台風13号。そして気になる海水温。

昨日は雨音で目が覚めて天気をチェックすると熱帯低気圧が台風になりそうとの予報。その後、予報通りに台風となり、足早に沖縄本島近海を通過。

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気象庁の台風情報より引用。http://www.jma.go.jp/jp/typh/1613l.html

 

特にツアーの予定はなかったのですが、打ち合わせが何件か入っていたので窓の外が気になる一日でした。

今年の沖縄は全く台風が来ないために海水がかき混ざらず、表層の海水温が上昇し続けていました。そのため、サンゴの白化(サンゴの体内に共生している褐色の藻類がいなくなり、白色の骨が透けて白くみえるようになる)が大規模に起こるのではないかと心配されていました。最近は連日のように新聞やテレビでも報道されていますね。

2016, 08, 27 日本最大のサンゴ礁が白化 専門家「沖縄のサンゴ半数以上死滅の恐れ」 | 沖縄タイムス+プラス

2016. 08. 29 サンゴ:白化9割も…海水温上昇で 国内最大「石西礁湖」 – 毎日新聞

2016. 08. 29 サンゴの白化拡大、98年以来の被害か 沖縄・鹿児島:朝日新聞デジタル 

2016. 09. 01 石西礁湖、慶良間、本部、恩納…サンゴ白化拡大 – 琉球新報 –

2016. 09. 05 鹿児島:奄美サンゴ白化 海水温高く大浜海浜公園の8割 – 毎日新聞 

2016. 09. 05 サンゴの末期、悲しい輝き 沖縄「白化」の海に記者が潜った | 沖縄タイムス+プラス

キュリオス沖縄でも7月31日にツアーで使用している恩納村のフィールドでサンゴの白化を確認していたので、記事中に何度か取り上げられているサンゴマップに投稿しました。

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藻場のシコロサンゴ、タイドプールのハマサンゴでは全体が白化してる群体が多く見られました。

 

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リーフエッジ付近は特にミドリイシが顕著に白化。ほとんどが群体全体が白化していました。

 

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エッジ付近の礁原では白くなったミドリイシが目立ちました。

 

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とはいえ全然白化していないハマサンゴもいました。タイドプールごとに環境が異なっているようです。

 

今回の台風13号は沖縄のダイバー、サンゴ研究者、海に関わる人々にとっては待望の台風?と思いきや、この台風が来る前にすでに水温が下がってきていました。

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こちらは7月1日、15日、31日の沖縄近海の水温。だんだん水温が上がっていきました。気象庁の日別海水温より引用・改変。http://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/db/kaikyo/daily/sst_HQ.html?areano=3

 

東シナ海_海水面_8月9月
こちらは8月1日、15日、30日、そして9月5日の海水温。段々下がってきていますね。

 

どうやら8月19日・20日あたりから下がり始めたようです。とはいえまだまだ水温は高いままですので、今回の台風13号が海をかき混ぜてくれることを期待したいですね。このまま下がっていくといいのですが・・・。

 

まだまだ夏の干潟ツアー

昨日は午後から恩納村で干潟ツアー。

大阪からお越しのご家族と県内から参加のご夫婦の二組をご案内。9月に入り、朝晩は涼しい風が吹くようになった沖縄ですが、日中はまだまだ夏。熱中症に気をつけながらあっという間の2時間をお過ごしいただきました。

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iPhoneアプリで360°写真を撮影。広大な海草藻場が広がるフィールドです。

この日はエントリーしてすぐの岩場でシオマネキの仲間やイソアワモチ、ヒザラガイなどなど、子どもたちが歩けば何かを見つけてじっくり観察モードでスタート。

ルリマダラシオマネキ
ルリマダラシオマネキ

 

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ソデカラッパ発見!ハサミ脚が片方なかった・・・。

 

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砂浜で小さなアオヒトデを発見。

海草藻場にたどり着いたら今度はカニ、ナマコがフィーバー。岩礁帯ではサンゴの蛍光を観察しました。飽きるほど生き物を観察して今回もツアーを無事に終えました。。

夏の暑さが続く沖縄ですが、水分補給を忘れずにまだまだ夏を楽しみたいですね!

 

夏休みの終わりに、沖縄の干潟へ出かけて子どもたちと海の生物探しに興じる!!

沖縄県地域環境センター(沖縄こどもの国チルドレンズセンター1F内)の主催で、先日8月20日、恩納村の干潟にて「海の生き物観察会」が開催されました。

この観察会に弊社のメンバーも講師として参加して来たので、その模様をお伝えします。

 

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講師陣はこちら。

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「しかたに自然案内」の鹿谷麻夕さん

「しかたに自然案内」を運営し、沖縄における海洋・生物教育啓蒙活動を行ってらっしゃいます。

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そしてキュリオス沖縄の仲栄真礁君

そして我らがキュリオス沖縄の仲栄真君。

私宮崎は、もっぱら写真を撮るというポジションで参加しました。

また、沖縄こどもの国のスタッフさま方(集合写真撮り忘れましたorz)がイベントのお膳立てから会場設営、当日の安全管理まで担当してくださいました。

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まずは、事前学習が行われる恩納村ふれあい学習センターの教室にて打ち合わせ。

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集合時間の13:30になり、続々と参加者が集まってきます。この日の参加者は全体で30名ほど。

ここで一通り危険生物・熱中症への注意喚起、観察の際のポイントなどについてレクチャーが行われました。

干潟の生物観察に行く際の注意点をごく簡単に挙げると、

  • 熱中症対策をしっかり(帽子、首にタオル、水分をこまめに補給)
  • サンダル厳禁(後述します)
  • 危険生物に関する知識をある程度身につけていく
  • サンゴ、そしてなるべくなら海草も踏まないように歩く
  • ひっくり返した石は必ずもとにもどす

こんなところでしょうか。

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レクチャーが終わり、いよいよセンターの裏の干潟海岸へ!…観察会にクバ笠って、渋い。

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皆さん、足元はバッチリでした。

海というとビーサンや草履で行く人が多いですが、こと足元が岩場だったり、転石がごろごろしてたりという海岸では岩で足を切ったり、生き物の棘に刺されたりというリスクがあり大変危険です。

こういう場所での生物観察に一番いいのはフェルト底のマリンブーツですが、底がしっかりした運動靴でも十分代用できます。詳しくはこちらをご覧下さい。

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さて、先陣を切って生き物を探してくれていた子が探してくれたこの生き物、なんだか分かります??

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この写真と次の写真は別の日に撮影

裏返してみたら分かりやすいでしょうか。これ、イソアワモチという「殻のない貝類」です。

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こんな感じで岩にひっついています。

殻がない、というだけでもヘンな奴ですが、実はこの貝、肺で直接空気を呼吸します(多くの海産の貝類はエラ呼吸のみ)。さらに、呼吸をするための穴が肛門の後ろに空いています。

海辺で見かけたら、是非おしりの辺りを覗き込んでみて下さい。

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こちらはナマコの仲間のオオイカリナマコ。

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こちらも別の日に撮った写真

たいへん長くなるナマコで(2mぐらい)、サンゴ礁の浅い砂地やアマモ場に多く生息しています。

体はぶよんぶよん(大部分が水)で、おまけに触ると手にひっつきます。ぱっと見、粘着しているようにも見えますが、実はこれは体の表面にあるカルシウムの棘(骨片)が引っかかっているのです。この骨片が錨(いかり)の形をしているので「イカリナマコ」という名がついた、といわれています。

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ちょっと遠目で分かりづらいですが、こちらはソデカラッパというカニ。カラッパが見つかったら面白いね〜なんて話をしながら歩いていたら、なんと一人の男の子が見つけてくれました!

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これも別の日に撮った写真

?これのどこがカニなんだ?という形をしています。DSC04286

ひっくり返すと分かりやすいでしょうか。なんというか甲羅の左右が張りだして脚を覆うアーマー(鎧)みたいになってます。そして左右のハサミはその甲羅と完璧につながるようなデザイン。

上の写真でカニの右(カニから見て右)のハサミに奇妙な白い突起があるのが分かるでしょうか。またの機会に詳説しますが、実はカラッパ類はこの突起を支点にして巻き貝類を「缶切り」の原理でバリバリと割って食べるのです。

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ちなみにこちらは鹿谷さんのグループ。

事前の班分けで「生き物を探してガンガン行く組(弊社仲栄真)」と「のんびり行く組(鹿谷さん)」とに分かれたのですが、結局どちらのグループも生き物を目にすると「もっと探そう!」とガンガン前に進んでしまう感じでした。

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岩をどけて生き物を探す。ひっくり返した岩は、そーっと元通りに!

しかし、子供たちの生き物を見つける速度の素早いこと。弊社仲栄真、そして私も普段から海の生き物を探し慣れているはずなのですが、この日解説した生き物の半分くらいは子どもたちが先に見つけてしまいました。

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こちらはカワテブクロというヒトデの仲間。腕が冗談のように太いですね。

かなり暑い日で、2時間ほどで海岸での生き物観察は終了。参加した子どもたちには大変楽しんでくれたようで、「来年も来たい人〜?」との問いかけに全員挙手してくれました。

鹿谷さん、仲栄真君、お疲れ様です。企画を立てて色々お膳立てしてくださった子供の国の皆様、ありがとうございました!

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おまけ。ホワイトボードに海の生き物を描いてウェルカムボード的なものにしよう!ということで描き始めたものの、いつのまにか「うろ覚えイラスト大会」になってしまいました。

(宮崎)

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「藻場」はなるべく踏むべからず!沖縄で海を歩く際はご注意を。

「藻場(もば)」

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海藻や海草が一面に生えている場所をこう呼びます。紛らわしいですが、「モバゲー」等のモバは「モバイル」のモバであって藻場ではありません。

海藻と海草の違いは?

どちらも読みは「かいそう」です(海草の方は「うみくさ」と読む場合も)。

「海藻」の方は藻類(そうるい)と呼ばれる植物を指します。藻類とは簡単に言うと、花を咲かせず胞子で殖える植物の仲間で、体のつくりは単純で、根・茎・葉の区別はありません。「緑藻」や「紅藻」「褐藻」などいくつかのグループに大別されます。

身近なところではコンブやワカメなど。ローカロリーでうれしい「海藻サラダ」に入っているアレですね。岸近くで藻場を形成する海藻としてはホンダワラやカジメ、アラメなどが有名です。

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イソスギナ Halicoryne wrightiiこちらは藻類の仲間。

これに対して、「海草」は花を咲かせ種をつくる植物(被子植物)の仲間です。

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リュウキュウスガモ Thalassia hemprichii

海藻には「根」「茎」「葉」の区別がありませんが、海草にはちゃんとあります。

関東に多いのはアマモやコアマモ、沖縄だと一番多いのはおそらくリュウキュウスガモではないでしょうか。岸近くの砂地、特に河川があって陸からの栄養分が適度に流れてくる場所に多く育ちます。

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一面の海草藻場(うみくさもば)

海草はどっから来た?

植物の祖先も、最初は海で誕生・進化し、その後一部のグループが進化の過程で陸上に上がったと考えられています。

コケ→シダ→維管束植物の順に進化(分岐)した年代が新しいとされていますが、この順番は、より陸上に適応していく過程でもあります。端的に言えば、古いグループ方が乾燥に弱いのです。森の中がコケで覆い尽くされた屋久島なんて、「年400日雨が降る」と言われていますよね。ちなみに「藻類」は、そもそも陸上に上がらなかったグループの一つです。

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コケ植物の多くは湿潤な環境を好む。やんばるにて。

ところが「海草」の仲間は一度陸上に適応したのち、海に戻った変わり者の植物です。哺乳類でいうところのイルカやクジラみたいなイメージでしょうか。

海草藻場を見つけたら

さて、沖縄も海が楽しい季節になりましたが、サンゴ礁や砂浜を歩いていてこのような海草が茂っている場所を見つけたら、なるべく踏まないようにお願いします。多くの人によって踏み荒らされると枯れてしまいますので。

ただ、藻場は生物観察をするならうってつけの場所でもあります。

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カマスベラの幼魚と思われる

分かりますかね?定規に右下にいる緑色の魚。カマスベラという魚食性のベラの幼魚です。

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イッカクガニ Menaethius monoceros

そこそこの大きさの藻場があればたいてい、こんな感じで緑色をした生き物やいろいろな魚の幼魚などが隠れ住んでいます。詳しくはまともな写真が揃ってから特集しようと思いますが、この他にも小型のイカの仲間やモエビの仲間、イソギンチャクの仲間など「藻場」にしか出てこない生き物がわんさかいます。

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(宮崎)

沖縄産カメムシ2種がそれぞれ「英国風」「和風」すぎると話題に!

カメムシと言えば、悪臭を出すことで嫌われ者というイメージがありますね。

でも、沖縄にはこんなカメムシもいます。

@curious_okinawaが投稿した写真

今回紹介するカメムシも、なかなかのお洒落さん達です。

(試しにInstagramの昆虫写真の投稿をファッション系のタグまみれにしてみたところ、Instagramをファッションやメイク関係の情報収集に使っているであろうお姉さま方からもリアクションがありました。いろいろな方に興味を持ってもらうのはとても重要なことです)。

英国風ロイヤルカメムシ

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シロジュウジホシカメムシ Dysdercus philippinus

どうです英国風!

…え、どこが英国風か分からないって?

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ほら、集まってると近衛兵っぽくないですか?

こんな 英国風な出で立ちですが、もちろんれっきとした沖縄在来の昆虫です。この模様を「インディアンの盾」と表現している方もいました。言われてみれば。。

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那覇市内にて、2月

冬場、オオハマボウという樹の葉の裏にこんな風に集まって冬越しします。特にぽかぽかと日の当たる地面に近すぎない場所の葉の裏をのぞいてみると高確率で出会えます。

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さらに、こいつの幼虫の頃の姿がこんななので笑ってしまいます。チョッキか!っての(若い世代の人よ、チョッキとはベスト、ジレーのことです。)

こってり和風カメムシ

それと対をなすように和風な出で立ちをしているのがこちら。

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アカホシカメムシ Dysdercus cingulatus

はい、こちらは文句無しに、誰が見ても和風だと思います。

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黒いスポットが目玉で、人の顔にもちょっと見えますね。

幼虫の写真…はちょっと手持ちが見当たらないのですが、シロジュウジホシカメムシとよく似ています。

カメムシは植物食のものが多く、今回紹介したカメムシ2種もアオイ科の植物(オオハマボウやハイビスカス、フヨウなど)に口吻を突き刺して汁を吸います。ただしカメムシの中には肉食のものもいて、ベニホシカメムシ Antilochus coqueberti なんぞは、(今回紹介した)近縁種のアカホシカメムシを専食するというから驚きです(ひっくり返して口吻を突き刺し体液を吸うようです)。いつか絶対写真撮って記事にしよう。

今回の記事を書くにあたって、あまにりヘタな事を書いてないか一通りweb検索したのですが、wikipediaの情報が安定しているのがいいとして、ニコニコ大百科のカメムシのトピックが素晴らしい。

(by 宮崎)

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【番外編】愛媛県に行ってきました、ので愛媛の身近な生物紀行。

こんにちは、キュリオス沖縄の宮崎です。

愛媛県にいる祖母のもとに親戚が集まるというイベントがあって、愛媛県に行ってまいりました。いや〜、普段からカメラのメモリーの中は生物とか景色ばっかりなのですが、久々にこんなに「人」の写真撮りました。そんな中で少しですが、沖縄にいると出会えない(出会いにくい)生物の写真も撮ってきたのでご紹介します。

まずは祖母の家の近所から。

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アジサイが花盛りでした

愛媛は梅雨真っ盛り…だったのですが、そこは流石に瀬戸内。沖縄よりよっぽど空気が乾いています。久々に体温調節がうまく機能している感じを堪能しました。

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ツチガエル Glandirana rugosa→ヌマガエル Fejervarya kawamurai 

ツチガエルと思っていたのですが、ヌマガエルとのことです(富永先生、ありがとうございます)。

沖縄には近縁種のサキシマヌマガエル Fejervarya sakishimensisが分布します(僕は間違えたツチガエルとは、腹が白いこと、背面のいぼ状突起が小さく滑らかなことなどで区別できます)。

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ドクダミ Houttuynia cordata

いくつかの図鑑では沖縄に分布することになっているのですが、滅多に見ないドクダミ。花は可憐ですが香りは強烈です。葉をもんで鼻につめたら、強烈な臭気とともに少年時代のことをいろいろと思い出しました(葉っぱを顔の前でちぎる、くらいで十分強烈な香りがします)。

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ウメエダシャク Cystidia couaggaria couaggaria

日中からパタパタと飛び回る蛾。羽ばたきは速いのに飛ぶ速度はゆっくりで、これが大量に飛び回っていると何か不吉・不気味な感じがします。ウメやサクラを食草とします。

瀬戸内の海の景色を見るため、しまなみ海道を通って島にも渡ってみました。

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最近、しまなみ海道はサイクリストを呼ぼうと頑張っているみたいですね。あちこちで自転車に乗った集団とすれ違いました。確かに道中の景色は最高だろうなぁ。

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ヤブキリ Tettigonia orientalis

サクラの樹上にいたヤブキリ。キリギリスの仲間の中でも肉食性が強く、アゴや脚に生えた棘がよく発達しています。こちらも沖縄を除く全国に分布。

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アオダイショウ Elaphe climacophora

そしてアオダイショウに遭遇!!これも沖縄では出会えない生き物です。本州・四国・九州では普通ですが、実は日本固有種なんですね〜。

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いつ見ても可愛くていいヘビです。無毒ですが、ヘビの種類を見分ける自信のない人、扱い慣れていない人は捕まえようとしないこと。ヘビの方にに怪我をさせてしまう可能性もあります。

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美しい鱗。よく見るとダニがついてますね。

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アオダイショウのお腹。幅の広い鱗(腹板)に覆われています。多くのヘビは、この腹板を立てたり寝かせたりする運動により前進します。

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横顔がカワイイですね!

という訳で、楽しい四国行でした。

まるで和菓子のような可愛さ。やんばるの固有種「ナミエガエル」

沖縄本島の北部の山林「やんばる」には、数多くの固有種(そこにしかいない生き物)の生物が生息しています。その一つがこのナミエガエル。

一見ヒキガエルにも似ていますが、分類学的には全然違う仲間のカエル。クールガエル属という台湾〜東南アジアにかけて生息・繁栄しているカエルのグループに含まれるそうです。

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ナミエガエル Limnonectes namiyei

低地にはおらず、夜間、山の渓流の周辺、それも流れが急ではなく緩やかに広がるような所に好んで集まるそうです。雨の日は活発に活動し、沢の周辺の登山道にまで出てきます。

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森の中で鳴いたり移動したりしている時は、こんな風に前脚を伸ばして堂々と佇んでいます。サイズも♂で10cm超と結構大型になるのでなかなか立派な感じです。

おいおい、こんなカエルのどこがカワイイんだよ…と思った方。

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雨の日のやんばるにて。雨滴が写り込んでいます

ナミエガエルは外敵に気づくと、こんな風に「ぺたん」と座り込んでしまうのです。この姿が最高にキュート!!

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虹彩に十字の模様が入ります

背筋を伸ばして(?)いると結構よく目立ちますが、いったん「伏せ」の体勢をとると、沢沿いの石に紛れて非常に目立ちにくくなります。

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産卵場所の、沢が広がった沼地で鳴いていた♂

繁殖期は4-6月、沖縄でいわゆる「うりずん」と呼ばれる初夏の季節で、この時期に♂は「クォックォックォッ…」と鳴きます。

この仲間のクールガエル属のカエルには、何と♂が下顎に牙(のような突起)を持つものが多く、ナミエガエルもこの牙を持つ…そうなのですが確認したことがありません。なにせ沖縄県の天然記念物に指定されているので、捕まえて口を開けて確かめてみる…というわけにはいかないのです。

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ナミエガエルの幼体。あっ、顔吸血されてますね^^;

あと文句なしにカワイイのが亜成体(オタマジャクシではないが、大人になり切ってもいないカエル)。ナミエガエルに限らずですが、カエルの亜成体は眼が体に対して大きくてキュートです。

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コロコロしていて、なんとなく団子を連想させます。「これは、アンコが入ってるに違いない!」とは友人のF氏談。

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亜成体も礫(れき)に擬態しているのでしょうね。夜間沢沿いを歩いていると、石の色にどうかしていてなかなか気づきません。

このナミエガエルですが、戦前、それから食糧難の戦後にかけては、「ミジワクビチ」(ミジ=水、ワクビチ=大型のカエル)と呼ばれて食料にされていました。大型で肉量が多く、しかも美味しかったそうです。その後、ナミエガエルの生息できるような沢や森の減少にともない、分布域・生息数ともに減少してしまいました(絶滅危惧IB類:EN)。

現在は県の天然記念物で、もちろん捕まえることも食べることもできません。ただ夜の沢に入って、「君、だんごみたいだな。中にアンコ入ってんじゃないか。じゅるり」と言いつつ写真を撮るのは自由です。

意外とオシャレな美しさを見せるツユムシの仲間

バッタやキリギリスの仲間はたいへん種類が多いのですが、その中でもツユムシは、多くの地域で最も身近な存在なのではないでしょうか。

そんなもん見たことねぇ!という方は今度、公園の草むらなんかをよく覗いてみてください。よほど街中でないかぎり、そしてよほど徹底的に虫が駆除されていない限り、茂みの草の中にはたいてい何らかの種類のツユムシの仲間がいます。

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ツユムシの仲間の幼虫。ここまで小さいと種類はよく分かりません。沖縄県大宜味村にて。

もっとも、全身緑なので慣れないと見つかりにくいのですが。この瑞々しい緑色は生きている時限定で、標本などにしてしまうと色あせた色になってしまいます。

ツユムシはキリギリスの仲間(キリギリス科)の中では華奢で脚も細く、弱々しい印象を受けます。実際、獰猛な肉食性の昆虫が多いキリギリスの仲間には珍しく、完全な草食性です。過密で飼ったりすれば共食いしないとは言い切れませんが。

さて、緑一色の種類も美しいのですが、ツユムシの仲間には意外なほどオシャレな色彩をまとうものがいます。

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ナカオレツユムシ Isopsera denticulata 沖縄県大宜味村にて。

こちらはナカオレツユムシの幼虫(Tさん、ご教授ありがとうございます!)

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緑の体に赤紫の目と脚。かなり大胆な小悪魔的コーデと言えるのではないでしょうか。そうそう、写真に撮ると中々ピント範囲に入らないですが、ツユムシと言えばシュッと長い極細の触角もチャームポイントです。

ただ幼虫はこんなにオシャレなのに、成虫になると全身緑のごく平凡なツユムシになってしまいます。大人になって「いい加減、小悪魔とか言ってる場合じゃないか…(溜息)」とスーツに身を包む感じでしょうか。

そして今回、意外に美しいな〜と改めて思ったのがこちらのオキナワヘリグロツユムシ Psyrana ryukyuensis

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ヤブニッケイの葉にとまるオキナワヘリグロツユムシ。沖縄県東村にて。

翅に、マスクメロンの模様をごく細かくしたような模様が入ります。また翅は黒く縁取られます

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捕獲してみた

「葉に紛れやすい」と言っちゃえばそれまでですが、大変シックでオシャレだと思います。

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かっちり撮ってみた

ツユムシの仲間としては大型で体もがっしりしています。

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ハイキーに振ってふんわり撮ってみた

ちなみに、熱帯にはもっとはるかにカラフルなツユムシの仲間が生息しています。緑の地にパステル調の赤・青・黄が入るツユムシの写真を見せられた時は度肝を抜かれました。一度は実物を見に行ってみたいですね。

さて、最後になりますが、ツユムシの仲間はかなり体が柔らかく華奢なため、イナゴなんかのノリでつかむとすぐ潰れてしいます。あまり無理な捕まえ方をせず、できるだけ優しく扱いましょう。

倍率は10倍?20倍?オススメ機種は?野外での生物観察に適した繰り出し式ルーペについて、スペックや使ってみての実感など

繰り出し式のルーペは、野外で使うもっとも基本的な観察道具のひとつです。

今は顕微鏡を小学生のうちから扱うことが多いので、ルーペに対しては「今ひとつ道具としてのステイタス感にかける」「地味」というイメージが染み付いてしまっているようです。が、使いこなせばこんなに便利なものはありません。

「ちょっといいルーペ」をポケットに忍ばせて出かけるだけで、身近な自然が冒険の世界にも…なるはずです。多分。きっと。

そんなわけで今回は、山や海辺などの「野外での自然観察」に最適なルーペの選び方、オススメのルーペについて、実際に使ってみた実感を軸に書いてみます。

機種の選び方・買い方について

①倍率は7倍から10倍程度で

分かります、分かりますよ!5倍よりより10倍、10倍より20倍と「拡大率が大きいこと」に心くすぐられるその気持ち。

が、ちょっと待って下さい。ルーペは倍率が高ければ高いほどいいというものでもなく、ちゃんと観察目的にあった適当な倍率というものがあります。

倍率が大きいことのメリットはもちろん対象物が大きく見える、より細かいところまで見えるということですが、一方で次のようなデメリットもあります。

  • 見える範囲がせまくなる。どこを見ているか分かりにくいし、動くものを見る場合、見失いやすい
  • ピントが合う範囲が極端に狭くなる(ピントが浅くなる)。物↔ルーペのピント合わせの距離が大変シビアになり、神経を使う。また、奥行きのあるものが観察しにくい
  • 長時間使うと手ブレにより酔いやすい

室内で細かいもの、特に鉱物や宝石などを観察・鑑定する場合は20倍以上もアリですが、野外の自然観察に限って言えば、高倍率は文字通り「無用の長物」となってしまいかねません。

野外で持ち歩いて昆虫の顔や脚、植物の細かな構造など、特に観察する対象を限定せず色々見たいのならば「10倍」が最も使いやすいと思います。

7倍、8倍は少し拡大率が落ちる反面、上の高倍率のデメリットとちょうど逆のメリットがあります。あまり視力に自信がない方、ルーペに不慣れな方は7倍や8倍でもいいでしょう。

一方、肉眼でなかなか見えないものまで見たいなら、5倍などではやや倍率不足です。

②レンズ径があまり小さいものは野外で不利

レンズが小さめのルーペは視野が狭く、暗く感じられるため野外での観察にはあまりオススメできません。レンズの「有効径」が15mm以上くらいが良いでしょう。

ちなみにルーペには「宝石鑑定(あるいは鑑賞)」というかなりメジャーな用途が存在します。宝石鑑定用のルーペには高品質なものが多く、中でもプロの鑑定士に人気なのが、あのNikonが出している10倍のルーペ(品名:宝石鑑定用ルーペ 10×)だそうです。

Nikonのカメラのファンやユーザーなら反射的にポチってしまいそうな製品ですが、ちょっと待った!このルーペ、有効径が13mmしかありません。

持ってる方に覗かせてもらいましたが、大変クリアに見えるものの、野外でラフに観察するにはちょっと視野が狭いなと感じました。

メーカー 型番  倍率 レンズ径

市場価格の目安

Vixen   M20S  10倍 20mm 2,000円前後
Vixen  M16N  10倍  16mm 3,000-4,000円
Vixen   M17N  10倍  17mm 4,000-5,500円
Nikon  宝石鑑定用ルーペ  10倍   13mm 5,000-7,000円
Eschenbach  1176-10  10倍  23mm 6,500円前後
Eschenbach 1182-10   10倍  23mm 6,500円前後 
カートン光学  R7529  10倍  22mm  〜9,000円
カートン光学

 R2450

(カリナンPRO)

 10倍  18mm  10,000円前後
Zeiss   D40  10倍  13mm

12,000円前後

↑各メーカー定番商品の倍率10倍のルーペのレンズ径比較。もちろん、レンズ径が良ければそれで良いというものではありません。

③レンズは、できれば2枚構成以上の高品質なもので

3倍くらいまでだとあまり感じませんが、倍率が10倍ともなると、品質の悪いレンズだと像のゆがみがひどく、見ていて疲れます。また、ピントが合った部分の像がいまいちハッキリしないものもあります。これらはレンズの「収差」によるものです。

収差:いろいろな要因で、一点から出た光線の束が完全には一点に集まらないこと。

高品質なルーペにはレンズを2枚(ダブレット)、3枚(トリプレット)と組み合わせたり貼り合わせたりすることで、1枚のレンズの欠点を補う(収差補正をする)設計になっているものが多くあります。

ただし、ダブレットやトリプレットだから良いというものではなく、レンズ1枚構成のもので比較的見えのよいものや、その逆もあります。

一般的に1枚構成のレンズは、ルーペを眼に近づけてのぞき込む、いわゆる理科の教科書通りのルーペの見方ではあまり気になりませんが、レンズを対象物の近くに置いて少し眼を離して見る場合(例えば自分が持ったルーペを他の人がのぞくような場合)、像の歪みがかなり出ます。

ちなみにキュリオス沖縄では、ガイドが持つルーペは「トリプレット構成」のものを使用しています。これはべつにお客様に貸し出した道具より良い道具を使ってドヤ顔をしたい訳ではなく、ルーペの扱いに不慣れなお客様にガイドのルーペをのぞいていただく、すなわち上記のような使い方をする機会が多いためです。

(紛らわしいですが、複数のバラバラに動くレンズが収納されていて、重ねて使うと高倍率になるタイプは普通「ダブレット」や「トリプレット」とは言いません。一見1枚の分厚いレンズのように見えるのがそうです)

④オススメの機種、メーカー

価格は1000円台から一万円超え、さらには三万円台までピンきりですが、安くて比較的良いものもあります。

検索するとさまざまなメーカーが出てきますが、実際にルーペを製造している所は多くはないようで、ラベルだけ違って中味は全く同じ、なんてことも多々あります。下記に紹介しているのはいずれも製造を手がけているメーカーさんか、少なくともメーカーオリジナルの製品です。

Vixen

Vixenというメーカーが出している「メタルホルダーM20S(倍率10倍)」というルーペは、実売1700円弱と大変お手頃でオススメです。

メタルホルダーM20S。ストラップは付属しません

この機種のいいところは、10倍の倍率の割にレンズ径が20mmとかなり大きく、のぞきやすいところ。安いわりに像がきれいという定評もあります。実際使ってみてもかなり見やすいです。

野外で落っことしたり汚したりぶつけたりということを考えると、このくらいの価格帯がちょうどいいのかもしれません。ちなみに「キュリオス沖縄」のツアーでお客様に貸し出しているのもこの機種。

こと、野外観察での実用性に関してはピカイチで、よくこんな価格でこんなモノが作れるなぁと思ってしまいます。

レンズはガラス、そのほかは総金属製です。繰り出し部分の動きが個体によって固かったり、逆にゆるかったりもしますが、造りはこの価格にしては決して悪くないと思います。

横から見たところ

Vixenのメタルホルダーシリーズには、この上に「M16N(レンズ2枚構成)」「M17N(レンズ3枚構成)」がありますが、価格がだいぶ高くなる上にレンズの有効径は16mm, 17mmと「M20S」と比べるとやや小さめになります。

この値段になってくると、下記のルーペで有名なブランドの商品とそう差がなくなってしまいます。やはりM20Sのコストパフォーマンスの良さはぶっちぎりだと思います。

コレに付属しているのもM20Sっぽいですね。Vixen 「コケ観察セット」

追記:その後、M16Nも買ってみました。実勢価格で2600円ほど。

あ、コレいい…!

視野の端まで像がきれいなので、レンズ径の小ささはあまり気になりません。周辺部はもちろんですが、中心部のシャープさでもM20Sよりも上。コントラストも色乗りもいいです。

というわけでM20Sよりちょっと良いものが欲しい方にも大変オススメです。

その他、5000円前後のルーペ

もっと高い物じゃなきゃ格好がつかん!という人は、だいたい¥5000くらいの価格帯の中から選んでみるといいでしょう。

このくらいの価格帯だと、ダブレットやトリプレットの優秀な機種がエッシェンバッハ、カートン光学などの有名どころからいろいろと出ています。

ただ、この価格のものを野外でガンガン使うかどうか、は意見が分かれそうなところです。

個人的な一番のオススメは「Peakの×7」

ちなみに、僕はPeak(東海産業)というメーカーの7倍のルーペ(1985-7)を使っています。

Peak 1985-7

ドイツの光学機器メーカーがかなり古い時代に開発した「シュタインハイル構成」という、3枚貼りあわせ(トリプレット)タイプのレンズ構成を採用していて、非常に像がシャープです。

倍率は7倍ですが、解像感とコントラストがすばらしく細部が見やすいため、実際の観察においては先ほどのメタルホルダーM20S(10倍)と比べてもより細部が見えます。のぞき比べると「あれ、どっちが10倍だっけ?」と思うほど。

色が非常に濃くきれいに出るのも特徴で、構造などを確かめるだけでなく、鑑賞用途にも向いています。

レンズ径は16mmと、先ほどの「メタルホルダーM20S」に比べれば小さめになりますが、視界の隅々までシャープに見えるので特に視野が狭い感じはしません。

相場はだいたい4,500-5,500円くらいでしょうか。この価格帯の中では圧倒的にオススメです。

レンズはガラス、レンズのケーシングは金属、本体はプラスチック製で、繰り出し式ではなく、まっすぐシュッと引き出すような造りになっています。

側面をつまんで引き出します

これは首に下げた状態からワンタッチで引き出せて大変便利なのですが、欠点として、引き出す部分が使っているうちに緩くなり、スポッと抜けてしまうことがあります。

横から

他にも、10倍、14倍、20倍がラインナップされています。(いつの時代のHPだよ!って感じのレイアウトですが、嫌いじゃないですこういうの)

その他、10,000円からそれ以上

お金に糸目をつけないから高品質なものが欲しい、という方へのオススメはカートン光学の「カリナンpro」というモデル。

実売10,000円くらいしますが、倍率×10の高品質なトリプレットにもかかわらず、レンズ径が18mmもあります(大きな高品質レンズ、というのは高価なのです)。実は僕はこの製品を覗いたことはないのですが、どのレビューを見ても良好な評価で、スペック的にも大変使いやすいのではないかと思います。

究極に格好をつけたい向きには、ドイツの老舗名門光学メーカーであるZeissが出しているルーペなどもあります。

10倍のモデル(D40)で実売¥13,000ほどもしますが、持っているだけでレンズマニアから熱い視線を集めること間違いなしです(笑)。僕もちょっと欲しいです。

品質は確実で定評もあります。ただ、宝石屋さんでのぞかせてもらったことがありますが、レンズ径は13mmと小さめなこともあり、野外用として考えると少し覗きにくかったです。なにより高い。。

⑤肉眼と明らかに違う世界をのぞくなら、15-20倍も

さて、野外観察に使うなら10倍くらいまでがいいよ!と書きましたが、7-10倍のルーペをさらに持っていて扱いに慣れており、さらに細部を観察したい!という人には15-20倍のルーペもオススメ。

たとえば、ルリハコベの花の、花粉の粒ひとつひとつまでハッキリ見たいと思ったら15-20倍が必要です。

Peak 1985-14

7倍が大変良かったのでpeakの14倍を買ってみましたが、こちらも大変良いですね。

レンズ径もだいぶ小さく(12mm)、ピント合わせもシビアになりますが、色乗りの良さとシャープさは7倍と同様。

⑥できれば実物をのぞいて選びたい

スペックや評価などはWebで検索すればたくさん出てきますが、見やすい・見にくいといった使用感は、個人の感覚にもかなり左右されます。できれば実物をのぞき比べて選びたいもの。

ただし、いろいろなルーペの在庫を常に抱えているのは、よほど大きなカメラ用品店、専門的な昆虫用品店などに限られます。沖縄に住んでいるとルーペを店頭で見られるところはほぼなく、Webの情報を頼りに探すしかありませんでした。

⑦安く買いたいなら、いろいろな所で見よう

価格を調べていて思ったのは、店舗によって価格に本当に開きがあるなーということ。

正直、どんな商品でも「1円でも安く買おう」という考えには、いち消費者としてあんまり賛同できません。

ルーペを店頭で比較させてくれて、いろんな情報を教えてくれる親切な店があったら、多少高くてもその店で買いたいと、僕は思います。ルーペを在庫するコストや、店員さんの人件費だってそこに乗ってるわけですし。

ただ、ルーペという万人が使うものではない商品の性質上、たとえばカメラなどに比べてもかなり価格は不安定です。下手すると倍以上違います。

極端な例だと、先に挙げたNikonの宝石鑑定用ルーペはメーカーHPに掲載されている希望小売価格が8,800円(税抜き)で、定番商品でもあり特に品薄でもないのですが、ネット通販で14,200円で販売しているところもありました。別に違反でも何でもありませんが、さすがに消費者の無知を突いていると言われても仕方ない価格設定です。

逆に、平均的な相場の7割くらいの価格でカメラ用品、ゴルフ用品、ブランド商品などを取り揃えるネットショップは十中八九明らかな詐欺サイトですので、相場をチェックする癖はやはり大事です。

ルーペの使い方、ルーペを使う上での注意点

ここからは、基本的なルーペの扱い方について。

太陽を見ない

絶対に、絶対にルーペで太陽を見てはいけません。

ルーペで枯れ葉や紙を焼いたことのある方なら分かると思いますが、あれと同じことが人間の目の網膜にも起こります。考えただけでも恐ろしいですね。たった1度でも、十分に失明の危険があります。

特に、お子さんに貸したり買い与えたりする場合はよくよく注意しましょう。ルーペを目に当てたまま上を向いて観察対象を探すような動きも厳禁です。

また、野外でルーペを使う場合、観察する対象に気を取られすぎて足元や頭上への注意がおそそかになりやすいので気を付けましょう。「歩きスマフォ」ならぬ、「歩きルーペ」でつまずいて転んだ友人もいます。

ルーペの覗き方

教科書には「まず眼とルーペを近づけて、対象物を見やすい(ピントの合う)位置に持ってくる」とあります。

ルーペに目を近づけて…
のぞく!

これはこれで正解なのですが、ルーペで観察したい対象物がいつも自由に持ち上げられるとは限りません。

例えば、持ち上げられない大きさの岩の表面を観察する場合、対象物を動かすことはできないし、かと言って眼とルーペをまず近づけてからピントを合わせにかかると、観察しようとする箇所を見失うか、悪くすれば頭を岩に激突しかねません。高い位置のものを見ようとしてこれをやると、間違って太陽を覗いたりすることにも繋がり、大変危険です。

このような場合には、観察するものとルーペをまず近づけ、それから覗き込んでルーペの位置を微調整します。観察する対象物によって使い分けましょう。

また動きまわる昆虫などは、小さめな透明のケースなどに入れてしまうとルーペで観察しやすくなります。

ルーペのクリーニング方法

野外で使っていると、ルーペのレンズにも当然さまざまな汚れが付着してきます。

ルーペはカメラのレンズと違って水洗い可能なので、下手に拭き取るよりは洗ってしまいましょう。食器用洗剤をごく少量つけて指でこすれば、油性の汚れも落ちてくれます(このくらいでレンズのコーティングが傷むことはありません)。

あとは、キッチンペーパーなどで水分を拭き取ればOKです。拭き残りが気になるなら、仕上げにレンズクリーニング液を染み込ませた布で拭けば完璧です。

100均のメガネクリーナーで十分

研磨剤つきのスポンジでこすったり、砂がついたままの状態でレンズクリーナーで拭き取ろうとすると、レンズに傷が入るので要注意。

ただ、野外で使うルーペにカメラのレンズほど神経を使う必要はないと思います。

フィールドに、ルーペを持っていくということ

おわりに。ルーペはとても重要な観察ツールの一つです。

冒頭にも書きましたが、もし子供の頃から学校などで顕微鏡が身近にあったがためにルーペを軽視してしまうなら、こんなもったい事はありません。

試料を持って帰って顕微鏡で検鏡するのはもちろん大事ですが、野外でその場でサクッと拡大して観察できるというのはとても大切なことです。

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10倍や20倍くらいの倍率だと正直、顕微鏡などと違って「どう頑張っても肉眼で認識できないものが見える」という倍率ではありません。

その代わり「肉眼で観察したもの」と「ルーペで覗いた像」との関連を頭の中で結びつけやすく、ルーペで観察する癖をつけると肉眼で見ても「何となく」分かるようになったりします。

身の回りのものを、身近なフィールドの生物や鉱物を片っ端からルーペで覗いてみることは、肉眼での観察力を鍛えることにもなるのです。

(by 宮崎)

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カエルだって気が向けば海を渡る…こともあるーリュウキュウカジカガエルー

今日ご紹介するのは「リュウキュウカジカガエル」というカエル。

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リュウキュウカジカガエル Buergeria japonica

色は灰色〜褐色で、脚に暗色の縞模様があるのが特徴。

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石に紛れる

沖縄では大変ありふれたカエルで、山間部から平地の池や沼、それになんと海岸にまで分布しています。

これは本土の「カエル通」な人からするとちょっとビックリ情報かもしれません。なにせ本土のカジカガエル Buergeria buergeriは山の中の清流にしか見られないカエルとして有名だからです。リュウキュウカジカガエルの方はカジカガエルと違って暑さにも塩分にも強く、水気さえあればいろんな環境に節操なく出てきます。

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瞳が楕円形でカワイイ

さてこのカエル、実はかつて海を渡って分布を広げたのだろうと考えられています。

琉球列島の中のトカラ列島の「悪石島」と「宝島」の間には、生物の分布を分ける線「渡瀬線」が存在します(…というより生物学者が引いた線なのですが)。琉球列島は海面の上昇・下降にともなって島同士が陸続きになったり離れたり…を繰り返しているのですが、この場所には通称「トカラギャップ」と言われる水深1000m級の海溝があり、海面が下がった時期もずっと生物の移動を妨げていたと考えられます。

なので、特に飛んだり海を渡ったりできない生き物は、この線をまたいで分布が途切れていたり、この線を堺に南北で別々の種類に分かれていたりしていることが多いのです。

Tominaga2015改
Tomonaga, 2015 改

カエルなんて普通は、海を越えられない生物の代表格と考えられています。

ところがこのリュウキュウカジカガエルは、この渡瀬線をはさんで南北に遺伝的にとても近い個体群が生息しています(Tominaga et al, 2015)。詳細な遺伝的解析で、この個体群は人が持ち込んだものでもないことが分かっています。これがどういうことかというと、いつかのどこかで、リュウキュウカジカガエルのオスとメスが流木などに乗って島の間の海を渡り、分布を広げたのだろうということ。

肌の強いトカゲならともかく、両生類であるカエルはそんな事をできないのでは…というのが通説でした。ところがリュウキュウカジカガエルは海岸でも生きられるツワモノ。この性質があったからこそリュウキュウカジカガエルは海を渡れたし、またそもそも嵐の時に海に流される機会が多かったのではないか、と考えられています。

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沖縄本島南部の森で出会った個体

と言っても、台風の度にカエルが海を渡るワケではありません。千年に一度でもいいから、たまたま海に流木と一緒に流されたカエルのオスとメスがたまたま生き残って海を越え、子孫を残せばこの話は成立するのです。

とはいえ、この話を聞いてしまうと、真っ青な海にポツンと浮かぶ流木に必死にしがみついて旅をするリュウキュウカジカガエルを想像せずにはいられません。

(by 宮崎)

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