大宜味村の山に、ツアーの下見に行って来ました!(世界自然遺産普及啓発関連事業)

本日はツアーの下見に、秋の大宜味村の山へと出かけて参りました!

このツアーは奄美・琉球の世界自然遺産登録に関する沖縄県内での普及・啓発を目的としたもので、今年11・12月に本番を迎えます。本日はその下見。参加していただいた関係者の皆様、お疲れ様でした&ありがとうございました!

まずは大宜味の道の駅に集合。

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天候はまずまずで、途中少し雨がぱらつく場面もありました。

で、ここから車で山の登山口へ移動。

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登山口のすぐ横ではサキシマフヨウが見頃。

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そんなわけで、入山します!

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雨後だったので森はしっとりしていました。

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そして雨後だったのでカタツムリ類がたくさん出ておりました。こちらは触角の付け根のつぶらな瞳がかわいいアオミオカタニシ(狭義のカタツムリ類ではない)。

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厚手の葉が対生するボチョウジ。

今回、やんばるの自然に親しんでもらう手段として、いつ行っても確実に見られる植物に少しウェイトを置いてその生態や生存戦略、それに味や匂いなどを含めた人間との関わり、などについて紹介し、「顔なじみ」になってもらうという作戦を立てています。

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リュウキュウマメヅタ。こう見えてシダの仲間です。

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リュウキュウヌスビトハギの種子。種子の表面にマジックテープの引っ掛ける側みたいな突起が多数生えていて、こんな風に布にひっつきます。動物などの毛について運ばれるための仕組みです。

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葉はこんな感じの三出葉です。

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今回は花も咲いていました。うすいピンクの蝶型花です(モノによってもうちょっと濃いのもありました)。リュウキュウヌスビトハギはリュウキュウウラボシシジミという大変愛らしいシジミチョウの食草でもあります。

リュウキュウウラボシシジミはこんな蝶。

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リュウキュウウラボシシジミ(別の日、今年6月に撮影)

こんな事を言っては何ですが、流石に皆さん、ものすごく関心が高かったです。

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途中、こんなものも。

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菌類に覆われたリュウキュウアブラゼミの死骸。多分、生きているうちに菌糸に蝕まれ、木の幹についたまま息絶えたのでしょうね。なんとなく、「ナウシカ」の一場面を想起させます。

このコースは途中、けっこうな急坂もあります。

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この急坂の先は見晴らしのいい尾根です。

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今日はちょっとガスってましたが、奥間のビーチの辺りが綺麗に見えています。

でもこれ頂上ではないんですよね。尾根伝いに少し歩いて到着した頂上の写真はこちら。

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実は、頂上は草ぼうぼうであまり見晴らしはききません。いちおう三角点を確認して下山。

下山のルートはあっという間で、すぐに車道に出て来ます。

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道沿いに咲いていたアマクサギの花。花はかなりフローラルな良い香りがします。

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その葉。葉はかなり強烈に青臭い匂いがしましたが、若葉は食用にされいたそうです(本日参加者の方から聞いて知りました)。

というわけで駐車場に戻って無事終了。

奄美・琉球の自然遺産登録推進に関しては、歓迎する声がある一方、多くの人が大挙してやんばるに押し寄せることに危機感を持っている方も多くいます。それは正直、キュリオス沖縄の面々も同じです。

(自然遺産登録が実現したあかつきには)自然遺産登録された場所としての物珍しさだけではなく、そこに生きる動植物やそれらが織りなす生態系、人々の暮らしとの関わりなどについて知り、自然や生物の持つ美しさや不思議さへの感動を得たい、という方に訪れて欲しい。キュリオス沖縄ではそのような方々の想いの受け皿となるツアーを今後も作っていきたいなと思っております。

参加された皆様、弊社仲栄真も、お疲れ様でした!

日本環境会議で発表してきました!

昨日21日に沖縄国際大学で開かれた日本環境会議にてキュリオス沖縄の取り組みについて発表してきました。今回は学生時代にお世話になったS先生のご紹介で発表の機会をいただきました。

 

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上等な3号館!

 

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会場はコチラ。

 

「環境」と名がついていますが、発表の内容は平和や人権、基地問題などなど、幅広い分野の発表が集まっていました。いくつかの分科会がある中で、今回は若者の活動を主に集めた第6分科会 第2部「若者の実践」というテーマのもとで、今年立ち上げたばかりの私たちキュリオス沖縄について立ち上げの経緯やこれまでの活動、これからの活動について報告させていただきました。

 

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この日は天気よく、建物からの景色もよかったです。

 

ちょっと早口になってしまいましたが時間ぴったりで発表終了。教育活動・研究活動・経済活動の場として沖縄の自然環境を利用することで、自然環境に新たな価値を付加して価値を高めるという、キュリオスの活動指針のひとつをご紹介しました。研究する立場から教育・観光への分野に参入したことはちょっと驚きだったようです。

 

同じ分科会の発表で興味深かったのは琉球王国時代の政治家・蔡温(さいおん)が行っていた土地管理施策のお話。風水の考え方で気の流れが漏れ出てしまうのを防ぐ「抱護」にもとづいて集落や畑、島の周囲に植林する政策を進めたそうです。風水的な意味もあったけど、これが土壌の流出を防いで田畑の質を保ったのではないか、とのこと。

また、当時の自然資源について利用する権利と共に管理する義務を追わせる制度を確立したとか。琉球王国時代にも実際に制度として資源管理が行われていたのは知らなかったのでとても興味深かったです。

 

交流会では中国・韓国から来ていた保全団体の方々とも交流。中国の都市部の人は身近な水や空気についてはとても強い関心を持つ一方で生活圏から離れた自然に対しては関心が低く、そこが課題なのだそうです。海外の人々の自然に対する意識も気になるところですね。

 

そんな感じで無事に終了!少しドタバタと発表をつくりましたが、時間内に収まって良かったです。今後も自分たちの活動について発信する機会を作っていこうと思います。

 

 

(仲栄真)

県立博物館での講演「沖縄の土を知って、これからの環境を考える」を聴いて来ました!

少し時間が空いてしまいましたが、10月15日に県立博物館で催された土壌学者、金城和俊先生による講演会を聴きに行ってきましたのでその様子をレポートします。

まず驚いたのが、金城先生が持ち込んだ土壌の標本。地表から地下1.5mくらいまでの地層がスライスされて、薄い布に貼り付けられています。

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金城先生にどうやって作るのかお聞きしましたが、まず土壌を掘り進めて断面をつくり、そこに樹脂を浸透させて布を貼り付け、固化させてから剥がす、とのことです。何日もかかるそうで、雨が降ったりしたら一筋縄では行かなそうです。

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休み時間に近寄って見学できました。触ってもOKとのこと!

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土壌学とは?

土壌学というのは「地質学」とも微妙に違っていて、土壌を構成する成分や鉱物などの分析や比較に加え、土壌にかかわる生物の働きについての研究というニュアンスも加味されているそうです。

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気候帯によって分布する土壌は異なっており、沖縄を含む亜熱帯地域は「赤黄色土」と呼ばれる土壌が大きな割合を占めるそうです。

ちなみに全世界の土壌を陸地のエリアに均一な厚さになるように均すと、なんと平均18cmの深さしかないそうです。作物となる植物が健全に育つための土壌の深さが最低30cmと言われているので、いかに土壌が貴重であるか分かります。

土壌学ってどんなことをするの?

これは僕も興味ありました。

土壌はふつうは地表の浅いところにしかないので、重機を使って掘るようなことは稀だそうです。で、スコップを使っておよそ0.7t(!)の土を掘り出して人が中でしゃがめる穴を堀り、その穴の断面から土壌の様子を観察するそうです。沖縄の土は大変硬く、この大きさの穴を掘るのにがんばっても40-60分かかるとのこと。体力勝負な研究ですね。

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沖縄の土壌について

沖縄には、主に下記のような土壌が分布しているそうです。

  • 国頭マージ (赤黄色土)

一番多い 非常に年代的には古い→有機物が少なく、強い酸性 バラバラになりやすい。千枚岩、粘板岩、砂岩などが母材

  • 島尻マージ (暗赤色土)

海岸沿いに分布透水性が高い(根菜類の栽培に適する 人参の栽培に向いた津堅島もこれ)。母材としては国頭マージとほぼ同じ。水はけが良すぎるのでジャーガルをブレンドして土質改良をしている。風成塵(黄砂)が過去には(7万〜1万)大量に飛んできたと考えられ、これが島尻マージの生成のもとになったのでは?と考えられている

  • ジャーガル(灰色)

中南部、浜比嘉くらいまで。泥岩(クチャ)が母材。水はけがめちゃくちゃ悪い(スメクタイトを含む)※北部の灰色の土は酸性硫酸塩土壌といって性質が異なり、農作物には全く使えない

  • 沖積土壌

土壌の世界にも、開発などの影響によりほとんど見られなくなった土壌があり、「日本ペドロジー学会」により「レッドデータ土壌」なるものが制定されているそうです。沖縄本島では、森林が残っている場所のジャーガル地帯(県南部)が非常に貴重で、「絶滅危惧土壌」に指定されています。

赤土流出について

今回、このテーマを聞きたくて講演を聴きにきた参加者も多いのではないかと思います。

沖縄本島の赤土、国頭マージは、露出した(草などに覆われていない)状態、とくに露出して斜面になっている場所に雨が降った場合、土の団粒構造が崩れて流れてしまうということです。土の中に含まれている有機物は「ツナギ」の役割を果たすのですが、国頭マージには有機物が非常に少ないため、容易に粒がバラバラになって「濁流」となってしまうそうです。

赤土流出の原因とその対策についてはよく研究され十分なノウハウがあるそうです。具体的には土壌表面が裸地にならないよう植物を植える、勾配を修正する、など。これらの対策は現在では大きな工事の場合よく行われており、沖縄本島で現在流出の主因になっているのは農業用地からの流出である、ということでした。しかしその対策やコストを農家に丸投げするのではなく、行政の力で補助をしながら対策をすすめることが重要だということを非常に強調しておられました。

土壌と人の関わり

今回金城先生が結びで話されたのは、土壌と人類文明のお話。人類の四代文明はいずれも大河のほとり、作物を育てるための土壌が非常に栄養豊かな地域で始まりましたが、文明の荒廃や滅亡にも作物を育てる土壌の劣化が非常に大きく関わっていたのではないか、というお話でした。

土壌の汚染や流出は、なにも沖縄だけの問題ではありません。現在、土壌生成量は1t/ha/yrで、その5-30倍の土壌が侵食により失われて行っているそうです。平均で18cmの厚さしかない貴重な土壌が、です。

講演を聴いて

普段、フィールドで生き物を観察したり撮影したりするため土の上に這いつくばることはあっても、土壌というものに強い関心を寄せたことはあまりありませんでしたが、今回の講演を聴いて少し道端にある土についても「どこら来たのか…?」など今興味が湧くようにあんりました。

また、改めて人間の文明は自然のシステムに生かされているなぁという実感を持ちました。

第8回モニターツアーを具志頭遊歩道で開催しました!

今日は朝から第8回モニタツアー「博士と行く、ホロホローの森 ~散歩道が10倍楽しくなる植物と地形のフシギ~」でした。平日開催ということで参加者が集まるか心配でしたが、5日前には受付けを締切るほどお問い合せをいただきました。感謝!

そしていよいよ当日。

植物観察の手引き
前日にガサゴソと準備。今回は植物観察の際に役立つ情報をまとめた冊子を用意しました。

 

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5分遅れでスタート!まずは安全管理について情報共有。

 

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集合場所のムラサキシキブ、ハマイヌビワを使って葉のつき方について解説。さっそく観察の手引を開いてもらいました。

 

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ハラビロカマキリの若個体で盛り上がりつつ、さっそく遊歩道へGO!

 

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遊歩道へ入ってすぐのところで360°写真。

遊歩道に入ってすぐはこんな感じ。ハマイヌビワ、ガジュマルが頭上を覆い、ノアサガオ、アマチャヅル、ミツバビンボウカズラなどのつる植物からなるマント群落が隙間を埋めてくれます。マント群落は陽射しを遮り、森の中が乾燥するのを防いでくれます。

 

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ショウベンノキで三出複葉の解説。3枚で1セットの葉っぱ。

 

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「ああ、これのことか」とここでも観察の手引が活躍。いい感じ。

 

 

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ヤブニッケイ。「ホロホローの森」と呼ばれるこの森。ヤブニッケイのことを地元具志頭ではホロホローと呼ぶそうです。

 

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葉をもんで香りを嗅いでもらいました。

 

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開けた場所で休憩がてらにガジュマル、アコウ、ハマイヌビワの見分け方について解説。

 

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高いところから気根がたくさん垂れ下がっていました。

 

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「あ!葉の裏に何かいる!?」

 

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ナナホシキンカメムシでした。匂いも嗅がせていただきました。。

 

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葉先がくるくるっとしたトウヅルモドキ。他の植物に葉先をからめてよじ登り、光が当たる場所を確保します。

 

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トウヅルモドキの解説をした直後に「あ!確かに上の方にもいる!」と参加者自身が発見することも。

 

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ぱっと見でそっくりなアマチャヅルとヤブガラシの葉を見比べて違いを探してみる。

 

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左がアマチャヅル、右がヤブガラシ。

葉の形はヤブガラシのほうがギザギザ(鋸歯といいます)が明瞭。葉のつけ根をみるとアマチャヅルは一カ所から生えている感じだけどヤブガラシは少し葉柄が長くなっている。あとはヤブガラシのほうは少し葉柄に赤味がかっていたり。皆さんよく気づきます。

 

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案内の途中、熱心にメモを取る方が多かったです。質問も多くでて、参加者の好奇心の高さがうかがえました。

 

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出口のところではアマクサギの花が咲いていました。

 

じっくり2時間ちょいかけて無事に出口へ到着。皆さんお疲れ様でした!

 

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ゆっくり歩いてスタート地点へ!

 

まとめをして、アンケートを記入してもらい、解散。終了後も質問がいくつかでて盛り上がりました。やんばるでは見れない沖縄南部特有の自然を楽しんでいただけたようです。参加者の皆さまからもいろいろとお話を聴くことができて、私たちにとっても学びのある時間となりました。今回はご参加いただきありがとうございました。次回もぜひ!

こちらのコースは近々正規のツアーコースに追加しますのでお楽しみに!

 

<お知らせ>

今回のモニターツアーにご同行いただいた八重瀬町役場 観光振興課さまよりお知らせがありました。10月30日に今回と同じ場所(具志頭遊歩道)で「まち歩き」イベントを実施するとのこと。地元の方々がガイドを行うということで、私たちでは話せない地元地域密着の歴史・文化・自然のお話が聞けるかと思います。よろしければこちらもぜひご参加ください。

 

<お知らせ2>

今回のモニターツアーで使用した具志頭遊歩道を活用したツアーコースを正式にラインナップに追加しました!ツアーのお申込みを受付けておりますので沖縄へご旅行の際はぜひご利用ください。もう少し涼しくなってくるとより快適に散策できるかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

http://curiousokinawa.com/nanbuforest.html

 

(仲栄真)

台風18号通過後のビーチは…?

台風18号、すごい威力だったようですね。

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日本気象株式会社のサイト「地球気」より

「ようですね」というのは、今回は実際にその猛威を体験することはなかったので。

台風18号は最盛時に905hPa(!)という猛烈な勢力にも関わらずたいへんコンパクトな台風だったため、沖縄本島の真横を通り過ぎた(久米島を直撃)にも関わらず本島はそれほど無茶苦茶な大荒れにはなりませんでした。久米島在住の皆様におかれましては、一刻も早く生活が元通りになることを祈っております。

さて、台風が通り過ぎた後は海岸が気になるもの。

台風による波が外洋から、普段は流れ着かない「思わぬ土産」を浜に届けてくれることがあるからです(※必ず、絶対に、波がおさまったのを確認してから出かけるようにして下さいね!!)。

というわけで台風通過の翌々日、(就業時間中にもかかわらず)那覇の事務所からほど近い瀬長島に行ってまいりました。

島に向かって右側の北岸から

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こちらは新しい滑走路が海上にできて、外洋の波があまり入らなくなっている模様。

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大量に打ち上げられていたのはカイメンソウ。

生きている時は深緑色をしています。海綿(単骨海綿目のカイメン)と紅藻類が共生してこのような枝状の体を作ると考えられています。カイメンソウの体をつくっているカイメンと紅藻、どちらも単独では自然界で生きられない…という不思議な生物。

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ハマササゲ(マメ科)の黄色い花が咲いていました。

北岸はあまり目ぼしい打ち上がりはナシ。

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瀬長名物、離発着する旅客機

というわけで、南岸の方へ

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ビーチでの捜し物に熱中して俯いている人、傍目にはなんだかちょっとネクラに見えます(もちろん僕もです)。

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台風で千切れた海藻や流されてきた葉っぱなどが、高潮線に沿って延々と打ち上げられています。

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こちらは台風のときの打ち上げ。高潮線よりさらに上(陸より)に並んでいます。

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砂浜の上にはこんな足跡がたくさん。

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足跡の正体はオカヤドカリ。

海岸に打ち上がった海藻や生き物の死体を餌にしています(写真に写っているのはノコギリガザミ類のハサミ)。普段からたくさん見られますが、この日は打ち上げゴミの中に餌がたくさんあったためか、昼間から多く出歩いていた印象を受けました。

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こちらはオキナワヤマタニシ(陸産の貝類)の殻を背負ったオカヤドカリ。瀬長島にも恐らくたくさん生息しているのでしょう。

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ラッパモクという海藻(褐藻)の仲間。

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海草類もたくさん打ち上げられていました。このあたりの海中にかなり大規模な海草藻場があるのかもしれません。

というわけで、「打ち上がり」はいつもより多かったものの、あまり目ぼしいものは発見できませんでした。

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砂浜と道路の境目あたりに生えるオオハマボウ(ユウナ)の樹。オオハマボウは海岸にも多く生える植物ですが、さすがに台風の波の直撃はダメージが大きいのでしょう。

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こんな感じで、下の方の葉はすべて落ちるか枯れるかしていました。

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クサトベラの樹も相当なダメージだったようですね。

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グンバイヒルガオ。丈の低い植物はこのように砂に埋もれてしまうというリスクもあります。

それでも枯死してしまわないあたりはさすが海岸植物です。内陸の植物の中には、台風の影響で塩分を含んだ雨が降っただけで枯れてしまうものも多くあります。

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というわけで、残念ながら大きな収穫もないまま海岸を後にしました。

場所が悪かったのかな、とも思いましたが、今回は台風の風向きがイマイチだったらしく、中部や北部まで台風後のビーチコーミングに出かけた他の友人数名からも「大した収穫はなかった」とボヤいておりました。

波の高い時に行かない、というのが大鉄則ですが、台風後のビーチコーミングは運がいいといろいろ面白い「打ち上がり」を見られるのでオススメです。

具志頭の遊歩道の下見に行って来ました!

このたび、第8弾となるモニターツアー(10月19日水曜実施)の下見に、具志頭遊歩道(ホロホローの森)に行ってきました。

まずは具志頭体育館からちょっと降りたところにある場所に寄り道。

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この道、上を通るだけでは何てことない道なんですが…

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横から見るとこの通り。天然の石灰岩の橋になってます!どうやってこの形になったのでしょう。詳しくは当日…!

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近くではヤンバルアカメガシワが実をつけていました。「ヤンバル」という名がついていますが沖縄本島の中南部にも先島にもたくさんあります。アカメガシワ同様、新芽が赤くなります。ちなみに赤くなった新芽は、冬〜春くらいに行けば見られます。

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オオムラサキシキブの花。花とともに下の方にちょこっとm晩秋にはこんな感じに実が鮮やかな紫に色づきます。

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2015年12月撮影

さて、それでは遊歩道に入って参りましょう。

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まず森に入って目に入るのが、複雑怪奇な形に侵食された石灰岩とそこに絡みつくガジュマルやハマイヌビワの根っこ。

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大きく切り立った石灰岩の崖からは、上に生えているガジュマルから出た気根が垂れています。

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植物の体は「シュート(茎+葉)」とルート「根」とに大別でき、基本的にシュートは地上に、ルートは地下にあります。気根はルートが地上にある、という例外のひとつ。

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このひょろ長い気根も、地上につくと一気に太くなりはじめるそうです。こうなると手で動かすのも困難なほどの太さと強度になります。

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石灰岩の上の植物群。サタソウ、オニヤブソテツ、タイワンクズ、キダチハマグルマ、ホウビカンジュなど。

この辺りに生育する植物のかなりの種類が、土がほとんど、もしくは全く無くても根を下ろして発芽し、育つことができます。

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この向こうが明るいのは森が途切れて開けているからなのですが、向こう側が見えません。

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これは、このような「マント群落」と呼ばれるつる性植物でできたシートに覆われているからです。ハート型の葉はノアサガオ。

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他にもアマチャヅルや、

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ミツバビンボウカズラ

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キダチハマグルマ、などがマント群落を構成しています。

このマント群落には、森の外側を覆うことで水の蒸発を抑え、森全体を保湿する働きがあります。

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ふと頭上を見ると、ハマイヌビワの葉裏にナナホシキンカメムシ。カメムシなので無理矢理つかむとカメムシ臭を出します。

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マメ科のクロヨナの、淡いマゼンダの花が満開でした。

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マメ科特有の蝶形花。高いところに咲いている場合が多いのですが、いくつか目の高さに咲いている場所も見つけておきました。ただ、この台風でかなり散ってしまうことが予想されます。

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大きな樹の下には、この通り花がたくさん散っていました。

マメ科なので、当然マメがなります。

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昨年落ちたマメはこんな感じに発芽していました。ちなみに樹木の芽生えのことを「実生(みしょう)」と呼びます。

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こちらは同じマメ科のハカマカズラの実生。

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ヤシの仲間のクロツグ。

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写真ではサイズが分かりにくいですが、二抱えほどもあるシマタニワタリの大株(中央右)とホウビカンジュ(左)。

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道の頭上を横切るガジュマル。ガジュマルやハマイヌビワは、他の植物の影の下に入ってしまうと伸びる方向を変え、日照を求めて「逃げる」そうです。

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で、逃げた先で手をつくように気根を下ろしていくので、森の中を比喩でなく「歩く」(ただし長い時間をかけて)んだそうです。

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トウヅルモドキ。

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葉の先端がこんな感じで巻いていて、ここで他の植物に絡みついていきます。

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上っては垂れて、を繰り返すとときにものすごい密度になります。上の写真では右上〜中央の黒っぽい塊が全部トウヅルモドキです。こうなると光を通さなくなり、しまいには覆いかぶさられた植物は光が届かなくなり、枯れてしまいます。

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ノカラムシの花。

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目立ちにくい大変小さな花です。

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ちょこっと海が見える所に出て、

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切通しチックになった場所を通って、

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駐車場まで降りてきました!ちょっとしつこく見すぎまして、ここまで3時間強。当日はもうちょっと短縮します。

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駐車場脇に咲いていたアマクサギの花。クサギの仲間なので、花の作りがイボタクサギ(海岸やマングローブに多い)などと似ています。

最後に少し、当日使うかは分かりませんが海岸の方にも寄ってみました。いま来た遊歩道を戻って海側へ抜ける…のはしんどいので、車で海岸側の駐車場へ。

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こちらもなかなか面白い地形。隆起サンゴ礁が侵食されていく時にここだけ残ったのでしょうね。基部は波でかなり抉られてノッチになっています。

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グンバイヒルガオが花盛りでした。カンカン照りの砂浜に緑のじゅうたんを広げたように生育します。

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ハリツルマサキ。目立ちにくいですが、こちらも小さな花を咲かせています。

ハリツルマサキは街中にもたくさんありますが、海岸のものは街中のものに比べて、和名にふさわしく棘だらけです。

…という感じで今回は終了。現場でこの季節にお見せできるものはだいたい把握したので、あとはどうやって「植物学」を身近な体験と結びつけて伝え、皆様に楽しんでいただけるか…を画策中です!

恩納村の海岸下見

恩納村の海岸に、フィールドの下見に行ってきました。

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台風の影響で波はちょい高め。

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隆起サンゴ礁が波による侵食を受けてできたダイナミックな地形も、ここの魅力です。

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岩肌にはサンゴや二枚貝の化石も。こちらは単体性造礁サンゴのクサビライシ類。

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こちらはオオトゲサンゴの仲間。キクメイシ類(サザナミサンゴ科)に比べて隔壁(放射状に並んでいる部分)が分厚いのが特徴。

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貝類の化石もちらほら。

干潮のときに見られる潮間帯生物を確認するために波打ち際へ。

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ニセクロナマコ。

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水面で腕をフリフリして食事中のウデフリクモヒトデ。水面に浮いている泡(サンゴの粘液とプランクトンの死骸なんかが混ざったもの)が奴らの餌です。

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イボタマキビ(窪みにいる黒いツブツブした貝)。高潮帯(潮が目一杯満ちてくると水をかぶる場所)にいます。海岸で寝る場合、こいつらのいる場所で寝たら水没しますね。

そしてちょっと移動して、

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よく来る人はこの写真だけでどこか分かるかも。巨岩の中が抜けて洞になっています。

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内部はこんな感じ。よく見ると天井に石灰岩の柱が垂れていて現在進行系で雨による侵食を受けていることがわかります。

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現在の潮線の少し上あたりの窪みは、洞内に入り込んできた波によって侵食された跡。

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そしてこんな洞の上にも海岸植物が。中央少し右にソテツが見えます。

ここのもう一つの見どころは、沖縄の海岸植生がわりときちんと残っているところです。まずは波打ち際に近い最前線から。

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花をつけたウコンイソマツ。

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ソナレムグラ。

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ソナレムグラの花。

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こちらはイソフサギ。赤く見えるのは花です。

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イソフサギとウコンイソマツ(少し奥の方)こんな感じで岩礁の窪みを埋めるように生育します。

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ホソバワダン(ンジャナ)と思われるが、要確認。

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イソノギクの白い花。

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ボタンボウフウ(長命草)。

ここからちょっと陸寄りに移動して、

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ハマゴウ。

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マメ科のハマササゲ。

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こちらは木本(もくほん)のクサトベラ。

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さらに陸に上り、海岸植生も背が高くなり「海岸林」になるあたりにはアダン。

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葉の縁だけでなく、よく見ると裏側の中心にも棘がついています。

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まだ青い実もついていました。

という感じで、海プログラム実施のイメージもついた所でタイムアップ。ここは本当はもっと真面目に見れば海岸植物の種数が出るのですが、今回は時間が足りなかったのでまた次回にでも。

エコツーリズムセミナーに参加しました。

今日は打ち合わせやセミナー参加で朝から県庁周辺をうろうろしておりました。

 

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那覇市役所。ジョートーな建物です。

日差しを浴びるとまだまだ暑いですね。ときどきコンビニで涼みつつ、建物の陰から陰へと移動します。午前の打ち合わせは県庁にて。一度戻って昼食を取った後はセミナー参加のため某バス会社のビルへ。

 

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今回参加したセミナーはこちら。

 

「エコツーリズム」という言葉にはいろいろな定義があるのですが、大雑把に言うと地域の人々が主体となり地域資源を活用した観光で地域振興を行う、といったところでしょうか。ここでいう地域資源は自然環境に限らず、その土地の文化や伝統、歴史、そこに住む人々など幅広く含まれています。

キュリオス沖縄は沖縄県南北のフィールドを利用させていただいており、特定の地域に根ざしてその地域でのみ活動しているわけではありません。それで言うと地域の人々からは「よそ者」ということになります。そんな僕らとしては、よそ者として如何に地域へ貢献できるかということが課題となり、まだ答えを模索する中にあります。

私たちはその地域の自然環境に魅了されて利用させてもらっているので、もしもその地域が主体となってフィールドの保全・管理のための取り組みを行うならば、もちろん私たちにできる最大限の協力と応援をしたいと考えています。

今回のセミナーでもエコツーリズムでどのように地域づくりを行うかが焦点になったのですが、そういった地域づくりに参画しているセミナー参加者の方々は僕らのような「よそ者」とお互いにどう協力できるかを考えてくれていたので、とても前向きな想いをもって会場を出ることができました。

私たちは沖縄という大きな枠で「地域」を捉えていますが、フィールドを利用している各地域への貢献も忘れることなく、活動を進めていきたいと思います。

 

ということで今回のセミナー主催者のおきなわ環境クラブさんやエコツーリズムの事例・成功例として話題に上がった国頭村、長野県の南信州観光振興社のリンクをご紹介。

 

(仲栄真)

救命講習を受講しました。

夏のピークが過ぎ、風も涼しくなってきた沖縄。

これまで実施してきたイベントやツアーなどを振り返り、オフシーズンに向けて安全管理マニュアルの情報を更新しようという話に。それに併せて、那覇市消防局で救命講習を受けることにしました。以前にこういった講習を受けたことのあるメンバーもいますが、情報の更新もありそうなので、改めて受講することにしました。ということで、さっそく本日受講してきました。

 

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銘苅にある那覇市消防局へ。

 

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やっぱりかっこいいなぁ

 

3時間の講習を受け、一次救命処置(BLS:Basic Life Support)について学びました。主な内容は胸骨圧迫や人工呼吸を含む心肺蘇生法やAEDの使用方法についてです。

 

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おなじみの人形を使って実際に練習しました。

 

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訓練用のAEDです。

 

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最後に救命講習修了証をもらって無事終了。ボスも満足そうです。

 

今回の講習は那覇市在住・在勤の方なら那覇市消防局で無料で受講できます。他の市町村でも同様に各地域の消防で講習会を定期開催していますので受講してみてはいかがでしょうか。

那覇市ではコンビニへのAED設置を進める事業を行っていたそうです。上記のリンク先に設置コンビニの一覧と地図がありますので那覇市民の方はぜひご覧ください。

ツアーやイベントを安全に、安心して楽しんでもらえるように今後も情報収集や対策を怠らないようにしようと身を引き締めた一日でした。

 

 

ペリーさんと沖縄の植物学

昨日はキュリオス沖縄も休日だったのですが、ボスから連絡が入りました。

「ペリーが県立博物館に来るらしい!」

意味不明な興味深い発言だと思い調べてみると、9月16日から19日の日程で沖縄コンベンションセンターで開かれていた日本植物学会の公開講演会が県立博物館で開かれるそうで、そのタイトルが「黒船から始まった沖縄の植物学」でした。

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会場で配布されていた資料。

 

ペリー艦隊が来日して徳川幕府に開国を迫ることは教科書にも載っていることですが、実はその来日の足がかりとして、先に当時の琉球王国へ来航していたのです。1983年に一度琉球王国へ入り、その後に主力艦を率いて来日しますが交渉がうまくいかなかったため琉球へ戻ります。二度目の来日も琉球王国を経由しており、その際には日米和親条約を結びます。このようにペリーさんは琉球王国を足場にして日本と交渉を行っていたのです。

このとき、ペリー艦隊に随行した学者らが沖縄の植物を採取しており、そのときの標本が今もアメリカのスミソニアン研究所やハーバード大学、ニューヨーク植物園に学術標本として保管されているそうです。

今回の講演会では、ペリーさんたちが採取した植物標本を使った研究や、沖縄の植物がどこからやってきたのかその起源を探る研究、クワズイモを使った光合成に関する研究が紹介されました。

改めて沖縄の歴史と自然について興味を深める時間となりました。今回聴講した内容をツアーでもお話できるように調べておこうと思います。ぜひお楽しみに。

 

泊の外国人墓地にペリー来航の記念碑があるそうなのですが、そこにボスが行きたがっています。いつでも行ける距離だけど、なかなか行かない場所なのですが、ちょっと足を運んでみようかな。