴの白化はなぜ起こる?

シコロサンゴの仲間。薄い葉のような形をしている。

 

ここでようやく本題です。そもそもサンゴが白化するとき、サンゴに何が起こっているのでしょうか?

サンゴはクラゲやイソギンチャクと同じ刺胞動物の仲間で、炭酸カルシウムでできた白い骨格を作るのが特徴です。そしてもう一つの特徴として、サンゴの体の中には「褐虫藻(かっちゅうそう)」と呼ばれる小さな藻類が暮らしており、サンゴの体内で光合成をしています。

褐虫藻は名前のとおり褐色をしているため、多くのサンゴは茶色っぽい色をしています。この褐虫藻は、光合成をして作った栄養分をサンゴに渡し、サンゴも日光の当たる場所や光合成に必要な成分を褐虫藻に提供しています。このように、サンゴと褐虫藻は共生関係を築いています。

ちなみに褐虫藻がサンゴの体内に共生していることを最初に発見したのは、日本学術振興会が1934年にパラオに開設した「パラオ熱帯生物研究所」で研究を行っていた川口四郎博士です。1944年にその研究成果を報告しています。

日本人なら知っておきたい、日本人研究者のパラオでの活躍 ~パラオ熱帯生物研究所~|Ocean+α

 

 

サンゴの白化現象は、この褐虫藻がサンゴに消化されたり、体の外に吐き出されたりすることでサンゴの体内から失われ、サンゴの白い骨格が透けて白く見える現象です。

サンゴが白化する原因としては、強い光、高水温、低水温、低塩分濃度などのストレスが知られています。これらのストレスが褐虫藻が行う光合成反応に影響することで、活性酸素が発生します。活性酸素は、DNAやタンパク質にダメージを与えるやっかいな物質です。これがサンゴの細胞内で様々な障害を引き起こすため、サンゴと褐虫藻の共生関係が崩れると考えられています。

 

白化したハマサンゴ、シコロサンゴの仲間。

近年では褐虫藻がサンゴの体外に放出されるだけでなく、褐虫藻自体が色素を失って透明になったり、小さく縮小したりするなどの細胞異常を経て死んでしまい、白化してしまうこともわかってきました。

また、高水温下でのバクテリアの感染によりサンゴの白化が進むことも最新の研究で報告されています。傷ついたサンゴはバクテリアに感染しやすく、高水温で白化しやすいという実験結果が示されていました。海水浴客による踏みつけでサンゴが傷つくと白化を促進してしまう可能性も考えられますね。

 

白化したサンゴはどうなるの?

健康なサンゴは褐虫藻がもつ色素により茶色をしている。

 

勘違いされることも多いですが、白化したばかりのサンゴはまだ死んでいません。白化したサンゴに近づいて観察してみると、褐虫藻を失って透明になった小さなイソギンチャクのような形をしたサンゴのポリプがまだ生きているのがわかります。

そのため、例え白化したとしても環境条件が改善されればサンゴ体内で再び褐虫藻が増殖し、色を取り戻すことがあります。軽度な白化であれば毎年夏の時期に見かけるため、白化すること自体は珍しい現象ではありません。

 

白化したばかりのミドリイシ。
まだら状に白化しているハマサンゴの仲間。

 

それでは環境が改善されなかった場合、サンゴはどうなってしまうのでしょうか?

白化後もストレスに晒され続けると、白化したサンゴはそのまま死んでしまいます。体内に共生していた褐虫藻がいなくなり、栄養分を分けてもらえなくなったサンゴは、体内に貯蔵していた脂肪を分解して必要なエネルギーを補います。

そのため、白化して弱ったサンゴは貯蔵している脂肪の量が劇的に減ることが報告されています。そして、環境が改善されるより先に貯蔵した脂質が尽きてしまうと、先の石西礁湖の写真でもお見せしたように死んでしまうのです。死亡したサンゴは藻類に覆われ、下の写真のような姿になってしまいます。

 

少しわかりにくいが、褐色や紫色がかった藻類がサンゴの骨格を覆ってしまっている。
白化して死亡したミドリイシの仲間。

 

こうなってしまうと景観が悪化するだけでなく、生息する生き物にも影響がでます。1998年に起きた大規模なサンゴの白化現象の後、サンゴをエサにするテングカワハギやチョウチョウウオの仲間がいなくなってしまったという報告があります。昨年の大規模白化により、もしかしたら場所によっては生息する生物の種類が減っている可能性もあります。

昨年起こったような広範囲の白化現象で死滅したサンゴが回復するのには、数十年かかると言われていますが、過去の事例をみるとサンゴの種類によっては生息数が回復せずにその場所からいなくなってしまう場合もあるようです。

 

サンゴが白化したらどうすればいい?

まずは知ることから始めてもOK

 

サンゴの白化で変わっていく環境を短期間で劇的に改善することはほぼ不可能です。しかし、小さなことでもできることはあります。例えば、サンゴのストレスの原因を減らすために、農場から赤土が流れないようにしたり、海に流れ出る生活排水を減らしたり、サンゴにやさしい日焼け止めを使ったりと身の回りで始められることもあります。

また、そもそもサンゴがどういう生き物なのか、サンゴ礁がどういった環境なのかを知ることも重要です。図鑑以外にもサンゴやサンゴ礁の生き物を題材にした書籍がいくつかあります。そういった本を読んでみたり、実際にサンゴ礁の海へ足を運んだりするのも良いでしょう。

最近だとサンゴマップという一般市民が観察したサンゴの状態や生息情報を投稿できるWebコンテンツもあります。沖縄旅行の際や休日に海へ遊びに行った際に観察したサンゴの情報を投稿するのもいいかもしれません。これらの投稿情報を研究者がデータとしてサンゴ研究に活用もしていますので、サンゴ研究者を応援することにもつながりますね。

 

沖縄の海で起こっていることを紹介しましたがいかがだったでしょうか。沖縄の夏のピークは過ぎましたが、2017年の夏をサンゴ礁の海がどう乗り切ったのか、その結果がまとまるのはこれからです。2017年のサンゴ礁がどうなるのか、そしてこれから先の未来のサンゴ礁がどうなっていくのか、注目したいと思います。

★生き物を探したり観察したり、生態系や環境について学んだりするツアーを行っております。

よろしければ公式ページ、SNSも覗いていってくださいね!

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世界自然遺産登録を目指す「やんばる」の山に、県内の参加者と登ってきました!

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前回、天候不順のために山に入れなかった県内参加者向けのやんばるツアー。

今回は天候にめぐまれ、存分に山を堪能することが出来ました!

昼からのツアーなのでまずは大宜味の道の駅で腹ごしらえ。

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時期限定かもしれませんが、ここ大宜味の道の駅の食堂では水の代わりにシークワーサー水がピッチャーで飲み放題です(写真右上)。「◯◯の天然水」とか「◯ろはす」とかより濃くてしかも甘くなく、なかなか美味しかったです。

さすが、柑橘の里おおぎみ!

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山に登る峠道は「ススキロード」と化していました。7-8分ほどの峠道を登って登山口の駐車場へ。

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今回の参加者は16名あまりと、やや大所帯でございます。

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登山道の入り口に咲いていたサキシマフヨウ(アオイ科)。もうそろそろ花も終わりかけで、代わりに綿毛をつけた種がいっぱい詰まった果実も見られました。

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いざ入山。

登山道に入ると、湿度が一気に高くなるのが分かります。

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ツワブキ(キク科)の黄色い花がたくんさん咲いていました。沖縄ではこの花が咲くようになると、いよいよ本格的に冬の到来です。

ちなみにツワブキの花はキク科の花らしい清々しい香りがします。嗅いだことがない方はぜひ。

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こちらも冬の花、アリモリソウ(キツネノマゴ科)。

うつむき加減に咲きます。一見真っ白な花ですが、花の中をのぞきこむと赤紫色の模様が見えます。

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種類の分からないキノコ。

枯れた樹、弱った樹の材の中には、菌類の菌糸が入り込みはびこって分解を加速させていきます。倒木はキノコを含む菌類のパラダイスになり、そららを食べにカタツムリの仲間なども集まってきます。

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アオミオカタニシ。きれいな緑色をしていますがこれは実(肉)の部分の色で、殻は無色の半透明です。

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途中の広場で休憩。

今回のツアーは、沖縄県が「奄美琉球」の世界自然遺産を目指していることを県内のみなさまに普及啓発することが目的でもあるので、そのへんのお話もしました。

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さらに石段の登山道を登っていきます。

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お子さんが見つけて大喜びしたナナホシキンカメムシ。虫がやや少なくなったこの季節でも安定して見られるいい昆虫です。匂いはアレですが(キュウリの青臭い匂いを濃縮して強烈にしたような感じです)。

葉の裏に集団で止まっているところも見かけました。

 

バージョン 2

ようやく尾根に到着。ちょっとガスってましたが、やんばるの山々と西海岸の海が一望できます。

頂上へは、ここからなだらかな尾根道を歩いてすぐです。

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アオノクマタケラン(ショウガ科)の実。ドキッとするほど赤いです。

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そして尾根沿いの道に咲いていたのがこのオキナワテイショウソウ(オキナワハグマ)(キク科)。

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花弁の先がくるんと同じ方向に捻れた、独特の花です。

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サイズはこんなもん。

尾根道を歩いてすぐ、山頂に到着します。しますが、ここの山頂はあんまり開けてないので、さきほどの尾根道に着いた時点ですでに登頂が終わったような感じです。

そして、参加者の方が山頂で見つけてくれた面白い植物がこちら。

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ナンバンギセル(ハマウツボ科)という寄生植物です。

イネ科の植物の根に寄生し、地上へは花茎(かけい)と花のみが出てくる、というとても変わった植物。葉緑体はないため、生きているときも茎は枯れたような色をしています。

その他、下山途中でシリケンイモリや、

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オキナワキノボリトカゲなど。

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気温的にも植物の装い的にもすっかり冬ですが、冬でもそれなりに温暖な沖縄ではこの季節も様々な生き物が活動を続けていました。

車道に出てしばらく行ったところでオキナワスズメウリ(ウリ科)が大量に実をつけているのを見つけました。

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可愛らしい実ですが、すさまじい繁殖力ではびこるので庭などに植える際は要注意です。

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最後に、オオバギの葉が切られくるんと丸まっているのを発見。

開いてみると、ハネナシコロギスの巣でした。

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こちらは別の日、夜間に撮影

夜になると葉の上などで獲物を待っていますが、昼間はこんな感じの巣をつくってその中に隠れています。

そんな訳で、とても充実した山歩きでした。

なお、今回のツアーと同内容のツアーは、弊社のこちらのガイドツアーにてご参加いただけます。

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やんばる山トレッキング !植物・昆虫をじっくり観察しながら、季節の山を歩く

所要時間:約3時間
<混合プラン> ¥6,000/1名様
<グループ貸し切りプラン> 1名様¥7,000(4名でお申し込み)〜¥9, 000(2名で〃)

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雨だったのでウフギー自然館へ。

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昨日は早朝に雨音で目が覚めてちょっとため息。というのも午後からやんばるでツアーの予定だったのです。

今回はとある事業の中のイベントということもあり、雨天時の代替プランへ切り替え。朝からドタバタと各所へ調整しながら向かった先は国頭村にある「やんばる野生生物保護センター ウフギー自然館」!

 

午前のうちに施設内の下見と案内の流れを確認し、ウフギー自然館のスタッフの方にごあいさつと簡単な打ち合わせ。そこから集合場所のおおぎみ道の駅へ。雨は止む気配なし。ですよねぇ。

時間になったので参加者と移動してウフギー自然館へ。本当は山の中に入るはずだったので、ちょっとしょんぼり気味な小学生もいましたが、中に入ったら時間いっぱい楽しんでもらえました。

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カウンターにあったヒトデや魚。ヒトデは作ってみたいですね。ブース展示などの際の飾りに良さそう。他にもキジムナーの歯ブラシ(!?)なんかもありましたよ。

 

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ホタルの提灯。テリハボクの実に穴を開ける&フタ部分をカットしてひもを通す。中に捕まえてきたホタルをいれて提灯にするそうです。割らずに穴を開けるのが大変そうだけど、来年はこれ作ってホタルツアーかな?

 

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400円で購入。協力金として保全活動や教育活動に活用されるとのこと。やんばるの生きものがイラストと文章付きで紹介されています。鳥類の情報が豊富そうだったのとイラストが可愛らしかったので購入。

 

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Instagramのレイアウトで編集してます。やんばるの四季。

お気に入りの展示はこれかな。季節の変化を自分で感じられるようになると心豊かに生きられるのではないかと思っております。館内には他にも音声や映像を使ったすばらしい展示が多数あるのですが、どたばたで写真を撮っておらず・・・。

展示の中にはロードキルや外来種問題を取り扱ったものもあり、普段のツアーではこういう問題についてはちゃんと話せてなかったなぁとちょっと反省。うまくお伝えできるように何か案を考えたいと思います。

館内では20分ほどのシアターでやんばるの自然を学べたりもします。子ども向けのクイズシートなんかもあるので楽しく学べること間違いなし。沖縄中南部にお住まいの方や、沖縄北部へ遊びに来た観光客の皆さまもぜひやんばる野生生物保護センター ウフギー自然館でやんばるの自然を学んでみてはいかがでしょうか。

<キュリオス沖縄の森ツアーもよろしくです!>

 

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第9回モニターツアー実施しました!

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11月20日に、キュリオス沖縄で毎月行ってきたモニターツアーの第9回を実施しましたので報告します。

朝9:30、那覇市末吉公園の駐車場に集合。

当日は時々パラパラと雨が降る天候で、派手に濡れるようなことはなかったのですが、代わりにかなり蒸し暑く「冬どこ行った?」という感じの気候。

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今回はお子様も2名参加です。大変ありがたいことに、業界の方にも来ていただけました。

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駐車場のモモタマナの樹から定期的に実が落下して僕らや参加者の方の車に「ガン」「ゴン」と当たります。よく見るとオオコウモリの歯型がありますね。

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それではGO!まずは駐車場入口の脇から高台に登っていきます。

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ハマビワの花が咲いてました。これは雄株ですね。

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参加者を差し置いてまずは観察です。

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皆さん大変熱心でした。

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さて、ずいずい登ってきます。

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ナナホシキンカメムシ発見。葉の裏にはもっとびっしり集合してました。

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興味津津ですが、カメムシ臭い…と触ろうとしません。

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…あらら、寄生蜂にやられたんでしょうね。クロツバメというガの幼虫。卵を産み付けられて、体の中で孵化した幼虫が成長して体を食い破って出て、蛹になって飛び去った後と思われます。

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…というお話をして参加者一同ドン引きの瞬間。

ちなみにクロツバメの幼虫は有毒なジャコウアゲハの幼虫に擬態して鳥の目を欺いていると考えられますが、もちろん寄生蜂にそんなの通用しません。

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クロツバメ、成虫もいました。前ばねは烏の濡れ羽色、後ばねはさらに青の金属光沢が乗り、大変に美しいガです。クロツバメをはじめとしたマダラガの仲間は、ガにもかかわらず昼間活動します。

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クサギ(アマクサギ)の花。

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この写真は別の日に撮影

雄しべ、雌しべともにとても長いのが特徴。

クサギの花は雄しべが先に成熟し、その後雄しべがしおれると雌しべが成熟する…という仕組みで自家受粉を避けています。

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実もついてました。

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こちらはタカナタマメの花とマメ。濃くも上品なピンク色です。

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「この花、マメ科の花として何かおかしくないですか?」との僕の問いかけに、「上下が逆さまなんじゃないでしょうか」

ドンピシャです。いやぁSさん、恐れ入りました。

タカナタマメやハマナタマメは花柄が反り返り、結果として普通のマメ科の花と上下逆に付きます。

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そして子どもたちは生き物を見つけるのが天才的に速いです。

こちらはヘリグロヒメトカゲ。

落ち葉の堆積しているところに住んでいて、アリやシロアリを食べて暮らしています。手足がたいへん短いのが特徴。

 

その後、高台から降りてちょっと住宅街を進み、民家の脇にある道から末吉宮を目指します。

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ナガマルコガネグモ。網にあるX字(半分しかなくてV字になってますが)の模様は「隠れ帯」と呼ばれていてクモが網を張った後に糸で編みつける模様です。

この隠れ帯の機能には諸説あり、外敵から身を隠すためだとか、クモが食べられないような大型の生き物がむやみに網に引っかかって壊さないようにとか、紫外線を反射して餌となる昆虫を引き寄せるとか言われていますがよく分かっていません。

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他にもシークワーサーの葉を日に透かして油点を見たり…

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迷蝶ルリウラナミシジミの後ばねを見つけてその美しさにみんなで関心したりしながら進みます。

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おっ、これはクサカゲロウの仲間の幼虫。

クサカゲロウは幼虫の時期は肉食で、捕食した虫の残骸とか糞とかゴミとかを背負ってカムフラージュしながら歩いています。

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おっ、こいつは…

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指下板をチェック。明かりに集まってきて鳴くヤモリとは別の「ミナミヤモリ」という種類です。

ヤモリは、吸盤で壁などにくっついているワケではありません。この指下板にミクロの毛が密生していて、なんとその毛と壁の間に生じる分子間力(ファンデルワールス力)によって貼り付いているのです。

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末吉宮も近くなってきた所で、コウシュウウヤク(イソヤマアオキ)という植物の上に…

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じゃん!

アケビコノハの幼虫を発見。

どこがどうなっているか分かりにくいですが、茎にぶら下がった状態で右側が頭を中にして「くるん」と丸まっていて、左が足(尾脚)をグッと持ち上げている状態です。

平気なフリをしてましたが、僕の「イモムシ嫌いセンサー」のメーターを振り切る存在。これは参加者の皆さんにも衝撃的だったみたいですね。

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さて、ここの景観を見せたかったのです。

大きなガジュマルがもともと付いていた岩から剥がれて地面に横たわっています(もちろん生きてます)。

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参加者の皆さんからも「那覇じゃない…」「那覇じゃないよね」と口々につぶやいていました。

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沖縄南部の典型的な植生が街中に残る、とても貴重な場所です。

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最後に末吉宮の石段のところまで登って、

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「ああ、やっぱり那覇だった」って言って、

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時間も押していたので急いで戻りました。

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かなり時間をオーバーしてしまい、参加者の皆様にはご迷惑をかけました。最初の高台のポイントも悪くはないですが、蛇足だったかもしれません。

お子様がいろいろな物に興味を持ってくれたのは本当に良かったです。

というわけで、参加して下さった皆様、ありがとうございました&大変お疲れ様でした!

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大宜味村の山に、ツアーの下見に行って来ました!(世界自然遺産普及啓発関連事業)

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本日はツアーの下見に、秋の大宜味村の山へと出かけて参りました!

このツアーは奄美・琉球の世界自然遺産登録に関する沖縄県内での普及・啓発を目的としたもので、今年11・12月に本番を迎えます。本日はその下見。参加していただいた関係者の皆様、お疲れ様でした&ありがとうございました!

まずは大宜味の道の駅に集合。

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天候はまずまずで、途中少し雨がぱらつく場面もありました。

で、ここから車で山の登山口へ移動。

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登山口のすぐ横ではサキシマフヨウが見頃。

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そんなわけで、入山します!

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雨後だったので森はしっとりしていました。

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そして雨後だったのでカタツムリ類がたくさん出ておりました。こちらは触角の付け根のつぶらな瞳がかわいいアオミオカタニシ(狭義のカタツムリ類ではない)。

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厚手の葉が対生するボチョウジ。

今回、やんばるの自然に親しんでもらう手段として、いつ行っても確実に見られる植物に少しウェイトを置いてその生態や生存戦略、それに味や匂いなどを含めた人間との関わり、などについて紹介し、「顔なじみ」になってもらうという作戦を立てています。

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リュウキュウマメヅタ。こう見えてシダの仲間です。

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リュウキュウヌスビトハギの種子。種子の表面にマジックテープの引っ掛ける側みたいな突起が多数生えていて、こんな風に布にひっつきます。動物などの毛について運ばれるための仕組みです。

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葉はこんな感じの三出葉です。

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今回は花も咲いていました。うすいピンクの蝶型花です(モノによってもうちょっと濃いのもありました)。リュウキュウヌスビトハギはリュウキュウウラボシシジミという大変愛らしいシジミチョウの食草でもあります。

リュウキュウウラボシシジミはこんな蝶。

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リュウキュウウラボシシジミ(別の日、今年6月に撮影)

こんな事を言っては何ですが、流石に皆さん、ものすごく関心が高かったです。

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途中、こんなものも。

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菌類に覆われたリュウキュウアブラゼミの死骸。多分、生きているうちに菌糸に蝕まれ、木の幹についたまま息絶えたのでしょうね。なんとなく、「ナウシカ」の一場面を想起させます。

このコースは途中、けっこうな急坂もあります。

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この急坂の先は見晴らしのいい尾根です。

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今日はちょっとガスってましたが、奥間のビーチの辺りが綺麗に見えています。

でもこれ頂上ではないんですよね。尾根伝いに少し歩いて到着した頂上の写真はこちら。

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実は、頂上は草ぼうぼうであまり見晴らしはききません。いちおう三角点を確認して下山。

下山のルートはあっという間で、すぐに車道に出て来ます。

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道沿いに咲いていたアマクサギの花。花はかなりフローラルな良い香りがします。

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その葉。葉はかなり強烈に青臭い匂いがしましたが、若葉は食用にされいたそうです(本日参加者の方から聞いて知りました)。

というわけで駐車場に戻って無事終了。

奄美・琉球の自然遺産登録推進に関しては、歓迎する声がある一方、多くの人が大挙してやんばるに押し寄せることに危機感を持っている方も多くいます。それは正直、キュリオス沖縄の面々も同じです。

(自然遺産登録が実現したあかつきには)自然遺産登録された場所としての物珍しさだけではなく、そこに生きる動植物やそれらが織りなす生態系、人々の暮らしとの関わりなどについて知り、自然や生物の持つ美しさや不思議さへの感動を得たい、という方に訪れて欲しい。キュリオス沖縄ではそのような方々の想いの受け皿となるツアーを今後も作っていきたいなと思っております。

参加された皆様、弊社仲栄真も、お疲れ様でした!

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第8回モニターツアーを具志頭遊歩道で開催しました!

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今日は朝から第8回モニタツアー「博士と行く、ホロホローの森 ~散歩道が10倍楽しくなる植物と地形のフシギ~」でした。平日開催ということで参加者が集まるか心配でしたが、5日前には受付けを締切るほどお問い合せをいただきました。感謝!

そしていよいよ当日。

植物観察の手引き
前日にガサゴソと準備。今回は植物観察の際に役立つ情報をまとめた冊子を用意しました。

 

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5分遅れでスタート!まずは安全管理について情報共有。

 

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集合場所のムラサキシキブ、ハマイヌビワを使って葉のつき方について解説。さっそく観察の手引を開いてもらいました。

 

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ハラビロカマキリの若個体で盛り上がりつつ、さっそく遊歩道へGO!

 

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遊歩道へ入ってすぐのところで360°写真。

遊歩道に入ってすぐはこんな感じ。ハマイヌビワ、ガジュマルが頭上を覆い、ノアサガオ、アマチャヅル、ミツバビンボウカズラなどのつる植物からなるマント群落が隙間を埋めてくれます。マント群落は陽射しを遮り、森の中が乾燥するのを防いでくれます。

 

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ショウベンノキで三出複葉の解説。3枚で1セットの葉っぱ。

 

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「ああ、これのことか」とここでも観察の手引が活躍。いい感じ。

 

 

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ヤブニッケイ。「ホロホローの森」と呼ばれるこの森。ヤブニッケイのことを地元具志頭ではホロホローと呼ぶそうです。

 

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葉をもんで香りを嗅いでもらいました。

 

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開けた場所で休憩がてらにガジュマル、アコウ、ハマイヌビワの見分け方について解説。

 

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高いところから気根がたくさん垂れ下がっていました。

 

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「あ!葉の裏に何かいる!?」

 

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ナナホシキンカメムシでした。匂いも嗅がせていただきました。。

 

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葉先がくるくるっとしたトウヅルモドキ。他の植物に葉先をからめてよじ登り、光が当たる場所を確保します。

 

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トウヅルモドキの解説をした直後に「あ!確かに上の方にもいる!」と参加者自身が発見することも。

 

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ぱっと見でそっくりなアマチャヅルとヤブガラシの葉を見比べて違いを探してみる。

 

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左がアマチャヅル、右がヤブガラシ。

葉の形はヤブガラシのほうがギザギザ(鋸歯といいます)が明瞭。葉のつけ根をみるとアマチャヅルは一カ所から生えている感じだけどヤブガラシは少し葉柄が長くなっている。あとはヤブガラシのほうは少し葉柄に赤味がかっていたり。皆さんよく気づきます。

 

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案内の途中、熱心にメモを取る方が多かったです。質問も多くでて、参加者の好奇心の高さがうかがえました。

 

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出口のところではアマクサギの花が咲いていました。

 

じっくり2時間ちょいかけて無事に出口へ到着。皆さんお疲れ様でした!

 

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ゆっくり歩いてスタート地点へ!

 

まとめをして、アンケートを記入してもらい、解散。終了後も質問がいくつかでて盛り上がりました。やんばるでは見れない沖縄南部特有の自然を楽しんでいただけたようです。参加者の皆さまからもいろいろとお話を聴くことができて、私たちにとっても学びのある時間となりました。今回はご参加いただきありがとうございました。次回もぜひ!

こちらのコースは近々正規のツアーコースに追加しますのでお楽しみに!

 

<お知らせ>

今回のモニターツアーにご同行いただいた八重瀬町役場 観光振興課さまよりお知らせがありました。10月30日に今回と同じ場所(具志頭遊歩道)で「まち歩き」イベントを実施するとのこと。地元の方々がガイドを行うということで、私たちでは話せない地元地域密着の歴史・文化・自然のお話が聞けるかと思います。よろしければこちらもぜひご参加ください。

 

<お知らせ2>

今回のモニターツアーで使用した具志頭遊歩道を活用したツアーコースを正式にラインナップに追加しました!ツアーのお申込みを受付けておりますので沖縄へご旅行の際はぜひご利用ください。もう少し涼しくなってくるとより快適に散策できるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

http://curiousokinawa.com/nanbuforest.html

 

(仲栄真)

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まだまだ夏の干潟ツアー

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昨日は午後から恩納村で干潟ツアー。

大阪からお越しのご家族と県内から参加のご夫婦の二組をご案内。9月に入り、朝晩は涼しい風が吹くようになった沖縄ですが、日中はまだまだ夏。熱中症に気をつけながらあっという間の2時間をお過ごしいただきました。

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iPhoneアプリで360°写真を撮影。広大な海草藻場が広がるフィールドです。

この日はエントリーしてすぐの岩場でシオマネキの仲間やイソアワモチ、ヒザラガイなどなど、子どもたちが歩けば何かを見つけてじっくり観察モードでスタート。

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ルリマダラシオマネキ

 

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ソデカラッパ発見!ハサミ脚が片方なかった・・・。

 

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砂浜で小さなアオヒトデを発見。

海草藻場にたどり着いたら今度はカニ、ナマコがフィーバー。岩礁帯ではサンゴの蛍光を観察しました。飽きるほど生き物を観察して今回もツアーを無事に終えました。。

夏の暑さが続く沖縄ですが、水分補給を忘れずにまだまだ夏を楽しみたいですね!

 

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夏休みの終わりに、沖縄の干潟へ出かけて子どもたちと海の生物探しに興じる!!

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沖縄県地域環境センター(沖縄こどもの国チルドレンズセンター1F内)の主催で、先日8月20日、恩納村の干潟にて「海の生き物観察会」が開催されました。

この観察会に弊社のメンバーも講師として参加して来たので、その模様をお伝えします。

 

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講師陣はこちら。

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「しかたに自然案内」の鹿谷麻夕さん

「しかたに自然案内」を運営し、沖縄における海洋・生物教育啓蒙活動を行ってらっしゃいます。

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そしてキュリオス沖縄の仲栄真礁君

そして我らがキュリオス沖縄の仲栄真君。

私宮崎は、もっぱら写真を撮るというポジションで参加しました。

また、沖縄こどもの国のスタッフさま方(集合写真撮り忘れましたorz)がイベントのお膳立てから会場設営、当日の安全管理まで担当してくださいました。

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まずは、事前学習が行われる恩納村ふれあい学習センターの教室にて打ち合わせ。

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集合時間の13:30になり、続々と参加者が集まってきます。この日の参加者は全体で30名ほど。

ここで一通り危険生物・熱中症への注意喚起、観察の際のポイントなどについてレクチャーが行われました。

干潟の生物観察に行く際の注意点をごく簡単に挙げると、

  • 熱中症対策をしっかり(帽子、首にタオル、水分をこまめに補給)
  • サンダル厳禁(後述します)
  • 危険生物に関する知識をある程度身につけていく
  • サンゴ、そしてなるべくなら海草も踏まないように歩く
  • ひっくり返した石は必ずもとにもどす

こんなところでしょうか。

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レクチャーが終わり、いよいよセンターの裏の干潟海岸へ!…観察会にクバ笠って、渋い。

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皆さん、足元はバッチリでした。

海というとビーサンや草履で行く人が多いですが、こと足元が岩場だったり、転石がごろごろしてたりという海岸では岩で足を切ったり、生き物の棘に刺されたりというリスクがあり大変危険です。

こういう場所での生物観察に一番いいのはフェルト底のマリンブーツですが、底がしっかりした運動靴でも十分代用できます。詳しくはこちらをご覧下さい。

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さて、先陣を切って生き物を探してくれていた子が探してくれたこの生き物、なんだか分かります??

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この写真と次の写真は別の日に撮影

裏返してみたら分かりやすいでしょうか。これ、イソアワモチという「殻のない貝類」です。

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こんな感じで岩にひっついています。

殻がない、というだけでもヘンな奴ですが、実はこの貝、肺で直接空気を呼吸します(多くの海産の貝類はエラ呼吸のみ)。さらに、呼吸をするための穴が肛門の後ろに空いています。

海辺で見かけたら、是非おしりの辺りを覗き込んでみて下さい。

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こちらはナマコの仲間のオオイカリナマコ。

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こちらも別の日に撮った写真

たいへん長くなるナマコで(2mぐらい)、サンゴ礁の浅い砂地やアマモ場に多く生息しています。

体はぶよんぶよん(大部分が水)で、おまけに触ると手にひっつきます。ぱっと見、粘着しているようにも見えますが、実はこれは体の表面にあるカルシウムの棘(骨片)が引っかかっているのです。この骨片が錨(いかり)の形をしているので「イカリナマコ」という名がついた、といわれています。

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ちょっと遠目で分かりづらいですが、こちらはソデカラッパというカニ。カラッパが見つかったら面白いね〜なんて話をしながら歩いていたら、なんと一人の男の子が見つけてくれました!

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これも別の日に撮った写真

?これのどこがカニなんだ?という形をしています。DSC04286

ひっくり返すと分かりやすいでしょうか。なんというか甲羅の左右が張りだして脚を覆うアーマー(鎧)みたいになってます。そして左右のハサミはその甲羅と完璧につながるようなデザイン。

上の写真でカニの右(カニから見て右)のハサミに奇妙な白い突起があるのが分かるでしょうか。またの機会に詳説しますが、実はカラッパ類はこの突起を支点にして巻き貝類を「缶切り」の原理でバリバリと割って食べるのです。

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ちなみにこちらは鹿谷さんのグループ。

事前の班分けで「生き物を探してガンガン行く組(弊社仲栄真)」と「のんびり行く組(鹿谷さん)」とに分かれたのですが、結局どちらのグループも生き物を目にすると「もっと探そう!」とガンガン前に進んでしまう感じでした。

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岩をどけて生き物を探す。ひっくり返した岩は、そーっと元通りに!

しかし、子供たちの生き物を見つける速度の素早いこと。弊社仲栄真、そして私も普段から海の生き物を探し慣れているはずなのですが、この日解説した生き物の半分くらいは子どもたちが先に見つけてしまいました。

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こちらはカワテブクロというヒトデの仲間。腕が冗談のように太いですね。

かなり暑い日で、2時間ほどで海岸での生き物観察は終了。参加した子どもたちには大変楽しんでくれたようで、「来年も来たい人〜?」との問いかけに全員挙手してくれました。

鹿谷さん、仲栄真君、お疲れ様です。企画を立てて色々お膳立てしてくださった子供の国の皆様、ありがとうございました!

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おまけ。ホワイトボードに海の生き物を描いてウェルカムボード的なものにしよう!ということで描き始めたものの、いつのまにか「うろ覚えイラスト大会」になってしまいました。

(宮崎)

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